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「自分とか、ないから」を読んでみた


しんめいPさんの「自分とか、ないから」👇を読んだ感想とか思ったことを書いてみました。

しんめいPさんって誰?

2020年、新型コロナウイルスの流行で世間が自粛ムードまっさかりの頃、以下の記事をnoteに投稿されたのがしんめいPさんです。

当時(今もだけど)、東洋の思想・哲学を勉強し、noteにも勉強したことを書いていた私にとって、このしんめいPさんの記事はすごく印象に残っていました。

というのも

仏教と老荘の教えをこれほどポップに、面白おかしく、わかりやすく、それでいて核心を突いた(ように私には見えた)記事が書けるなんて、マジですごくね・・・?😲

と思ったからです。

自分にはこんな風に記事は書けないなぁ・・・と、「尊敬」と「羨望」が入り混じりつつ、速攻でnoteもTwitterもフォローさせてもらっていました。

その後、この記事が書籍化されるという情報がありワクテカして待っていたのですが、それがついに出版された感じです。(3年ごし)

「自分とか、ないから」の面白さはどこか?

この本の面白さ、数多ある東洋哲学の解説本にない魅力をどこに感じたかを紹介してみます。

1. ポップさが大爆発してる

とにかくもうポップです。文章が。例えが。あらゆる表現が。東洋哲学の本を読んでいるはずなのに「友達とのLINEトークかな?」というぐらいゆるいです。noteでいうと岸田奈美さんの記事みたいな感じ。ポップさと疾走感が弾けすぎて、300ページちょっとあるのにあっという間に読めてしまいます。

意外とボリューミー

「わかりやすさ」を謳った仏教の解説本や禅の解説本は世の中にたくさんありますが、この本は「わかりやすさ」のベクトルが既存のそれとは明らかに違います。

むしろ「わかりみが深すぎて逆にわからない」という謎の体験も得られます。

例えば

ぼくはこの、飲み会で孤立することで「空」にいたる現象を「居酒屋のブッダ」と呼んでいる。

「自分とか、ないから」P.121

という表現があります。「」の概念はうっすらですが分かってるつもりでいるので、

「おぉ、、、なるほど。言われてみれば空なのかも・・・?」

と思いつつ、後で冷静に思い返すと「居酒屋のブッダってwww何言ってんのwww」となったりします。でも自分が実際にそれに近い体験をしてみると「あ、やっぱ居酒屋のブッダいるわ・・・(確信)」となったり。
(※決して最近の飲み会で私が孤立したわけではありません)

子ども向けに書かれた本やビジネスマン向けに解説された本は「超わかりやすいけど掘りが浅い(表面的)」or「わかりやすいフリをして小難しく書かれてよくわからん」のどちらかであることが多い中、この本は独特の「ポップさ」で「わかりやすさ」と「掘り下げ」をうまく両立させているような気がします。

2. イラスト(イメージ)の使い方が上手い

2020年の記事もそうですが、イラスト(イメージ図)の使い方が本当に上手いなと思います。私も自分の記事を書くときはイラスト(イメージ図)を多用するのですが、自分が伝えたいことを的確に表現できて、それでいてクスっと笑えるユーモアのあるイメージを用意するのってけっこう大変なんです(最近は生成AIがあるのでだいぶラクになりましたが)。

この本にもいたるところにオリジナリティとユーモアに溢れるイラスト(イメージ)がふんだんにあります。

とくに多く使われているのが、私もよくお世話になっているいらすとやさんの画像です。いらすとやさんのイラスト自体はどれもシンプルなのですが、この本では、その使い方と組み合わせ方、見せ方が見事というほかありません。

いらすとやさんの画像。1つ1つはシンプルなのに・・・

これはもはやセンスの問題であり、真似しようと思って真似できるものではないのですが、普段からnoteの記事でいらすとやさんの画像を多用し、何なら会社で業務に使う資料や顧客向けのプレゼン資料にも(怒られないギリギリのレベルで)積極的にいらすとやさんを活用してきた私にとって、しんめいPさんのいらすとやさん画像の使い方はもはや

という感じです。ぐぎぎ。

それでいて、肖像権にもしっかり配慮がされており、扱う対象によってはフリーのイラストでもなく、生成AIでもなく、なんと自筆のイラストを活用されています。それがまた実に味わい深いイラストで、親鸞聖人のイラストなどは最初見た瞬間に「ブフッwww」となりました。いやパーカーて。もう完敗です。センスが素敵すぎます。

3. 東洋哲学がどう活きるのかが伝わる

本の序章で、しんめいPさんがこの本を書くに至った経緯が紹介されており、ご自身が東大卒で大企業に入社するというピカピカな経歴がありながら「虚無感」に苛まれていた苦悩を告白されています。そして、その「虚無感」から脱出するヒントをくれたのが東洋哲学であり、本の中で「東洋哲学によって救われた」と度々言及されています。私はこの背景が、多くの人に「自分も東洋哲学を学んでみよう」と思ってもらうきっかけを作るのにとても重要だと思います。

世の中にある多くの東洋哲学の解説本って

東洋にはこういう教えや考え方があります。この教えをどう自分に落とし込むのか、どのように自分の人生に活かしていくかは、あなた次第です

という書き方をしているものが多いように思います。もちろん本によって、著者によってグラデーションはありますが、やはり「解説」に重心を置く本の方が多いです。普遍性や客観性を持たせて書こうとしたら、どうしてもこうなってしまうのですけどね。

ところがこの本は、著者の「虚無感」という悩みが先にあって、西洋哲学など色んなモノに手を出しつつ、最終的に「東洋哲学」に出会って救われたというストーリーです。

なので、身もふたもない言い方をすれば

「それって、あなたの感想ですよね?」

と、ひろゆき氏に言われても仕方がないほど個人的な体験が多く綴られています。再現性、普遍性、客観性そっちのけで、一人の虚無感に苛まれた「東大卒のこじらせニート(※)」が、東洋の叡智に学んで救われるというストーリーがこの本です。
(※)悪口じゃないですよ!本の帯👇にも書いてありますし!笑

本の帯に書いてあるのでセーフ

現代に生きる私たちは「毎日が超忙しい(と思っている)」ので、

「どうせ学ぶなら、役に立つ知識しかインプットしたくない」

と選り好みしがちです。

そうなると必然的に、再現性があって、普遍性があって、客観性がある、いわゆる「科学的な」知識しか摂取しなくなります。

でも、よく考えてください。本当に「科学的な」知識だけで人間は幸せになれるんでしょうか?

再現性、普遍性、客観性のある知識だけでとっていれば人の悩みがなくなるなら、こんなことになっとらんわ!っていう反論(ツッコミ)を、他でもない「東大卒のこじらせニート」である著者が身体を張って証明してくれたわけです。

「東洋哲学なんて何の役に立つの?」

と訝しがる現代人に、これほど説得力のある反論材料があるでしょうか?

まとめ

ということで、

「東洋哲学なんて何の役に立つの?」

という方はもちろん

「東洋哲学、興味はあったんだけどね~なかなか手を出す機会が」

という方にもおススメです!!

おまけ:欲を言えば

幸いなことに、私自身はこれまで強い「虚無感」に苛まれたことはありませんが、とある恩師がきっかけで東洋思想・哲学に出会い、趣味で学び続けています。そんな私から、あえてこの素敵なおもしろ本に注文をさせてもらえるとすれば、、、

仏教成分多め

虚無感からの救済」というテーマが根底にあったとはいえ、全体として仏教への偏りが大きかったように思います。原始仏教から始まり空、密教、禅、念仏まで幅広くカバーする必要があったとはいえ、老荘、とくに道(タオ)の解説が他と比べて少なかったのが老荘好きの私としては少し物足りなかったです。

タイトル画像は生成AIに「自分は存在しない」というキーワードで適当に作らせたイメージ。

おしまい。


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