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【ボードゲームのUI読解】数字の表示方法がもたらす効果

こんにちは。タンサン(https://www.tansan.co/)というゲームの製作会社の代表で、ゲームを作っているタンサン朝戸です。

2009年から10年ほどボードゲームを作ってきて、これまで200個以上のゲーム作りに関わらせていただいています。その中で、特にボードゲームのアートワークを手がけることが多く、ある程度ボードゲームのUIに関する自分なりの考えがたまってきたので、皆様にお伝えしたいと思い少しずつnoteにしたためることにしました。

今回は、数字の表示方法の違いからわかる機能について紹介します。

みていくのは『ドミニオン』。


ドミニオンは、2008年にアメリカでリリースされた「デッキ構築ゲーム」です。ドイツのゲーム賞で初の三冠を獲得したゲームで、たくさんの方に遊ばれています。

そんなドミニオンにも、UIの工夫でプレイ感を演出しているところがあります。あくまで僕の解釈にはなりますが、早速見ていきましょう。

ドミニオンの「数字」のデザイン

ドミニオンには、勝利点となる「屋敷」「公領」「属州」と、お金である「銅貨」「銀貨」「金貨」という重要なアイテムがありますが、これらのカードは数字の表示方法に違いがあります。こんな感じ。

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左が勝利点で、右がお金です。

勝利点は数字が盾のモチーフの「外」に飛び出していて、お金は数字がコインの「中」に配置されていますね。

微妙な違いですが、これは意図的に設計されていると考えます。

例えば、逆にしてみるとどうでしょう。

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パッと目にしたときの印象がすこし変わりますよね。

まぁ、「ほとんど変わらない」と思う方も多いと思いますが、あえて統一せずに違う表示にしていることからもわかる通り、ここにはデザインの意図が存在します。

モチーフと数字を重ねることで強まる「個性」

これらのデザインが違うのは、数量が蓄積するカード使用をイメージさせるカードの違いを感じさせるためだと考えます。

例えば、ある格闘のゲームに、このような2種類のカードが存在するとします。

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パッと見たときの印象はどうでしょう?

それぞれ、左のカードは「自分のパンチ力が5上がるカード」、右のカードは「カードそのものが5のパンチ力をもつカード」と説明されると、なんとなくしっくりきませんか?

また、右の方がカードそのものに より「個性」を感じますよね。

そう感じるのは、ゲシュタルトの法則のうちのひとつ、近接の法則が関連していると僕は考えます。近接の法則とは、「近くにあるもの同士がより関連している」と意識する人間の傾向のことで、デザイナーならよく使う方法ですね。

モチーフと数字を重ねて配置し、より関連性を意識させることで、個性が生まれる。そうすると、そのものに 「用途」を感じやすくなります。

身近な例で言うと、お金です。

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銀行口座の残高を目にしたとき、そのものが増えたり減ったりする様子を感じると思います。また、左の図は貨幣のもつ個性を薄めているともいえますね。

しかし、実際にお金を目にしたときは、「五百円玉だとこれが買えるな」「千円札だとこれに使える」「一万円札だと高級なものが買える」と、それぞれに違った印象を抱き、別々の「用途」を感じませんか? 一万円札を1枚見たときと、千円札を10枚見たときとでも、また違った印象を持つかもしれません。

このように、モチーフと数字を重ねて表示すると個性が生まれ、そのものに「用途」を感じてもらいやすくなります。ゲームにおいて使用することを意識させたい場合は、こういったデザインをすると都合がいいでしょう。

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上と下とでは上の方が個性を感じるのではないでしょうか。あくまで「よりそう感じやすい」という話です。

モチーフと数字が隣接することで感じさせる「総量」

逆に、ドミニオンにおいて勝利点は使用するためのカードではありません。最終的に所持している「総量」が重要になります。また、下のように勝利点を減らす効果がある「呪い」というカードもあるので、総量は増減します。

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そのため、「得点トラック」をイメージさせる作りがよいでしょう。

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では、先ほどのお金と同じように、2種類の表記をしてみましょう。

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上の組み合わせのほうが、各カードのもつ個性が薄くなり、総量をイメージさせやすいでしょう。下の組み合わせには、カード自体に効果を感じてしまうかもしれません。得点トラックのような作りをイメージさせるには、上のデザインが良いと言えるでしょう。

ボードゲームにおいては、カードの種類によってUIを選択することがより感覚的な遊びやすさを生むと思います。


今回はドミニオンでの「数字の表示方法の違い」について解説してみました。

ほなまた!

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