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映画「犬王」観た

*ネタバレあり だし、この映画がとても好きな人にはオススメしない記事です。
*2022年6月16日に書いたレビューです。

前評判が非常に高く、キャストも素晴らしいので、とても期待して観に行った。


まず、良かったところを並べていこう。

何よりも、アヴちゃんが素晴らしい。
歌はもちろん、演技でワクワクしたの久しぶりだった。
もちろん、森山未來も素晴らしい。
映像もとても美しく、ちゃんと「知ってる京都」だった。


目の見えない友魚が、"手触りや音から感じ取っている世界"を映像にしている場面が多く、それが説明過多にならず、するっと入ってきた。

ストーリーもとても真っ直ぐで、全員の性格や生き方が矛盾無く描かれていた。


冒頭から琵琶と唄と語りが素晴らしく、特に予告でも流れていた ”最初に犬王が歌う場面” でのアヴちゃんの声は「これだけで観に来た甲斐があった」と思ったほど最高だった。



…さて、ここからネガティブな感想が出てくるので、この映画がお好きな方はここまでで画面を閉じてほしい。




この物語は、それぞれに大きなものを背負ってしまった二人の若者が、音楽とパフォーマンスで自分の生きる場所を見つけるまでが大きな山場である。
そしてもちろん、この映画はミュージカルなので、音楽が非常に重要である。

で、いよいよ犬王と友魚の才能が開花する場面。
友魚たちが橋の上で演奏し始めたところで、「ん?」となった。


音楽が、古いのだ。


60~70年代の、まだ演歌やフォークの臭いが混ざっている頃の日本のロックだった。
パフォーマンスも、ロックど初期のそれである。

もちろん歌はうまい。
森山未來だから。
ただ、音楽的には完全に「おじさんが考えるカッコイイやつ」だ。


私はてっきり、劇中の人々と同じように「新しくて、刺激的で、かっこいい音楽にドキドキできる」と思っていた。
キャスト的にもそれができるメンバーである。


ここで、こんな古いものを出してくる意味はあるのか?


犬王の躍りも古い。
80年代のブレイクダンスや、マイケル・ジャクソンを思わせる振り付けが出てくる。
アニメなのだから、どんな動きでもできるはずだ。
しかも特殊な体を持った犬王である。
それなのに、古い音楽ビデオを見せられてるような気持ちにしかならなかった。

熱狂する人々のノリも、ステージからの煽りも、「よく知らない人が考えるロックコンサート」のようだった。
とても、アヴちゃんと森山未來にやらせるやつではない。
観てる間じゅうずっっっとそれが気になって仕方なかった。


あそこでわざわざロックにするなら、もっと新しい音楽を持ってこれたはずだ。
あんな古くて時代設定からもズレた音楽にするくらいなら、和楽器だけで演奏するかっこいい音楽をやってもよかったはずだ。
いるだろ、今はそういうのやってる人。


見終わってから今までずっと「わざわざああいう音楽にした意味は?」と考えているけど、私にはまったくわからない。
物語としては面白かったけど、このモヤモヤがずっと残っているので、そこまで手放しに「良かった!」とはいえないなぁ。


会場には何度目かで来てる人も多いようだったし、客入りも多くて、パンフレットも売り切れていたようなので、お好きな方はとってもお好きだと思う。
私の隣のお姉さんも、ずっと泣きながら見てたしね。

なので、見る価値はめちゃくちゃあると思うよ。
ただ、私はとても残念だったというだけの話です。

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