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リアリティ・バイツ〜“厳しい現実”と直面したX世代と忘れ得ぬ名曲「Stay」

『リアリティ・バイツ』(REALITY BITES/1994年)

1991年に刊行された『ジェネレーションX〜加速された文化のための物語たち』は、1961年生まれのカナダ人作家ダグラス・クープランドによる小説。欧米のポップカルチャーで話題となって、日本でも翌1992年に翻訳出版されたので、手に取った人もいると思う。

「ジェネレーションX」とは1961年〜1981年生まれの世代を定義しているが、クープランドの著書は、1960年代生まれのポスト・ベビー・ブーマーたちを描いた青春ロードノベルだった。

アメリカと日本の社会背景や出来事は多少違うので、世代意識は完全に一致しないが、日本ではバブル期に青春を送った1960年代半ば〜後半生まれの「新人類」や、崩壊後に就職難と直面した1970年代前半〜半ば生まれの「団塊ジュニア」あたりを「ジェネレーションX」と呼ぶ傾向があった。

少し前に活躍したニュー・ロスト・ジェネレーション世代の作家(『レス・ザン・ゼロ』のブレット・イーストン・エリス、『ブライト・ライツ、ビッグ・シティ』のジェイ・マキナニーなど)が、スタイリッシュな消費/享楽文化の中で、無気力・無関心・無感動のように生きる若者たちを描いていたのに対し、クープランドは孤独と不安と喪失感の中にありながらも、既存のシステム社会から抜け出して、新しい価値を求めようとする若者たちに光をあてようとした。

そういう意味で日本で「ジェネレーションX」を再定義するなら、「90年代に青春期を送った世代」と言い換えていいのかもしれない。

日本公開時の映画チラシ

今の若者は、たかがBMWを買うために週80時間も働いたりしません。60年代に反体制やカルチャー革命を謳った人々は今や無心に毎朝ジョギングする始末。では、現在の私たちはどう生きるべきか。受け継いだ重荷をどうすべきか。卒業生の皆さん、答えはいたって簡単です。その答えは、答えは……分かりません(I Don't Know)

映画『リアリティ・バイツ』より

大学の卒業式で、総代スピーチを行うリレイナ(ウィノナ・ライダー)の姿から始まる『リアリティ・バイツ』(REALITY BITES/1994年)は、学生から社会人へと変換しようとする「ジェネレーションX」の若者たちを描いた作品。

俳優としても有名なベン・スティラーの初監督作品で、この映画では旧世代の象徴として出演もしている。主演のウィノナ・ライダーは日本でも大人気だった。

物語は、TV局の契約社員になったリレイナのほかに、売れる見込みのないバンド活動を続けるトロイ(イーサン・ホーク)、ゲイであることを告白したサミー、GAPで働きながら、何人もの男とセックスして真実の愛を模索するヴィッキーの4人の共同生活を軸に綴られていく。

リレイナは、同世代のドキュメンタリーを制作することを思いつき、自分たちの姿をありのままカメラに収めることにした。

ある日、そんな彼女に興味を抱くMTVのプロデューサー、マイケル(ベン・スティラー)と男女関係になる。しかし、トロイは何かにつけてリレイナに噛み付く。彼は彼女を愛していた。

TV局を解雇されたリレイナは引き蘢りの日々に陥るが、そんな時、ドキュメンタリー番組が認められてお披露目されると、マイケルから連絡が入る。トロイとリレイナの恋の行方は?

“厳しい現実”といったタイトル通り、行動の先にはシステム社会の障害があって、なかなか物事はうまく運ばない。それでもリレイナは信じること、信じる相手を選ぶのだった。

サウンドトラックも秀逸で、マイケルがリレイナと愛を交わすシーンでは、ピーター・フランプトンの「Baby,I Love Your Way」、4人がガソリンスタンドの有線で踊り出すナックの「My Sharona」、そして何と言ってもリサ・ローブの歌う「Stay(I Missed You)」は全米1位に輝いた。この曲を青春の想い出にしている人も多い。

文/中野充浩

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