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ラスト・チャンス(12) 〜ゲームの主人公に転生したら、どのルートもバッドエンドだったんですが!?〜

↑1話目はこちら(1話目の先頭に目次あり)

第12話 回想3

 もうここまで来たら、エマは何やってもバッドエンドを迎える運命だったのでは!? とすら思ってしまうわね。王子の姉的存在の女性にまで刺されてしまうとは。

「三人の王子はエマと婚約して、まんざらでもない感じだったのになあ」
「フォーセット王国のマシュー王子とは婚約してなかったのでは?」
「まあそうだけど、ゲーム通りの展開ならあの後すぐに婚約できたはずなんだもん」

 案内役にツッコミを入れられるけど、この案内役だってゲームの内容は知ってるでしょうに。エマについては相手のことで頭が一杯で完全に周りが見えてなかったから仕方ないのかも知れないけど、三人の王子もそうだったのだろうか。最後のユージーン王子の場合なんて、どちらかと言うと王子の方がグイグイきていた気がするんだけど。

「王配、王配って、相手はそんなにエマが王妃になるのが嫌だったのかな。マシュー王子とユージーン王子は第一王子でもないから、エマは王配にはならないと思うんだけどなあ」

 ひょっとするとそれぞれの国内事情があって、二人とも次期王の候補だったのだろうか。それなら中央国の姫であるエマと結婚した方が王座は近いと思うんだけど。

「さて、そろそろ整理はできたかな?」
「うーん、三人のストーリーの復習はできたけど、何一つ謎は解決してないわね。分からないことが多すぎるんだもん」

 かと言って、ここで考えていても答えが出るわけでもない。回想して誰に注意すべきかはおさらいできたけど、次の扉の先で誰かを選んだとしても別の理由で失敗しそうだなあ。さあどうする?

「あー、もう! 何が正解なのかさっぱり分からないわ! ヒントと言わずに正解教えて!」
「アハハ、流石にそれはちょっと……私も正解は分からないからね」
「そうなの!?」

 おいおい、ここにきてそんな告白されても困るんですけど! 三枚の扉に入るまではゲーム通りに進めることこそが正解と思っていたし、エマは私のその思い通りに動いてゲームのストーリーをトレースしてくれた。にも関わらずいつもバッドエンドってことは、やっぱりこの世界はゲームとは違うってことだろう。

「……仕方ないわね。もう行くわ。悩んでも答えは出そうにないし」
「それでは姫様、これがラストチャンスでございます。決断してくれたかりん君に私から一つプレゼントを。その扉に入って戻る先は、いつもより少しだけ前の時間にしておきましたよ」
「おお! それは助かるわ! 僅かな時間でも進め方を考えられるわね! あ! それはもちろんヒントとは別よね!?」
「もちろん。私から出せるヒント、それは、君が一つ大きな勘違いをしている……いや、させられているってことさ」
「勘違い?」
「そう、勘違い。それに気がつけばきっと正解に近づけると思うよ」
「……分かった。有り難う」

 何が勘違いなのかは分からないが、それは追々整理することにしよう。今回は自分の記憶を持ってエマに転生できる。しかもちょっとだけ前の時間。これは扉に入っていきなり頭をフル回転させないといけないわね。

 最後の扉のノブに手を掛けて押すと、前の三枚と同じ様にそこは光が溢れていて別の空間。一枚目の扉に入る時はドキドキしたけど、流石に四回目ともなると怖さはないわね。でも今まで以上に緊張感はある。

「じゃあ、行ってくる」
「今度こそエマの人生を全うできることを期待しているよ」
「そうね。私もしばらくここには戻ってきたくないかな。じゃあ」

 案内人に別れを告げて扉の奥へと進んだ。ここまではエマに任せきりで彼女には最終的につらい結末を体験させてしまったけど、今回はバトンタッチ。必ずハッピーエンドにつなげてみせるんだから!

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