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"The LEPLI" ARCHIVE 133/ 『桑沢デザイン研究所合同ゼミ-"19MAY’15"で話したこと−2。』

文責/平川武治:
初稿/ 2015年6月 4日:
写真/ 川俣正 作品” Park de la VilletteParis.”コレクティブ・フォリー” Jun.'15:By Taque.

 後編のテーマは、「妄想という自由なる発想から、現実の先端-アヴァンギャルドへ、」;

 「さまざまなものが遠くに逃げていくという感覚に包まれて、現代の私たちは生きている。
家族もそのひとつだろう。家族と縁が切れたわけでもないし、関係が悪化したわけでもない。
モノにも恵まれている。それなのに、少しずつ少しずつ遠い存在になっていく。それは自分自身にたいしても起きていて、日々活動をしているこの自分が自分自身であるはずなのに、それは頭でわかっていても、感覚の世界では、自分自身もまたどこか遠くにいるつかめない存在なのである。」
 引用文献/ [新・幸福論「近現代のつぎにくるもの」] / 内山 節著/ 新潮選書:新潮社刊:
 
 この哲学者はこのような現象を「遠逃現象」と呼んでいますが、僕はこのような世界観から生まれる「妄想力」は現代の日本人が誇れる想像力のブリコラージュだと感じています。

 日本が誇れるコンテンツビジネスの根幹であるアニメや漫画世界はその殆どがこの「妄想力」がイメージの根幹です、ここには想像力以上の雑草的パワーを感じます。
 「妄想力」が次には、ヴァーチャルイメージを喚起させ、持ち得た器用さと”オタクスキル”と時代の”IT技術”によって他国に誇れる新たなるパワーになりこれが、現代日本の実産業の
リアリティの一つにもなっています。この”オタク文化”の世界は漫画、アニメから始まり、
ゲームアプリとパチンコとケイタイの世界を征服し、今後もうすぐ、ファッションの世界へも到達するのでしょう。

 では、ファッションの世界ではどうでしょうか?そして、I.D.の世界はどうだろうか?
僕の専門のファッションの世界を見る限りではもう、”自由の産物”であったファッションに
おける創造性は全く変質してしまっています。
 結論を言ってしまえば、現在の”マーケットありき”のファッションの世界での”創造性”とは「Only Variation of the Archives」の世界でしかありません。
 ここではファッションの今までの”新しさ”が変質してしまったのが最大の原因でしょう。
この状況は、「作り手も売り方もメディアも」、インターネットによるアルゴリズムとSNSに
依ってすっかり変質してしまう。そして、”生活の豊かさ”とともにファッションの情報量と
スピードの速さが「安心、安全そして、快適」のためのシステムを構築し、持ち得た豊かな
生活によって、時代の”価値観”が変化し、実生活としてのファッションの楽しみ方は、
それぞれが編集可能なバリエーションをどのような”雰囲気”と”気分”で楽しむか?
これがファッションにおけるコンサバティブな最前線です。
 この実生活というリアリティは、ここでもその普遍性が生まれた事によってファッションの世界の新しさは「Variation of the Archives」から編集再構成する”ブリコラージュ”な世界になり、”妄想”という自由な発想でのファッションの世界は辛うじて、”コスプレ”の世界や
”リメイク”の世界がその市民権を得て面白い”妄想”からの創造性が楽しめるまでの可能性が
今という現実の先端/アヴァンギャルドなのでしょう。

 「改めて、ファッションにおける”新しさ、アヴァンギャルド”とは、”創造”とは?」
 ファッションとは、何時の時代もその時代を生き生きと生きる先端の女たちを”ミューズ”とし、彼女たちの生き方と価値観までもコード化して、その時代時代の女性たちへ
”アヴァンギャルド”というイメージングによって、ファッションの創造が展開されていた。

 20世紀のモードとは、産業革命以降の機械工業化社会=量産化の始まりによって、
”新興中産階級”が登場しその新たな階級の新たな女性たちの自由な愛の生き方を
アイコン化することから始まり、2つの大戦を経て戦後は’60年後半からの新しさとして、
教養ある女性たちの生き方と社会化=知性とともに強さと自由さを”象徴”化するための
イメージイング作業とその社会化が高級既制服という”プレタポルテ”の世界を生み、
この世界は時代の先端を生きる女性たちへ”ミューズ性”を与え、讃えることによって、
それぞれの時代における ”新しさ=アヴァンギャルド”を生み出してきた。
 そして、時代の進化という、20世紀の”豊かさ”(=消費社会化=物質的なる)の急激な
進展とメディアの社会化により「あり得るべきイメージ」から「あり得るべきリアリテ」の
ための消費社会構造が誕生すると、その社会性のための”フアストファッション”が誕生する。    

 21世紀に入って時代がもたらした新しさとは、情報という”バーチャルリアリテ”による
ライフスタイリングのサンプリング化すなわち、”リアリテ”のバリエーション化でありこれはIT-モバイル社会とグローバリズムによる情報量の普遍化の象徴である。
 これらによって、実生活におけるイメージとリアリテが”逆転”し、
ここに新たに”バーチャルリアリテ”が加わった世界。
例えば、最近のディズニー映画の世界は”あり得るべきすべてのヴィジュアリィティ”が、
「リアリテ+ヴァーチャル+3D+アニメーション」というミックス・メディアであり、
現代の新しさでもあり、醍醐味でもある。
(これに続くのが、現在における”プログラム・マッピング”の登場である。)

 そして、「あり得るべきリアリテ」としてのイメージング即ち、望むべき手本である実生活における”QoL”のライフスタイリングが新たな目標になる。
そして、ファッションは”物量と情報量”によってその実マーケティングの”速度”を減速しつつイメージング作業の一つとして時代のキーワードである「安心、安全そして、快適」のための
”ユニフォームのアヴァンギャルド”化が始まる。
 その手法はファッションサイクルの中で”模倣=バーチャル”という手法を使って、普遍性としての「時代の習慣=リアリテ」を生み出し、再編集すことである。
 例えば、ここ数シーズンでは、かつての”PUNK”をアヴァンギャルドのコード化し始める。
これは、”新たな新しさ”ではなく、かつて在ったものからの”選択と編集”作業が創造性である「Variation of the Archives」という世界の登場である。
 従って、情報も創造のための情報から”選択と編集”という「ブリコラージュ」のための
情報とその量に変質した。

 「では、ファッションの最前線とは、」
 今、”モードの新しさとは?”について、はっきり言えることは、
「モード産業は広告産業である。」
(”広告を産業化”する時代のヴァリエーションの一つ。このカテゴリィーには産業スポーツになってしまった、”近代オリンピック”も入る。)
 時代性はより、『家で、みんなで安心、安全そして、快適に!』なる時代。
従って、モードの世界もこの現代という時代性の王道を行く、”工業製品のプライド”の復権の
時代でしかない。
 クチュール/手工芸の世界と、ラグジュアリィーファッションをトップとした”既製服”の世界
そして、ファストファッションの棲み分けが、あるいは、”ミュージアムショップ”と
”スーベニールショップ”というクオリティの差異化がこの21世紀前半の”スタンダード”で
あろう。(ノームファッションの登場もこの世界のヴァリエーションでしかない。)
 そして、モード産業とは、
「クチュール+ラグジュアリィ+プレタポルテ+アパレル+ファーストファッション」から、新たな産業化として、”スローファッション”のカテゴリィーが生まれ、ヴィンテージの世界と「リ-プロ/リ-メイク/リ-サイクル」という手工芸化が加わる。
 そして、ラグジュアリィレベルでは、個人デザイナーからアトリエチーム主体型へ、
そして、彼らたちをディレクションできる”ファッション-アースティックディレクター”志向へ時代は流れ始めた。
 一方、従来型のアパレルやファーストファッションにおけるビジネスでは、
”生産企画&管理”職が重要な構造になりいわゆる、ファッションの世界も「フリ屋」次第だ。
それの結果、”リアリティ+ヴァーチュアルリアリティ+イメージング”の三位一体化構造へ
進化した。

 もう一つ、ファッションのクリアティビティとしての『新しさ』の規範が変化した。  
”JUST NEWからSOMETHING NEW + OLD NEW”へ、そして、”FRESH NEW”へ、
あるいは、今シーズンのコレクションに多く現れた”EPISODE NEW ”へ。
 従って、基本的なクリアティビティの根幹は、”VARIATIONS OF THE ARCHIVES”で
あり、過去の集積から今の時代の空気感を感覚でセレクトし、そこへ新しさとしての、
”素材+色+プリント”それに、”一味/ひとあじ”を加える「ニュアンスのデザイン」が
重要な仕事となる。
 売れるコレクションを考えると、大事な作業としてはプルミエールヴィジョン
(1年先の素材を売り込むための素材見本市)が発信する”トレンド情報”のフレームから
セレクトし、”旬の素材”を当て嵌め込んで行く作業であり従って、”デザイナー”よりも、
”ファッション-アーステイックディレクター”が重要な時代性であり、
DIORのRAFやY.S.L.のHEDIEなどがその代表選手となった。(例えば、日本では
”instagram”からパクってカッコつけているデザイナーブランドも主流である。)

 基本的な、”技術開発”が無ければこのファッションの世界の創造は既に、
”モノのヴァリエーションの時代”が蔓延るだけである。そのモノのヴァリエーションの世界にそれなりに「差異」を付加するには「意味性と嗜好性と時代性」を味付けである。
ここでは、”エモーション”や”ノスタルジィ”と”妄想力”がキーワードとなる。

 もう一つの確実な新しさは、”スローファッション”の進展であろう。
このコンテキストは「使える物はみんなでより、使う」であり、時代の感覚と技によって、
全く、違った世界を妄想力とともにリアリティへ落とし込む世界は新生、”M.マルジェラ”の
J.ガリアーノの登場と共に、これからの若い人たちへのより、現実の新たな可能性である。

 「そして、今の時代におけるデザインすることとは、」
 ファッションの世界で普遍的になった機能性を含む諸コードをレイアウトすることである。
そして、”時代の空気感”をデザインし、ライフスタイリングの”ニュアンス”をデザインする。
それらをデザインするための時代の感覚的新しさとは、”リアリテをイメージング”することであり、”イメージのリアリティ”化ではない。
 従って、時代の感覚的新しさとしては”素材+色+プリント=質感=3D感”が
形骸的な”エゴ-デザイン”よりも、プライオリティを持つ。
そして、ビジネスを考える場合は”トレンド”を自分たちの”マーク&ブランドの世界観”と
イメージで”倫理的な発想”によってデザインすることである。

 「ファッションをディレクションすることとは、」

 自分たちの”マーク&ブランドの世界観”でモノとイメージをマーケティングディレクションができること。
 そのための”手法”とは、時代に空気感を読み込んだうえで、ファッション-アーカイヴからのバリエーションをブリコラージュすること。
その根幹は、”時代の空気感”と”ニュアンス”をモノと広告の世界でイメージ・ディレクションすることである。
 従って、デザイナーよりも”知性とスキルと創造性と感受性と美意識と好奇心”の「差異化」が必要とされる。

 「ファッション-アーカイヴとは、」

 ファッション世界におけるビジネスとクリエーションにおける”基本コード”としての
いわゆる、「在庫」の集積化であり、イメージングされたそれぞれの時代における女性の
生き方の”コード”の堆積化でもある。
 ファッション-アーカイヴには、「スタイル+パターン+素材+色+ディテールとバランス
そして、イメージと概念の諸コード」があり、それらが堆積されている世界になっている。
 この世界全体で言えば、1860年以降、ワースがパリで初めてクチュリエのブティックを
創業し、約200年余の”ファッションリアリテ”の集大成そのものである。
 ここに、それぞれの時代の出来事や生活情景をヒストリカルにラインアップさせ、
”ビッグーデーター”化し、”アルゴリズム”とSNSによるマドリックス化すればあとは、
このファッションの世界も”確率”によってクリエーションがなされる時代が来るだろう。
(追記/この世界が僕が最近提言している、「ファッション・クローン」そのものである。)

 「最後に、これからの時代に”デザインするということ”とは?」
 もう一つ、普遍的なることでは、人間が何かを「産み出す」ためには、
他の動物が持っていない、人間しか持ち得られない、違うことを組み合わせて産み出すため、これを継続させるための”人間性豊かなエネルギィイ”をより、考慮するべきであろう。
これが本来の「サスティナブル」という根幹でしかない。
 ブランドビジネスにもこれは大切なことです。
個人が持っている或いは、ブランドが持っている『知性+感受性+創造性+美意識+好奇心』の五角形の「ヒューマン・テクノロジー」そのもののバランスを知ること高めることです。
 このためには「学ぶ」という構造とプロセスとそれによって導かれた
新たな”パラダイム・シフト”が必要ですね。

文責/平川武治。
初稿/ 2015年6月 4日。

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