見出し画像

媒介する身体 はじめに その3 インターフェイス化する、こころのルール。

前回は個人のこころは、内部に閉じられていることができなくなり、オープンシステムとして、インターフェイス(接続して交流する)していくという、河合俊雄の講演のことを書いた。

こころのインターフェイス化にともない、心理療法も「これまでのようなはっきりとした主体というか、自分があって、その内面を探ったり、自分を基点にして他者や何かにアプローチしたりするものではないと思われます。すると、最初から何かの目的を目指すのではなく、偶発的に怒ったり、つながったりすることに意味を見出して行くような心理療法になるのではないか。

と、河井俊雄の主張は続き、この「媒介する身体」もそのようなセラピーになることを願うと書いたが、早速、漕ぎ出した船が座礁しそうになっている。

(次回の記事はこちらです。)

インターフェイス化する、こころには、ルールが必要なのではないか。
そう思うようになる原則を、神経細胞のしくみを詳細に紹介している鈍器本(鈍器になりえる大きく重い本)の中に見つけた。A4サイズで1600頁もある、医学部生たちが読むような専門書を、なぜか、脳のことが気になっている時期に買ってしまった。

ただ、読める部分だけ読み進めても、読む価値はあると思う。数理モデルは理解できないが、読み飛ばせばいい。それでも十分価値のある読書になる本だと思う。


以下、明記がない部分の引用は全て、カンデル神経科学part Ⅰ 概要 第3章 神経細胞、神経回路と行動、60頁よりの引用になる。

こうしてRamon y Cajalは、ヒトを含む多くの動物において胎生期の神経系に銀染色の手法を適用した。神経系のほぼ全ての部位の神経細胞の構造を調べることにより、彼は神経細胞を分類し、多くの神経細胞間の接続パターンを明らかにすることに成功した。こうしてRamon y Cajalは、ニューロン説に加えて、神経系における情報伝達を研究するうえで特に有用な、神経系の構築に関する2つの原則を推論した。

【神経系における情報伝達を研究するうえで特に有用な、神経系の構築に関する2つの原則を推論した。】

800億もの細胞たちが相互接続し、情報伝達をし合い続ける脳は、言わばインターフェイスのプロフェッショナルである。これから紹介するこの2つの原則を読む限り、インターネット上における「こころのインターフェイス化」にも、この原則が適応されないとまずいのではないか。そう考えるようになった。河合俊雄のいう

「世界中に広まってしまって、内面性や境界がない、インターフェイスする(接続して交流する)オープンシステムの中にあるという状況の「こころ」」

は、こころの在り方としては、心もとない気がしてきた。そんなところに、個人のこころを放り込むのは、とても危ないと考えるようになった。



前回までは、【さぁ、インターフェイスな場にこころを流していくぞ‼︎】と意気込んだのに反証があり、そこでまた立ち止まってしまった。でも、それもまた記録の一部なので、仕方ない。こうして、枝分かれをし、堂々めぐりをし、ひとつのことについて多角的に眺めていく。「媒介する身体」をつくるということは、そういうが必要なのかもしれない。

さっそく、二つの原則を紹介していく。

まず、一つ目の原則は、動的極性化の原則(Principle of dynamic polarization)という。

その一つは動的極性化の原則(Principle of dynamic polarization)である。これは神経細胞内の電気シグナルは、シナプス後部位(通常は樹状突起と細胞体)から軸索のトリガー領域に向かって一方向性に伝わるという原則である。そこから活動電位は軸索の全長にわたって軸索終末まで伝わっていく。これまでに調べられたほとんどの神経細胞で、実際に電気シグナルは、軸索に沿って一方向性に伝わることが確認されている。

神経細胞には、情報伝達回路の出力と入力部分が明確に分かれていて、その逆流は起きず、一方向性である。ということ。つまり、スマホの画面やSNSのように、出力と入力が同じ極で起きることはあり得ない。

将棋や囲碁、スポーツ、格闘技など、インターフェイスと思われるリアルな相手の出方次第で、自分の動きを決められるが、インターネットのスピードではそれが追いつかないこともある。

例えるなら「炎上」がその現象に近いのではないだろうか。ボクシングの試合をしていたのに、どこからか全然知らない人が乱入してハンマーでぶん殴られるようなことがインターネット上では起こり得る。こんなところに、こころが接続しているなんてとんでもねーなと、思い込んできた。




もう一つの原則が、接続の特異性の原則(Principle of connectional specificity)。

2つ目の原則は、接続の特異性の原則(Principle of connectional specificity)である。すなわち、神経細胞はネットワークを形成する際にお互いにランダムに接続するわけではなく、標的となる特定のシナプス後細胞のみに対して、しかも特定の接触部位においてのみ、特異的な接続を行う。動的極性化の原則と接続の特異性の原則は、現代の脳研究において神経細胞間の接続パターンを解明するアプローチの基礎となっている。

こちらは、「発信はしますが、特定の相手(神経細胞)に送っていますよ」とういことだ。標的に向かって、ピンポイントに情報を伝達できるからこそ、800億もの神経細胞たちが情報を処理し伝達を行い、私はこのように文章を書くことができる。


「あ、なんか伝達物質来てるけど、俺には関係ないや」
と、自分と関係ない情報(化学物質)に関して神経細胞たちが、スルーする力(あるいは気付かない力)、がなければ、とっくに脳はオーバーヒートしているはずだ。(ちなみに私が患っている双極性障害は、そのやり取りの部分のバグが起きて、躁か鬱にメーターが振り切ってオーバーヒートしてしまう時がある。その辺のことも徐々に勉強していきたい。)

接続の特異性の原則をSNSに例えると、鍵アカ、あるいは、ライングループ、あるいは社内限定のコミュニケーションアプリなどのような発信の仕方だろうか。

ただ、残念なことに、鍵アカだろうが、ラインだろうが、晒される時は晒されてしうまう。
時には会って話したとて録音もされてしまうので、「特定の人にだけ」という発信の方法は本当に、限られた友人や家族に限られた場所でしか行えないのではないだろうか。

脳は相手をうまく選べるのに(というか決まっているのに)、人間関係は、なぜこんなにうまくいかないのだろうか。


・動的極性化の原則
・接続の特異性の原則

この二つの原則
を知り、インターフェイス上にこころを置く上でも、ルールが必要だなと思った。それで考えたのが、次の三つのルールだ。(ルールは増えるかもしれないが、暫定的にこの三つを「媒介する体」のルールとする。)

1:NOTEもSNSも全て、受信ではなく発信の場として考える。
2:公開はしているにせよ、特定の人に向けての文章である。
3:接続したい相手は自分に選ぶ権利がある。

この3つ原則を設けることにする。こう書くと、じゃあクローズドでやれば?公開するなよ。選ぶ権利なんてねーよ!!と全てに反論が返ってくることも簡単に予想がつくが、それらすべてはノイズと思って、オートファジーに食べてもらい、排泄していけたらいいなと思う。

あとは、【これじゃあ全然インターフェイス(接続して交流する)じゃねーじゃないか!!】
とも思うが、たぶん、こうすることの方が、うまくいくはずなのだ。浅ーい場所から、脳の仕組みを見る限りは。

ヒトの脳は、相互接続された800億を超える神経細胞のシステム、すなわち神経回路が形成するネットワークである。

カンデル神経科学 part Ⅰ 概論 6頁

そう。




脳は、インターネット以前から、ずっと「インターフェイス」を確立している。その脳が、動的極性化の原則・接続の特異性の原則の上で成り立っているのだから、真似した方がいいに決まっている。

そして、カンデル神経科学には、きっと他にも生き方のヒントが埋まっているはずだ。



SNS時代は、【脳の仕組みの当たり前】が通用しない。というか、脳の仕組みに、最適化された状況ではないような気がする。ということは、脳にとっては、難しい時代でそら病むわと思った。でも、だからこそ、

【閉じられた個人の内面を深めるだけではなく、内面の世界と外的現実のインターフェイスする(接続して交流する)側面に注目する治療理論が最近、出てきていると思います。それらは、どうもこころは、個人の中に閉じられていないのではないかということを示唆しています。】

という河合俊雄の提案が、まさに必要になってきているのではないかとも思うので。この言葉の先も探っていくことができたらとも思っている。

まずはカンデル神経科学を読み進める。
インターフェイスの教科書として、自分自身の教科書として。私は、カンデル神経科学を眺めている。


ということで、長い、「はじめに」が終わった。やっと終わった。もう、一仕事終えた気分で、まだ、朝起きてこれを書き終わったところだけれど。
旅にでて温泉に浸かって帰ってきたい気分になっている。

ただ、これからが、ほんとうの旅のはじまりだ。終わりが決まっていない、長く続く、日常という旅の記録。


あんこを煮て考えたこととか、おビョーキの発作とかを書いていきたい。

次回は、私のおビョーキの発作が爆発した話になると思います。よかったら、フォローなど、よろしくお願いいたします。


いつか、あんこ大魔神になって、いつかゼンザイなどを、どこかでふるまいたい




サポート、熱烈歓迎です。よろしくお願い致します。