【書評】夜と霧

どんな本?
原題は「心理学者、強制収容所を体験する」であり、その題名の通り、心理学者であるヴィクトールフランクルが強制収容所で体験した様々な事象を、心理学的な視点から体験記として記述しているものです。
被収容者の扱いまさに酷いもので、満足な食事も与えられず、極寒の中で長時間働かされ、親衛隊員からの侮辱や暴行を受けることも珍しくないという状況でした。今日を生きられるかどうかに注意が注がれ、病気等で亡くなる、あるいはガス室送りとなる人が日々発生しているというまさに極限状態で、「人間とは何か」を見出す視点が興味深い本です。

自分は恵まれている
この本を読むと、まずは現代に生きる自分がいかに恵まれているかを感じます。確かに仕事はつらいし、人間関係で悩んだり将来が不安になることはあるけれど、毎日3食ご飯が食べられて、その日の気温に応じて着る服を変えて、夜にはベッドで眠ることができる。満足な衣食住も与えられず、誰かに殴られるかもしれない、いつ死ぬかもわからないような極限状態ではありません。そうすると、自分が生きている中で美味しいものを食べて美味しいと感じるとか、季節の移り変わりを感じるとか、ベッドで眠る幸せとかをちゃんと味わうのが良いのだろうなと思います。

破綻する人
強制収容所で、破綻をきたしてしまう人は、端的に言うと「外部環境に希望を求める人」であったそうです。例えば、収容所ではクリスマスと新年に大量の死者が出たそうです。クリスマスには家に帰れるのではないかという素朴な希望にすがっていた人が、結局はその時期になっても希望が出る記事が出ないことに落胆し、病気等への抵抗力を失った結果、死に至った例が多いのではないかという推定です(その他には説明がつかない)。自分自身の中によりどころ、つまり生きている希望や期待を持てない人は、頑張る意味も見失い、あっという間に崩れていったそうです。

生きる意味を問う
「わたしたちが生きることから何を期待するかではなく、生きることがわたしたちから何を期待しているかが問題なのだ」
自分も含めて多くの人は、常に何かを期待して生きていることが多いと思いますが、全く逆の考え方を提示されます。
例えば、「仕事が自分を待っている」とか、「愛する人や友人が自分を待っている」中で、自分はその責任を果たすために生きていると自覚した人は、自分自身に存在意義を見出せるので、簡単には破綻しなくなるという考え方です。
そういう考え方を持っていれば、何かに期待して一喜一憂するのではなく、自分自身によりどころを見つけて生産性のある日々を送れそうな気がしてきます。
※先ほど「自分は恵まれている」と記載した文は、実はこの考え方とは逆で、満足な衣食住があることが幸せを感じる条件になっている論理になっています。でも、これはこれで良いのではないかなとも思っています。日々のささやかなことに幸せを感じることは、自分の人生を充実させる要素だと思うので。

感想
上述した以外にも、様々な状況を通して「人間とは何か」を書いた本であり、つらい時、行き詰ったときに何度でも読み返したいと思います。
そして、自分自身に生きる責任やよりどころを見出せるように自分を保っていきたいですね。

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