厚労省記者会見と厚労省各部局との面談報告

2022年4月12日の厚労省記者会見と厚労省各部局との面談の報告

厚労省記者会見では、増山麗奈氏、小野盛司博士、不破徳彦氏が発言しました。私、諸星たおも自身の提案部分に関して説明しました。
以下は諸星の発言要旨です。


◯再度複数回の一律現金給付について

現在までのインフレは先物投機や寡占の影響が大きく、供給ショックはこれからが本番であり、どこに困窮する状況が現れるか予測が困難な為、当面の素早い対症療法として一律現金給付を要望した。


◯各種支援策に貸付が前提である事について

古代アラム語で、負債と罪は同じ言葉である。
今ある様々な困窮者への対策は貸付が多いが、貸付とは負債を負わせることである。
政府が福祉として、国民に負債=罪を負わせている。
コロナ禍の、政府による自粛要請の影響で失業した人に、何の罪があるというのだろう。
自粛の煽りを受けた立場の弱い一部の国民に罪を背負わせたまま、GOTOやワクワク割などに予算を割くのは(そういう景気刺激策もやらないよりした方が良いが)優先順位が違うのでは無いか。
既に自己破産も増えており、返済が優先されると消費が抑制され実体経済も停滞する為、現在貸付となっている部分も給付にする事を要望した。


◯就業保証制度について

憲法30条の納税の義務を果たそうとするとき、国家が税を受け取らない事はあり得ない。
同様に、憲法27条の勤労の義務を果たそうとするとき、国家から貴方の勤労は要らないと言われる事があってはならない。
しかし、就職氷河期はそう言われ続けてきたし、今も繰り返そうとしている。
民間だけではディーセントワークが足りない場合、政府や自治体が国民の就業の権利を保証し、雇用せねばならないと要望した。

雇用の主体は政府や自治体の他、就労支援ABの事業者や、労働者協同組合、NPOによる雇用、職業訓練への助成などを想定する。

今後、インフレと賃金停滞が予想される中で、賃金水準の底を支え、引き上げていく事が必要だが、最低賃金はその意味では無力である。何故なら失業者の賃金はゼロ円であるから。
その意味でも、失業者を政府自治体が雇用する仕組みは、不況や停滞を脱するために必須である。
失業者がおらず、賃金所得が安定しているなら、消費も安定し、企業の売り上げも維持される。
するとそれまでの投資が過剰となる事態が回避され、稼働率の縮小や解雇、借入の返済を優先する事によるマネーストックの縮小などの、不況の加速を食い止められる。

働きたい人が、給付で消費するだけの状況に置かれるのでなく、生産に寄与する仕組みは、今後供給ショックが予想される中で必須である。
同時に、失業の履歴効果を発生させない点で、民間での就業をしやすくする。
失業に伴う様々な社会課題の発生も抑制できる。


◯就労支援ABについて

上記の就業保証に関連するが、様々ある「使いづらい」制度を使いやすくする為に、間口を広げる事も必要である。
いきなり革新的な制度の実現は困難なので、通知一つで改善できることも要望した。

例えば、そもそも障害手帳は必須ではなく、受給者証や医師の意見書があれば対象となるはずだが、自治体、事業者毎にバラバラな対応となっており、手帳が必須であるかのような運用がされる事もある。
手帳の有無で制度利用に差が出てはいけない。

生活保護申請で問題となったが、扶養照会は義務ではないにも関わらず、義務であるかのように運用にされていた事と似た構造がある。
こうした恣意的な運用は、本来の趣旨に沿うように通知や指導で是正させる事も必要である。

また、就労支援Aの賃金を引き上げて、Bは工賃ではなく最低賃金を保証する事を要望した。

(諸星個人の経験を言えば、自身が潰瘍性大腸炎であり、障害手帳を得る程ではないが、病気の性質上、選べる仕事は限定され、制度の狭間で困難を実感した。自身の境遇を全て書くことは家族に支障あるため伏せるが、幼少期より母子家庭で、小学校より祖母の介護を担い、その後養子に出され、大学在学中に潰瘍性大腸炎で受講困難となり、就職氷河期のピークに休学、後に中途退学。非正規雇用を転々とし、現在、重度訪問介護の訪問ヘルパーである。ヤングケアラー、母子家庭、難病、ロスジェネ、等等、、、こうしてみると、様々な属性と制度の狭間に置かれた人生と言える)


◯生活保護について

上記と関連するが、様々な制度が使いづらい。
制度の使いづらさは、その制度がなければ生きられない人を生きづらくさせる。
扶養照会の義務が取り沙汰され、生活保護の水際排除に光が当てられてきたが、他にも多々ハードルがある。

より使いやすくするために、申請即時の支給とし、審査は事後にする事で、現在2割しか無い補足率を上げること。就労後も、しばらく生活保護を継続するなど、生活が安定軌道に乗るまで支えるべきと要望した。

もう一つ、大阪のクリニック放火の件からの教訓として、以下のことを述べた。

不動産担保型生活資金、及び要保護世帯向け不動産担保型生活資金の貸付制度(国が行うリバースモーゲージ)があるが、対象が65歳以上の高齢者限定であることや、居住してる不動産だけが対象であるなど、利用の制約が厳しい。
賃貸用や別荘用の不動産を所持していても、入居者がおらず、買い手がつかなく、補修する資金もなく、何ら現金化も使用もできない不動産を抱えているケースがある。
しかし不動産所持という事で生活保護など、既存の保護制度から漏れる人が今後増えるだろう。

そこで、生活保護利用者の不動産は国が買い取り、生活扶助部分と相殺することを要望した。
買い取った不動産は住居支援の現物給付として利用出来る。
また、買い戻しにも応じる運用とすれば、生活保護を抜け出すインセンティブにもなる。

こうした運用に割く人手が無ければ、既存の不動産担保貸付から、年齢と居住目的の限定を外す事を要望した。


◯エッセンシャルワークの公定価格の引き上げについて

上記様々な行政サービスには、とにかく人手が必要である。
自動化し難い部分には賃金を上げて労働移動を促す必要がある。
これは公務員の非正規の正規転換や賃上げも含む。

上記を経済的な側面から見ると、介護などは低所得なので、そこへの報酬の増額による賃金上昇は、消費を促す度合いが高いので、GDPの個人消費を増やす。
また、そもそも事業費として支出するものなので、政府最終消費支出にカウントされる。これはこれ自体がGDPに含まれる。

つまり、エッセンシャルワーカーへの公定価格の引き上げは、増税によらず赤字支出で賄ったとしてもGDP増加要因となるので、債務対GDP比は悪化しない(そもそもMMT的にはそれすら問題としないが)。

社会的な側面を見ると、介護離職やヤングケアラーなど、国富そのものである人財の毀損を食い止める。
介護難民など、国の債務不履行(社会保障費による財政破綻でなく、担い手不足による介護保険サービスの支払いの滞り)を解消する。
社会不安を解消し、家庭が安心して過ごせる場であることは、国民の精神衛生そのものを守る。

介護は女性が多いので、男女の賃金格差も是正する。現在は政府が、女性の多い職業(介護や保育)の公定価格を低く設定している為、女性の賃金水準が低く維持され、女性の貧困を作り出している。
こうした社会問題を解消する為にも、公定価格の引き上げを要望した。

付言すると、ケア労働は概して低炭素労働であり、大量生産大量消費で環境破壊をしながら所得を得て、企業の利潤を再生産する仕組みではない。
環境負荷の小さな産業で生活所得を得られる、生命再生産が優先される社会への移行にも資するため、ケア労働の公定価格の引き上げによる労働移動は、SDGsの観点からも重要である。


◯厚労省各部局とのやりとりの様子(Zoom参加した諸星の質問部分を抜粋)

現金支給を伴う支援制度に関して、貸付けが前提なのはおかしくないかの問いに対して、部局からは給付もあるとの返答だが、貸し付けが上限になった場合の話しであり、そこを曖昧にする説明であった。

生活保護の資料調査の壁に関して、不動産資産の買い取りや、不動産担保型貸付についての運用の緩和については、部局の担当者によれば、窓口が社協であることもあってか、部局内では議題となっていないとの事であるため、今後、検討するよう重ねて要望した。

就業保証については、ハローワークではそうした事の検討は今のところないとの事。
部局横断的に検討を要望する。

他、詳しくは氷河期ネットに別掲の議事録や、増山麗奈氏の報告を参照下さいませ。

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