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「役が抜けない」とは?その原因と心理学的背景

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今回は、2024年4月5日にTAPの公式アカウント内で公開された人気記事をご紹介いたします!
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「役が抜けない」という言葉を耳にしたことがあるという方も多いのではないでしょうか。俳優が演じる役に没頭し、その影響が日常生活にも及ぶ現象のことを言われます。
本記事では、「役が抜けない」とはどのような状態なのか、その原因や心理学的背景について詳しく解説します。

それでは、記事本文をどうぞ!


「役が抜けない」とは?その原因と心理学的背景【シリーズ①】

役が抜けない状態になっている女性のイメージイラスト

ドラマや映画、舞台などの芸能業界にいると様々な場面で「役を演じる」ことがあります。そのような現場では、”役が抜けない”という言葉を時折耳にします。
この記事では”役が抜けない”という状態が「どのような状態か」「どうして生じるのか?」についてご紹介してきます。


「役が抜けない」ってどういう状態?

“役が抜けない”とは、「役に完全に没入するという状態が、演技中以外の日常生活場面で無意識に生じていること」を指します。

例えば、

  • 気がつかないうちに、役と同じ口調や話し方になっている

  • 家族や友人、恋人といる時、今まで通り過ごしているはずなのに何故か違和感を感じる

  • 役の考え方や価値観に引きずられている感じがする

  • 普段の自分では思いつかないような考えが浮かんでくるようになった

など、「役を演じている」ような状態が無意識に続いてしまっているならば、それは” 役が抜けない ”状態と言えます。
日常生活で役を「無意識に」演じている、というのがポイントです。 「今日は1日、役として過ごしてみよう」というように、役を「意識的に」演じる行為は”役が抜けない”状態とは区別されます。

手がかりは防衛機制の「同一化」と「投影」

“役が抜けない”状態を考える時に手がかりになるのが、心理学の概念である防衛機制です。
防衛機制とは、実現が難しい自分自身の欲求や外部のストレスから、自分の心を守るための仕組みです。
全ての物事が思い通りには進むわけではありません。そんな時に防衛機制を使うことで、私たちは安定した平穏な心を保とうします。
防衛機制には様々な種類があり、その中には「同一化」と「投影」というものがあります。 「同一化」と「投影」は「役が抜けない」という状態と深い関係があるんです。

憧れの人を自分の中に取り入れる「同一化」

役と同一化している女性のイメージイラスト

「同一化」とは、「自分自身の欲求を実現している憧れの人物の特性を自分の中に取り入れること」です。

人が抱く欲求には「〜ができるようになりたい」「〜を手に入れたい」など様々なものがありますが、その全てがすぐに実現できるわけではありません。実現までに時間がかかることもありますし、実現が非常に難しいものもあります。
そんな時に私たちは、その欲求を実現している憧れの人や尊敬できる人の特徴を自分の中に取り入れることで、心を守ろうとします。
例えば

  • 演技が上手で憧れの俳優と同じ洋服を買ったり、髪型を真似してみる

  • 「◯◯さんならこんな逆境でも、最高の演技をするはずだ」と考え、自分を奮い立たせる

  • 有名俳優が現場でどのように過ごしているかを観察し、同じように過ごしてみる

などがあります。
憧れている俳優と同じ洋服を買ったり、髪型を真似しても、残念ながら演技が上達するわけではありません。 ですが、「憧れの人に少し近づいて嬉しい気持ち」になったり、「演技のレッスンを頑張ろう」という前向きな気持ちが生じることはあるかと思います。
同一化は自分の満たされない気持ちを上手に発散し、心を守る防衛機制なのです。

「同一化」によって生じる”役が抜けない”状態とは?

「同一化」によって生じる”役が抜けない”状態とは、その人が叶えたくても叶えられないことを実現している役を演じた時などに生じます。

💡 「同一化」から生じている「役が抜けない」状態の例
・憧れの役を演じていた期間、家族や友人と過ごしている時にもその役の癖が現れるようになっていた
・キャリアウーマンの役を演じて以降、ビジネスシーンでその役の口調や話し方を無意識に再現している自分に気がついた
・有名俳優の相手役を演じた後、撮影が終わってもその俳優への恋愛感情が消えない

「願望が満たされない」というストレスから心を守るために、演じた役の特性を取り入れることが効果的であると判断された時、無意識に役が抜けなくなるのです。

認めたくない感情や思考を相手のものだと考える「投影」


役に投影している女性のイメージイラスト

続いては、「投影」という防衛機制についてご紹介します。
「投影」とは「自分が持っている認めたくない感情や思考を他人のものだとみなす」ことです。
私たちは日頃、いろいろな気持ちを感じたり、様々なことを考えて過ごしています。その中には嫌悪や嫉妬、怒りなど、「自分がそう思っていること」を認めたくないものもあります。

例えば

  • 自分にも遅刻癖があるからこそ、遅刻をしてくる出演者に対して、強い怒りを感じる

  • 「あの監督はきっと私を嫌っている」と考え、自分自身がその人を嫌っているという気持ちがあることから目をそらす

  • ・本当は自分が相手に好意を抱いているにも関わらず、それを認められずに「◯◯さんは私のことが好きなようだ」と考える

などがあります。

遅刻した相手に強すぎる怒りを感じている時、強い怒りを向けている本当の対象は遅刻癖がある自分自身かもしれません。 ですが、強い怒りの感情を自分自身に向けてしまうと過度な自己嫌悪に陥ったり不快な気持ちになってしまいます。 それを避けるために自分ではなく相手を対象として、怒りの気持ちを発散していると考えることができます。

「投影」は自分ではない誰かに対して、ままならない気持ちを向け、発散しようとする防衛機制なのです。

「投影」によって生じる「役が抜けない」状態とは?

「投影」によって生じる「役が抜けない」状態は、その役を演じることで認めたくない自分の気持ちを表現することができるという時に生じます。
「こんなことを考えている自分は嫌だ」「周りから否定的に思われてしまったらどうしよう」というような不安も、「役を演じている」時には気にする必要がありません。

💡「投影」によって生じている「役が抜けない」状態
・寂しがり屋な役を演じてから、誰かと常に一緒にいたいと思うようになってしまった
・意地悪な役を演じていた期間は、周りの人の嫌な面ばかり目についた
・皮肉屋な役を演じていた時、プライベートな場面でも話し方や口調が皮肉っぽくなってしまった

「役が抜けない」という状態を維持することで、無意識のうちに「認めたくない」「隠していたい」という感情や考えを表現できる環境や状況を作り出そうとしているのです。

最後に

ここまで" 役が抜けない "とはどのような状態なのか?、なぜそうなるのか?についてご紹介してきました。
「役が抜けない」状態について知り、「役を演じる」ことへの理解を深めることで、「演技をする自分」をより客観的に捉えることができるようになります。
そして「役が抜けない」という状態には、役を演じる上でプラスになるような良い点と、注意しなくてはいけない点が存在します。
次回の記事ではメリットとデメリット、そして予防方法や対策についてもご紹介しています。 是非次回もチェックしてみてくださいね!

参考書籍:
氏原寛・亀口憲治・成田善弘・東山紘久・山中康裕(2004).心理臨床大辞典 株式会社培風館
鴻上尚史(2011).演技と演出のレッスン 株式会社白水社
 https://www.hakusuisha.co.jp/book/b205889.html
河竹敏夫(1978).演劇概論 東京大学出版会岸田國士(1992).
 https://www.utp.or.jp/book/b309036.html
岸田國士全集28 岩波書店

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