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句読点省略の美観/形骸化に美しさを見出す
招待状は、一枚の紙や数行の文で相手に感動や期待を与える力があります。しかし、その裏には数多くのマナーがあり、その一つ一つには深い意味が込められています。特に日本においては、格式や美しさが重視される文化が根付いており、招待状の作成にもその影響が見られます。その中でも、今回は「句読点の禁止」にフォーカスして、句読点がどのように形成され、なぜ句読点が禁止されているのか、本記事では探求していきます。
句読点マナーの謎
結婚式やその他の慶事で招待状を作成する際、多くの方が「句読点は使わないでください」と指導されることでしょう。しかし、その理由は一体何なのでしょうか。
Google先生に聞いてみると以下のような理由を挙げられていました。
「句読点を使わない理由は”縁起が悪い”ため」
「"お祝いごとには終止符を打たない"という考え方があるから」
「”終わり”や”区切り”を連想させる」
なるほど。確かに。
納得できるようで納得できない。その区切りを象徴するもの、例えば「改行や段落」「色やテクスチャーの境界」「壁、扉、カーテン」「空間を区切る仕切り」はいいのでしょうか?私だけでなく、こうした疑問を感じられた方も多いはずです。
句読点の歴史/美しさと明瞭性の間
一説によると、句読点は平安初期に登場し、本来、漢文訓読のための"訓点"として加えられてもの、すなわち、外国語読解の便法として案出された符号だったそうです。
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こちらの画像は鎌倉時代の歌ですが、句読点らしきものはありません。というのも、この時代は、教養の1つとして文字を美しく描くことが重要視されていて、句読点などの符号は美観を損ねるものとして好まれなかったそうです。
確かに、日本語の文章は、動詞・助動詞の終止形で結ばれるため句読点がなくても区切りを理解することができます。また、各種の助詞や疑問詞が存在しているので、感嘆符や疑問符などの記号も不要ですね。
その後も「句読点は、読解のための符号であり、美観を損ねるもの」という認識は続き、明治になっても、句読点の使用を軽んじる習慣は続きました。実際に、“五箇条の御誓文”、“大日本帝箇憲法”、"軽教育勅語”等の原文を見てみると句読点は一切使われていません。
![](https://assets.st-note.com/img/1696520938839-tY7F7ZvkX3.png?width=1200)
この状況は戦後まで続いたものの、戦後の文部省(現在の文部科学省)による一連の言語改革が大きな転機となります。この改革により、新聞や教科書、公用文などでの句読点の使用が推奨され、それが次第に一般に広まっていきました。この推奨の背景には、情報の明瞭性や読解の効率を上げるという目的がありました。
さらに、学術文献やビジネス文書においても、明確な意味の区切りが必要であり、そのようなニーズに応える形で句読点の使用が一般化しました。
このように、句読点省略による「美しさ」は句読点をつけることによる「明瞭性」へとその価値観が変遷してきたわけです。
形骸化するマナーの中に美しさを見出す
今日、慶事や格式のある場では句読点を控えるという「マナー」は残っています。縁起が悪いというそれらしい理由をつけていますが、従来の「文章は美しさが大切である」という価値観は忘れ去られ、マナーのカタチ、言わば先人の想いの「残穢」のみが残った結果の現在だったのです。
結婚式の招待状における、「句読点」の禁止を「縁起が悪から」で終わらせるのではなく、マナーを紐解き、先人の美観に想いを巡らして、美しさを見出す。
このように形骸化したような規範に見えるものでも、歴史や伝統を紐解けばその中には確かな美学や文化的価値が宿っているのです。
以上、句読点の話でした。
ちなみに、上記の理由から、文字の縦書きが生み出す美と、句読点に代わる「間(スペース)」がもたらす文章全体の流れと調子を大切にして、ウエディングのペーパーアイテムのデザインを組み立てることにしています。公開までもう少々お待ちください〜。
参考論文/図書
井口大介著「日本語の表記と句読法について」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jshuppan/14/0/14_119/_pdf/-char/ja
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