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書き下ろし/『3年半ぶりの僕のパリ。』 その参-新しいパラダイムとその風景-2。

文責/平川武治:
初稿/2023年07月20日:
イラスト/村上豊「はだかの王さま」より。

 INDEX;「新しいパラダイムとその風景-1」/
1 )コレクション会場の人混みが、”有色人種”が主流になってしまった。
2)パリのファッション有名校であった、”スチュディオ ベルソー”が
 ついに廃校。
3)アントワープ王立芸術大学の最初の日本人留学生、”KEIKO"さん  4)この街、アントワープのファッション人間たちはいまも、
5 )「なぜ、マルタン マルジェラがすごいのか?」

 
「新しいパラダイムとその風景-2」/
6 )「ファッションパラダイム」を変えるまでのクリエーターは
もう出てこないのだろうか?/

 そして、若い世代(?)たちの今の”ファッションDJ”花盛りの
ファッションクリエーションの世界では、
”新たなアイテムの創造”までもその熱意は及ばず、
”在るモノ”のバリエーションをどの様に、ザッピングするかで
競い合っている世界が表層でしか無くなってしまったために、
”創造のパラダイム”を誕生させるまでの意識も喜びも持ち合わせていない、より、残念な貧しい”鍍金”が現代の時代性になってしまった。

 僕が指摘する「ファッションパラダイム」には二つのカテゴリーがある。
その一つは、「作る世界」もう一つは、「売る世界」のパラダイム。
「誰が、誰の、どんな生活を営んでいる人たちが着たくなる服」を
企業のブランド名か、個人のデザイナーの名前で、
その時代の”雰囲気”をどのようにイメージング&ディレクションするかが、現代のファッションの世界で求める、”fame, fortune and money"の為の
ショートカットの生業になってしまった。

 従って、「新しさ」の根幹あるいは本質
または、意味が変質してしまった。
その根幹は、「新しさ」そのものを必要としなくなった
或いは、価値がなくなってしまった
21世紀版「儲かればいい!」世界へそのパラダイムも進化(?)。

 多分、選ばれるあるいは、選ばれたい彼らたちは、
ファッションを学んで来なかった輩たち。
そんな彼らたちは、それそのものが、”夢”であり、
白人世界が彼らたちへ差し出す”甘い毒”或いは、”サクセスストーリー”。
 
 例えば、「着る人間の人体構造」までを自分たちが関わるべき世界だと
ディープな思慮深さは必要ない時代性。
 だから、彼らたちは「売る世界」のパラダイムを考え楽しむ。
 
7)例えば、「バイヤス使いができない。」
勿論、学んでいない”ファッションDJ”たち。/

 この視点でもう少し、”ディーテール”へ眼差しを向けると、
「バイヤス使い」ができないデザイナーがほとんどになってしまった。
「バイヤス使い」はそのデザインされた服を着た時に
どれだけの”優美なドレープ”が生み出せるか?のための技法の一つで在る。
もちろんこの手法は女性物が主体ですが、男物でも時折使われてきた。

 P.ポワレのエレガンス、コオトやロングジャケットなど
”羽織りモノ”などに。
しかし、メンズ ファッションのカテゴリーが、
”ストリートスタイル”が根幹になり、全てになってしまった
ファッションDJたちのグラウンド。
 そこへ、スポーツやミリタリー、ワークスという
ユニフォームのザッピングとぶりコラージュによって、
”ストリート エレガンス”な流れを求め出した。
そんな時代の新しい雰囲気をデザインするためには、
「バイヤス使い」は必需であろうが、
そのほとんどの若手、DJデザイナーたちは
全くの「ファッションアマチュア」なのですから無理もないでしょう。

8)素材展、”プルミエール ヴィジョン”にも新たな傾向が見える。/
 「ここでも従来のいわゆる、”大手素材メーカー”の出店が減ってきている。具体的には、今までいい素材を提供していた
大手イタリー系の素材企業の出店が少なくなって、
その代わり、ここにも”白人企業”に変わり、
アジア系の新興企業の進出が目立つ。
中国系と韓国系、インド系それに日本企業もこの中に入る。」
と、友人が語ってくれた。

 単純に、”新旧”交代期に来たと読むべきだあろうが、
後退するべき新素材の登場をあえて考えれば、
”サスティナブル”が主役に躍り出たというのだろうか?

 しかし、この”サスティナブル”には大きな落とし穴がある。
”資金と規模”伴う新たな事業である。
 若いデザイナーブランドが、”サスティナブル素材”を使った事で
”サスティナブル ブランド”ではない世界が現実なのである。
 ”原糸”"染め””織””加工”などなど、それぞれの立居場所で、
それぞれの”認可証書”が必然となる世界が
本来の「サスティナブル」と認可される。
 この工程を消化するためには、
それぞれの企業に”資金と規模”が必然となる現実がある。
 この現実を如実に自分たちのブランドの世界で実施しているのが、
ロンドンの”VIVIENNE WESTWOOD"であり、
事実、これが要因にもなり売り上げは上昇中である。

 もう一つの要因は、”ネット販売”という手法が顕著になって来た。
”プルミエール ヴィジョン”へわざわざ出店するよりも、
すでに顧客があるので、”ネット販売”で十分、という時期でもあるだろう。
 ここでも新たなシーンがコロナ後に展開し始めている。
 
9)フランスの輸入業務には、日本発売の”made in Chaina"モノには
重税がかかる。/

 コロナ後、この視点が見直されてきた
パリのファッショントレーディングビジネス。
 日本でデザインをし、中国で生産をする。
あるいは、”グローバルサウス”で生産。

 この生産構造にフランスではブレーキがかかり始めた。
元々、このパラダイムは21世紀になり、「グローヴァリズム」によって
齎され、国内では商社機能にエンジンがかかり、”国際フリ屋”によって、
”ファウストファッション”が誕生し、”SPA型”ファッションが
新たなファッションビジネスのパラダイムとして誕生した。

 このパラダイムを「グローヴァリズム」が一般化する以前に手がけた
ブランド、H&MやZALAそれにユニクロなどが
現在まで、世界で一人勝ちしている。
 
 そして30年近くが過ぎた現在、東ヨオロッパのウクライナで戦争が起き
結果、この戦争はパリのハイブランドの生産地を失うことになった。
 そこで彼らたちが探し始めた生産地としての”イエロー”という視点。
そして、それらの消費地でもある”イエロー”という
Wバインドな発想が普遍化する兆し。

 多分、今後の彼らハイブランドはもう”Made in Paris" ではなく、
それぞれの消費地に合わせた生産地という
新たなパラダイムが誕生するのだろうか?
”イエロー マーケット”には”イエロー プロダクト”と言う
ハイブランド版 "'Local production for local consumption'"
 最近のL.V.の動向がこのパラダイムにリアリティを作り始めている。
ここにはNIGOの「KENZO」から情報を集め始めた
現実が稼働し始めている。

 ここでも、今後のものつくりのグランドコンセプトは、
「地産地消」がより、グローバルに進化するだろう。

 日本政府の税金も、「地産地消」でその自国のために、
愛国心と共に使って欲しいですね。
 
10) チューリッヒには、「ブロックンハウス」と呼ばれている
中古品販売のシステムがある。/

 ここは「中古品のデパート」だと思ってください。
そう、なんでも揃うのです。
家具、家電、台所器具と用品それに絵本にボードゲーム、
靴や傘と帽子、食器文房具、クリスマスデコ、
あとはリネンとタオルにカーテンそして、もちろん服、子供服、
ネクタイにショールマフラー、
絵画や貴金属クリスタルやちょっとした工芸品もあります。
ここにないものは食料品だけでしょう。

 僕はもう20年以上、チューリッヒを訪れると友人と一緒に
いつも彼女の車でここを訪れるのが最高の楽しみの一つになっている。
自分に「審美眼」や「感度」があれば、
とても楽しい価値あるショッピング クルージングができる。

 今回もチューリッヒを訪れたが、
3年半ぶりという、コロナ禍後のこの「ブロックンハウス」は
この街のイミグレーターたちも増えて、とても賑わっている。
そして、高齢者たちと子供達と家族たち。

 そして、何よりも今回僕が驚いたことは、
売られている”アイテム”がいろいろ、たくさん増えてきたことだ。
特に、PC関係や携帯電話。
客が変わり、売られているアイテムが増えそして、プライスも変わった。
「生活豊かに変われば、時代が変わった。」の現実版だ。

 これからの時代性を考えると、
日本にもこの手の「大型中古品販売所」がもっと、都市部にも登場し、
そこにIT機能を加えることで、
最も新しい「消費社会」における新たな都市構造の一つになるでしょう。
 あるいは、デパートがこのシステムを併設することを
彼らの顧客の”サービス&ホスピタリティ”の一環として、
面白い強制時代への新たなディストリビューションへ発展するだろう。
 
「新しいパラダイムとその風景-2」完。

文責/平川武治。
初稿/2023年07月20日。

 



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