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奇説 今昔物語集 vol.005 -平安の法治-篇

 今は昔、一条天皇が即位されていた時代に、平 維衡(たいらの これひら)という武士がいた。官位は下野守であった。維平は平 貞盛の四男で、平 貞盛といえば、父の国香を親族(国香から見れば甥)の平 将門に討たれ、伯父である藤原 秀郷の軍勢を借りて将門の乱を鎮めた。藤原秀郷は、将門追悼の功績によって下野国、武蔵国の二カ国の太守となり、鎮守府将軍にも任じられ源氏、平氏と並んで武家の棟梁と目されるようになった。

 未だ武士の時代、とは言えないが、歴史上に聞こえるその足音は、着実に大きくなっている。このとき、平 致頼(むねより)という武士がいた。後に、平安時代後期の伝記本『続本朝往生伝』では、維衡も致頼も、源 頼光らと並んで「天下之一物」と称された猛将である。
 二人とも平氏を名乗っているのだから、当然、親族なのだが、当代切っての猛将二人は、常日頃からその武力を競っていた。いつの世も、つまらない奴がいるもので、双方の悪口を、あることないこと告げ口する者がいて、そのうちに互いのライバル視は敵視へと変わっていった。

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