【インタビュー】「カウンセリングって何するの?」TAPサポーター武智小百合さん②
芸能に特化したメンタルサポートサービスTAP(ティーエーピー)。
メンタルサポートは今ではかなり身近になりつつあるものの、実際にどんなことをするのかよくわからない・・という方も多いです。
前回に引き続き、TAPサポーターの武智小百合さんへ、カウンセリングの場では実際にどんなことを行うのか聞いてみました!
カウンセリングセッションの場はブラックボックス?
―― 最近はカウンセリングを受けてみたいという方は増えてきているような印象があるのですが、正味なところ何をするのかわからないという声もあります。実際カウンセリングの中ではどんなことをしていくのですか?
武智:そうですよね、確かに、今まで行ったことのない方からするとブラックボックス的なところはあると思います。
カウンセリングというと、大きな問題を抱えているとか、日々気持ちがものすごく落ち込んでいるとか、普段の自分と大きくかけ離れてしまったときに使う場所のようなイメージを持たれている方もいらっしゃるかもしれないのですが、そんなことはなくて、特にこのサービス(TAP)は医療としての支援ではないので、むしろ問題が大きくなる前に、本当に些細なことでも、こころのメンテナンスの場として利用していただきたいと思っています。
利用者の方々にとってより身近に感じていただける場にしていきたいですね。
実際に何をするかということについては、その方が何を求めてカウンセリングの場に来たのかということを大前提に、それに対してこちらで提供できることをお伝えして擦り合わせてから進めていきます。
一言でカウンセリングと言ってもいろいろな手法がありますが、私は問題解決型の精神療法を専門としてやってきましたので、基本的には、そちらをベースにして行なっています。
困っているとき悩んでいるときというのは、自分一人ではその解決の糸口が見えなくなってしまいやすいものです。
ですので、まずはお話をじっくりお伺いして今の状態を整理し、その方の目指すゴールに向けて「お手伝い」をしていくというのが、ざっくりとしたカウンセリングで行うことですね。
—― まずは自分がどうしたいかとか、こういうことに困っていて、とお話しして、その中で一緒に考えてもらえるみたいなイメージですか?
武智:そうですね、まさに一緒に考えていくということだと思います。
例えば、お困りのことがあってそれをどうにかしたいということであれば、まずはそのことについてしっかり聴いて理解し、起こっている問題は何で、どうなりたいのか、そこへ向かうために何が足枷になっているのかを整理し、それに対してどのようにアプローチしていくかということを対話の中で進めていきます。特に、この足枷になっている部分というのは、外的な要因のこともあれば、自分自身の中にあることもあるのですが、それは自分では気付きづらいことでもあるので、一緒に立ち止まって考えていきます。
カウンセリングに行くと何かアドバイスをもらえるのですかと聞かれることがあるのですが、こちらから一方的なアドバイスをすることはしていません。あくまでも、相談にいらした方が自分で考えて、自分の足で進むことを大切にしています。
その方のご様子を見て私の方で少し前へ出てアシストすることもありますが、多くの場合、別な視点を投げかけたり、視野が広がるような問いかけをしたりしていくと、ご自身で「こうしてみようかな」などといろいろなアイデアを出されていらっしゃいます。 ですので、そういった自分なりの答えや解決策を見つけるための伴走者のようなイメージかと思います。
—― 伴走者。
私の場合相談するときに、自分が知っている相手だと相手の期待や反応が気になってしまうことがあります。
武智:そうですよね。相談する相手によっては「このことを話したらどう思われるかな」とかいろいろなことを考えてしまいやすいと思いますし、近しい人にこそ話しづらいこともあると思います。
その意味でも、利害関係のないところでとことん話せるというのは大きいと思います。
漠然としたまま話してOKな場所
―― 「今自分はこれを解決したい」と課題が明確になっていると解決しやすいと思うのですが「何に困っているのかわからない、だけどなんだか気持ちが上がらない」とか、「漠然ともっと良くなりたい」とか、「もっとできるはずなのに」とか、そんな風に相談内容が具体的になってないときでも大丈夫なものですか?
武智:はい、もちろん大丈夫です。
そのような場合でも、漠然とした思いも含めそのときの気持ちやお考えをゆっくり聴いていきます。
これもご本人が何を求めていらしたかによりますが、お話を掘り下げて伺いながら、その方の中で抽象的だったことを具体的にしていく場合もありますし、そうではなくただ抱えている思いを出したいということであれば、しっかりと聴かせていただきます。
終着点がない時こそ、この場を頼って欲しい
—― なるほど。するといつも通りお仕事もできるし、友だちといる時は元気で明るくいられるんだけど、一人になるとなんかモヤモヤするんだよねくらいのタイミングでも効果的なんですね。
武智:おっしゃるとおりです。早い段階の方が回復もしやすいですしね。
それから、先ほどお話に出た漠然とした相談というのも、話す相手や場所というのはより限られてくるように思います。普段の生活場面で結論の見えない話を続けていると、聞いている相手にイライラされたり話を遮られたりしてしまうことってよくありそうじゃないですか。
――そうですよね、はい。
武智:ですので、そのような終着点がないお話こそ、こういった専門の場で出していただけると良いと思います。自分の中で思っているだけでなく、言葉にして出していくということは、自分の考えを整理するためにとても役立つ方法でもあるんですよね。お話ししているうちにご自身で新たな視点に気づかれる方も多くいらっしゃいます。ぜひそういった場としても使っていただけたらと思います。
自分の話を否定されたり遮られたりせず、自分のペースで話して考えられる、自分のための時間
―― ありがたいですね、1時間まるまる自分の話をすることが普段あるかといったらないですもんね。
武智:本当にそうですよね。自分の気持ちを尊重しながら納得のいく進み方を見つけていくという意味でも、自分のための時間が1時間あるというのは日常生活ではなかなか無い、大切なことだと思います。
—― 気持ちや考えをノートに書くのももちろん良いなと思うんですけれど、話して口に出していくというのって、違うものがありますよね。
武智:そうですね。それは本当におっしゃる通りで。書くというアウトプットももちろん役に立つのですが、それを言葉にして発するということで、さらに違ってくる部分がありますよね。自分をより客観的に見られるということもあると思います。
―― 話して受け入れてもらったときにほっとする感じもある気がします。
武智:たしかに。その通りですね。
書いているだけのときと最も違うこととして、声に出すことに加えて、そこでコミュニケーションが発生しますものね。そのコミュニケーションも私たち人間にとっては大きいですよね。
「自分で乗り越えた」という感覚こそが大切
――お話しを伺っているとカウンセラーの側が正解に導いていくとかそういうものではなく、相手(相談者)が主導で一緒に考えていくというスタンスなのですね。
武智:そうですね。そもそもこういう領域での正解って周りが決められることではないと思うんです。先ほど、自分で考えて自分で答えを見つける「お手伝い」と言ったのは、仮に、与えられたアドバイスに従ってうまくいったとしても、自分自身の力でそれを乗り越えたという感覚がいまひとつ持ちきれないので、どこかで自信のないまま続いていってしまったりするんですね。
ですので、最終的にはその方が自分自身の足で人生を前に進めていく力を身につけられるよう、サポートしています。
そうは言っても、一旦大丈夫になったらもうおしまいということではないので、そのあとも数ヶ月に一度など定期的に振り返りの場として使っていただいたり、必要に応じてメンテナンス的に来ていただいたり、その方にとってベストな、柔軟な使い方をしていただきたいですね。
お困りごとの解決を目指す場にするにしても、抱えている心の声をただ出す場にするにしても、いらっしゃる方のご希望に合わせて一緒に空間をつくりあげていきますので、気負わずにいらしていただけたらと思います。
次回のインタビューでは、本番やオーディション前後の緊張や不安について聞いてみました!お楽しみに。