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【小説】【童話】の記事

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小説・童話の記事をまとめました。
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#恋

【小説】月に空振り

 やったことのない私が言うのもおこがましいけれど、野球のバッティングはスポーツの中でも極めて難しい部類だと思う。なにせ成功率がとても低い。プロの世界のように実力が拮抗すると、チーム打率はおよそ二割半ばに収束する。つまり平均して、十回に二回か三回しかヒットにならない。  ヒットを打つためにはもちろん、バッターは振る必要がある。同じ三振でも見逃しによるそれは、やるべきことを怠ったと見られがちで、とかく印象が悪い。だから少年野球、いや高校生になっても、むやみやたらに三回振る選手がい

【小説】青が走る

 最近の天気予報は、臆病な傾向にある。曇りか雨か怪しい時は雨と言い、雨か雪か怪しい時は雪と言う。要するに、批判を出来る限り回避していると思われるが、小狡いことにテレビの場合は、その女々しい発言を大抵育ちの良さそうな、言い換えれば気の弱そうな、若い女性に言わせている。言わずもがな、彼女たちは容姿端麗である。私のようなおじさんは、ころっと許してしまうと見透かされているわけだ。  故に今回も、どうせ雨だろうと考えていた。仮に予報通り夜半から雪が降っても、ちらつく程度で朝積もっている

【小説】ハイドランジアの恋

 君の真面目さが俺には眩しい。白く清潔に輝いている。だから少しばかり汚してみたくなった。からかってみたくなった。もう一年ほど前になる。飲むことも、打つことも、買うこともしない君を、夜の街に誘い出したのは。  俺の行きつけの一つ、ハイドランジアという店名を聞いて、君は「おしゃれですね」と興味を示した。実は勢いに任せてもっと過激な(詳細は伏せる)、別の店に連れてゆくつもりだったから、君自身があの店を選んだと言って良い。  あの夜は夏の雨上がりだった。紫陽花の写真が転写されたネオン