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【1人目】14歳は彼氏がいて当たり前だという呪縛

女の子は小さい頃から少女漫画で夢をみる。小学生の頃に読んでた“両思いになったらEND”系の漫画で、中学生ぐらいになると周りはみんな彼氏彼女がいるものだと思い込まされていた。
でも実際、私の中学は350人以上いるのに、カップルなんて数えるぐらいしかいなかった。


兎に角、彼氏という存在が欲しい。そう思っていた14歳の夏に、Fから始まるSNSで知り合った隣の中学生の同級生の男の子に告白された。
チャンスじゃんって思うべきなんだろうけど、まず最初に思ったことは「これが私の初めての彼氏なの?」だった。
私より背は低いし、クリクリのお目目は可愛すぎる。人生で振り返った時に初めての彼氏がこの子って将来の私が後悔するんじゃないかな、と思った。
今思えば、当時から打算的すぎる。というか、彼氏が欲しいって言うのは、ただの好奇心だったと思う。
という事で、断った。(24歳の今もSNSで繋がっているけど、めちゃくちゃイケメンになってた。身長は相変わらず低かったけど)


んで、結局付き合ったのは、同じくFから始まるSNSで知り合った、隣の中学の野球部の先輩。鬼太郎だった。
元々、名前だけは知ってた。野球が上手いだからか、私と同じ中学の後輩の咲希ちゃんと付き合ってたからなのか、名前が印象的だからなのか。なんでか分からなかったけど、名前だけは有名だった。
夜、電話して、顔写真を送りあって、すぐ付き合いたいと言われて、ドキドキした。
だから付き合った…と思ってたけど、名前だけの有名さに惹かれたんだと思う。ステータスになると思ってたんじゃないかな。

会ったこともないのに付き合うって、当時2013年からあったんだーって思う。隣の中学で、他の人から話は聞いていたとは言え、直接の繋がりは一切なかったわけで。今では空間の多様化で、そんな事普通にあるけど(その分、それに伴う犯罪も多い)。
まぁ、当時は友達に言えなかったよね。


ただ、鬼太郎側はそうではなかった。翌日から、鬼太郎と知り合いの野球部にはイジられが凄かった。うまく対応できずに無視してたけど、ちょっと嬉しかった。私には彼氏ができたんだ。
勿論、それがきっかけとなり同級生の女の子にも知れ渡った。えっ、あの鬼太郎さん?って言われるのが妙に気持ちよかった。


 鬼太郎とは歩いて会える距離だった。とは言え、時期は12月。田舎の土地には雪が降り積もっていた。それでも鬼太郎は家に会いにきてくれた。
 当時流行っていた、“雪の音”というラブソングをよく歌ってくれたけど、高い音が全く出ていなかった。それでも上手だねって言った。
 「将来はメジャーに行くから、おまえもアメリカに着いてきてくれよ」なんて言ってた。
 会いにくると毎回私の身体を触ってきたけど、重ねることはなかった。「今妊娠したら、お前の親父に殴られるな。お前の事大切にしたいから、結婚してからに取っておくな」って言ってた。私も結婚するまで身体は重ねないと決めていた。


 1ヶ月後。私は鬼太郎に振られた。1週間前から冷たくなっていたし、分かっていた。
 それでも鬼太郎の匂いや、鬼太郎の声が頭によぎった。鬱憤を晴らすように出会った時からの事を友達に話したら、友達には気持ち悪いと言われたけど、鬼太郎の悪口を言うと面白がってくれた。鬼太郎の事は大好きだし、ムカつくと思ってた。


 それから2週間後のある日の夜、鬼太郎から連絡が来た。

「親と喧嘩して家出した。寒くて凍え死にそうだから、スーパー近くの工場裏にカイロを持ってきてくれないか。頼れるのはお前だけだ。」

 その連絡を来た瞬間に私の体は動いていた。カイロを持って、人気のない道を走って向かった。
 着いてみると、鬼太郎は泣いていた。お前、俺の悪口言いふらしてるだろ、本気で傷ついてるんだよ、俺のを咥えろよ、と言った。
 言われるがままに咥えた。そして、不味い味がしたと同時に

「こんな事して許されるとは思ってないけど、おあいこだからな。俺ら、もう会わない方がいい。今までごめんな。」

 帰り道はとても寒かった。口に残った変な味が取れなかった。


 その後、仲のいい野球部の話によると、鬼太郎は私と付き合う前に付き合ってた咲希ちゃんとと復縁したと聞いた。それを聞いて思わず笑ってしまった。

 そして、咲希ちゃんが私に近づいてくるようになった。鬼太郎と別れて、元カノ同時である私と仲良くしたいと思ったらしい。一緒に登校したり、プリクラ撮ったり。別れ際、鬼太郎が咲希ちゃんの家に押しかけて、窓を叩いた話も聞いた。

 でも、私の中学卒業と共に、全く関わりは無くなった。噂で、鬼太郎と咲希がまた復縁したと聞いたけど、また別れたと言う話を聞いてからは、何も聞かなくなった。


 20歳のある冬の日、私は地元のファミレスで卒論を書いていた。
 ドリンクバーを取りに行くと、男女4名が店に入ってきた。そのうち一人は鬼太郎だった。ピチピチのジーンズに、でかめのスニーカー。ニットを被って、片手にはクラッチバック、もう片方は女の手を握っていた。隣の女は、金髪のギャルだった。片方のカップルも似たような感じだった。ザ・田舎のカップル。どこにでも居そうな感じだ。

 私はそのまま卒論を書き進めた。

 21時30分、もうそろそろ閉店だと声をかけられた。帰りの車のBGMは”雪の音”にした。すぐに飽きて違う曲にした。

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