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外科医、辞めました【得たもの・失ったもの】

外科医を辞めて良かったこと
辞めて残念だったこと
長生きすることだけが正義なのか疑わしいこと
不眠症とか摂食障害とか精神崩壊したこと
幸せについて
色々思いの丈を書き綴りました。


読んでいただいたら、ぜひ忌憚なきご意見をコメントにてお寄せください。

はじめに

夜間・休日の呼び出し
山のような書類記載
当直明けでも容赦なく続く残業
上司による医局人事権乱用
仕事の不当な割り振り
大して書きたくもない論文を無茶な締切で書かされる
訳の分からない要求をしてくる患者・家族
夜中に酔っ払いの治療をするために怒鳴られる
etc、etc、etc…

医師も楽な仕事じゃありません。

私は、初期研修医の後に、消化器・一般外科医として、合わせて約10年頑張ってきました。

外科医の仕事にはとてもやりがいを感じていましたが、最終的には辞めることにしました。

そして、美容外科医へと転身しました。

今では自分にとっては、美容外科医に転職して本当に良かったと心底思っています。

ここでは、外科医を辞めた経緯や、転職して得たもの・失ったものなどの自分が感じたリアルな気持ちを綴っていきたいと思います。

子曰く、

君達はこの先の人生で…
強大な社会の流れに邪魔をされて
望んだ結果を出せないことが必ずあります
その時
社会に対して原因を求めてはいけません
社会を否定してはいけません
それは率直に言って時間の無駄です
そういう時は
『世の中そんなもんだ』…と
悔しい気持ちをなんとかやり過ごして下さい
やり過ごした後で考えるんです
社会の激流が自分を翻弄するならば…
その中で自分はどうやって泳いでいくべきかを

いつも正面から立ち向かわなくてもいい
避難しても隠れてもいい
反則でなければ奇襲してもいい
常識外れの武器を使ってもいい
殺る気を持って
試行錯誤を繰り返せば…
いつか必ず素晴らしい結果がついてきます

暗殺教室

はじめに断っておきますが、外科医を辞めて美容外科医に転職したことは、私にとっては良かったですが、誰にとっても正解だとは限りません。
と言うより、そもそも正解などはありません。

しかし、人の数だけ、その人にとっての人生の『最適解』があるはずです。

今の仕事が辛いと思っている方にとって、この話が少しでも参考になれば幸いです。

辞めるまでの経緯

私は子供の頃から、派手さはないけど真面目にコツコツと頑張るタイプでした。

要領も良い方だったので、学校の成績はそれなりに良かったと思います。

悪さをすることもなく、派手な冒険をすることもなく、勉強はそれなりにできる。
いわゆる従順な優等生タイプだったと思います。

そんなわけで、とくに熱い夢があるわけでもなく、流されるままに(もちろん受験勉強はめちゃくちゃ頑張ったけど!)医学部に入って、医師免許を取りました。

医師になってからも、持ち前の好奇心と真面目さで、仕事は人並みにこなしていきました。

ただ、元々熱い夢があって医師になったわけではなかったので、〇〇科になりたいというビジョンは全く湧きませんでした。
今でも、当時に同期が『俺は〇〇科になりたい』とか言って将来を見据えているのを羨ましく思っていたのを覚えています。

最終的には、ドラマ『コード・ブルー』を観て、苦悩しつつも活躍する世界観に惹かれて、初期研修修了後は救命救急科を志望しました。

コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命

自分の特徴として、

  • 教えたり、教えられたりするのが好き

  • しびれの鑑別などの地味で難しい働きよりも、救急室開胸&大動脈クランプとかドクターヘリみたいな派手なことが好き

  • スキルが身につくのが好き

  • 勉強して学びを実践に活かすのが好き

  • 今が充実していれば満足で、将来的なビジョンに乏しい

などということに気づきました。

手術にハマる

そんなこんなで、楽しく救急医ライフを送っていましたが、転機が訪れました。

手術との出会いです。

正直、医学生〜初期研修医までは、手術のことを、何時間も立ちっぱなしで怒鳴られ続ける単なる苦痛だと思っていました。

初期研修医のときは、オペに入る前には、友達に、『ちょっと修行してくる』とか言ってたくらいです。

業務時間だけでは飽き足らず、夜中も休日も呼び出されては修行するなんて、外科医とは何たるクソ仕事なんだろうかと本気で思っていました。

そんな私が、救急の研修の一環として、オペに入らせてもらえることになりました。

最初に執刀させてもらえたのは急性虫垂炎に対する腹腔鏡下虫垂切除術でした。

今にして思えば、いわゆる『ちょろアッペ』で30分もあれば終わるようなやつでしたが、1時間くらいの大手術になりました。(いきなり単孔式だったのもきつかったですけどね、ザッキー先生笑)

まずそもそも自力で盲腸の裏の虫垂を同定できません。
鉗子先端をカメラの画角内に登場させるだけでも一苦労。
鉗子が思い通りに動かず、子供の時のマリオカートみたいに、身体ばかりが傾く始末。

当然のように指導医先生のリリーフのお世話になりまくりでした。

このように、ほろ苦いデビュー戦となったのですが、意外にも『楽しかった!』というのが素直な感想でした。

もちろん悔しい気持ちは溢れていたのですが、『もっともっと上手くなりたい!』という、シュート2万本の特訓をしていた桜木花道のような気分でした。

SLAM DUNK


純粋で素直な自己実現への欲求。

そこからはもう手術のとりこでした。

当直明けで3〜4時間くらいの仮眠しか取れなかったのに、自ら志願して緊急アッペをやらせてもらいました。

解剖もよく分かってなくても、とりあえず入れるオペは全部助手に入らせてもらいました。

そして、あれよあれよという間に、救急医から外科医に転向していました。

手術にはゲームと同じような中毒性があると思います。

  • 時間を忘れるくらい集中する没入感。

  • うまくできない時の悔しさと、うまくいきそうな時の期待感とのバランス

  • 適度にレベルアップしていく自分と、手術の難易度

  • (これは思い上がりですが、)『この俺が病気を治した!』という圧倒的な勝者の征服感。


ゲームと同じで、観てるだけだとつまらないけど、一度自分がやると病みつきになります。


一度ハマったらとことんのめり込むタイプの私は、一所懸命に努力しました。

周囲の温かい人々にも恵まれて、最初の3年くらいは本当に楽しかったです。

気持ちの変化

春の夜の夢のごとく、人の気持ちというものは変化していきます。

結婚・子育てにより、仕事にばかり時間を注ぎ込めなくなりました。

加齢により体力が低下し、夜中の呼び出しが負担になってきました。

仕事もひと通りできる程度には慣れてきて、新鮮な刺激が減ってきました。

仕事(手術だけでなく、外来や病棟管理など諸々)にはちゃんとやりがいを感じてはいましたが、段々と『楽しい』よりも『しんどい』が勝つようになってきました。

他科の医師を含め、40〜60代の先輩たちを見ていても、ほとんどの人にギラギラ・キラキラした感じがなく、どこか疲れた印象でした。

そうしたら、『このまま生きてていいのかな、このまま疲れて働いておじいちゃんになるのかな』というような漠然とした不安に襲われるようになりました。

強いモチベーションが揺らぎ、どんどん仕事の嫌なところばかりが目につくようになり始めました。

まずは休日出勤です。

金曜日にも手術があるので、術後管理のためには土日も経過観察・指示出しが欠かせません。
何もない時ならば、業務自体は1時間もあれば終わります。(慣れてきて、マッハでやれば30分)
ただし、通勤時間も合わせると、さらに1〜2時間くらいは失われます。
これがいわゆる『ちょっと様子見てくるね〜』にかかる時間です。
こんな程度ならLINEとかFaceTimeでだいたい事足りるだろ…と常々思っていました。

そして、そもそもがfragileなお年寄りばかりなので、術後すんなりいかない時も多々あります。

CTとったり、本人や家族に説明したり…とかなんとかしていると、2〜3時間くらいはすぐ経ちます。

縫合不全(※直腸癌のオペであれば発生率5〜10%)などで緊急再手術なんかになれば、さらに3〜4時間もの時間が、まるで水が砂漠に染み込むように一瞬で消えてなくなっていきます。


何よりキツかったのが、夜間・休日の救急からの呼び出し。

これは本当に本当にしんどかった…。

真夜中にかかってくる他院からの緊急手術目的の転院依頼なんて、何度心の中では断ろうとしたか分かりません。

例えば、急性虫垂炎。

これ、純粋な手術自体はほとんどの場合15〜60分で終わります。

しかし、手術をするためには、本人・家族に術前説明をしないといけません。
チームの外科医や麻酔科医やオペナースにも来院してもらわないといけません。
来院してから手術が始まるまでに、最速でも1時間はかかります。
手術のためには、前後に麻酔を導入する時間&抜管する時間もかかるため、オペ室の滞在時間は2時間くらいはかかります。
退室後にも、標本整理をして、術後の経過観察や説明をして、医師指示を出して、手術記録を書いて…

とにかく時間がかかるのです。

急性虫垂炎なら、出勤してから退勤するまで、大体4時間くらいです。

急性虫垂炎でさえ、こんなにも時間がかかるのです。
手術が長いやつなんかを食らうと、5〜6時間なんてあっという間に消滅します。

そして、こんなイベントが楽な時でも4〜5日に1回は発生します。

こんな生活を何年も繰り返すと流石に精神を根こそぎ削られます。

いつ鳴るか分からない電話への不安で、テレビの電話のシーンとか、ちょっとした電子音にドキっとします。

当然のように不眠症になりました。
毎晩1〜3回中途覚醒していました。(辞める前はもうずっとベルソムラのお世話になってました)

夜中呼ばれると睡眠できません。
次の日も朝から普通に仕事です。
呼び出された後の日も普通に働いてます。

一回リズムが乱れると、数日間は体調が整うまでに時間を要します。

そうこうしていると、そのうち、夜中に呼び出されると、本能的に負の感情が湧くようになります。

『基本的人権を侵害する内容』だと分かった上で、あえて当時の心の声を本音で書きますが、

『何でこんな老い先短い人のために、大切な自分の命を削って休みや真夜中にまで働かないといかんのや?』

と本気で思ってました。
(もちろんプロとしてのプライドがあるので、患者さんや家族にはきちんと心優しく接し、できる限り最高の治療をしてきたつもりですが)

ちょっと想像してみて下さい。

必死で真夜中に何時間もかけて手術した患者さんが、その当の本人が!、手術されたことすら全く覚えてないのです。
意思疎通もろくにとれない…
認知症バリバリで、診察しようとしたら怒鳴ったり蹴られたり…

このやるせなさ・切なさは同じ気持ちを味わった人にしか分からないと思います。
日本が長寿世界一だと自慢していることなんて、ちゃんちゃらおかしいと心底思っていました。

ただ理性では分かってます。
患者さんは悪くないし、こういう矛盾だらけの仕事なのです。
医療制度がどうとか、国民皆保険がどうとかは、まさにその現場においては議論しても無駄なことです。

こうして、『世のため人のために必要なことをしている』という認識と、『社会的生産性に乏しい無意味なことを、わざわざ健康を害してまで行っている』という認識が共に存在することで、認知的不協和が生まれました。

このモヤモヤ感はおそらくほとんど全ての医療従事者が多かれ少なかれ抱えているのではないでしょうか?

そして、このアンビバレントな状況に陥ってしまうことで、患者さんに当たったり、他のスタッフに悪態をついたりする人が後を耐えません。

『この俺様がお前らのような愚民どものためにわざわざ手を施してやっているのだ、ありがたく思え!』
と考えると少しは気が紛れるのかもしれません。

幸か不幸か、自分は他者には八つ当たりできませんでした。
そして、我が無意識は思い通りにならないストレスを自傷行為に向けることで紛らわせることを選んだようでした。

気づいたら摂食障害になっていました。
大量にお菓子などを食べて、その後自分で吐くアレです。
一番荒んでいた時には週に3〜4回も暴飲暴食しては自己誘発性の嘔吐をしていました。

負の感情を抱いた自分、辛い思いをしている自分を否定したかったのかもしれません。
思い通りにならない状況のなかで、お菓子を買ったりすることは思い通りにできると確認したかったのかもしれません。

しかし、これがまた最悪に自尊心を傷つけるのです。

夜中の2時とかに独りで吐いていると、意味がわからないくらいの虚無感に襲われます。
何でこんなことまでして生きてるんだろう、みたいなことまで考えていました。

このままじゃヤバいと本気で思ったので、外科医は辞めることにしました。

仕事の負担は働き方改革とか、外科医が増えたことで、以前より相当軽減されました。
(救急の待機番も2日に1回から4日に1回くらいになり、たまには昼に上がれるようにまでなりました)

しかし、いったん切れた心の糸は修復不能でした。

たぶん誰にもハッキリとはバレてないくらい、夜中も普通に働けていたと思うけど、この先ずっとやり続けるのは無理だと思うに至りました。

妻にも相談し、子供もいるので収入が下がるのは困るけど、そこさえクリアしたら好きにしたらいいよ、と言ってもらえました。

そして外科医を辞めることが決まりました。

辞めることを決めてから

医局には属していなかったので、病院の外科部長にだけ相談して、やめさせてもらいました。
部長も、『辞められると、正直戦力的にはかなりダウンするけど、モチベーションがないと続かない激務なのも確かだから、引き留めることはできないね』と言ってもらいました。

辞めようと思い立ってから、1.5ヶ月くらいで次の職場の内定が取れて、3.5ヶ月後には転職できました。

ちなみに、現職の知り合い達の話を聞く分には、医局に属していると、こうも簡単かつすぐには辞められないこともあるようです。
医局長の前で土下座まがいのことをさせられたり、『後任が決まるまで』とズルズル続けさせられたり。
あな恐ろしや…。

美容外科医になることに

外科医の業務と並行して、転職活動を自分自身でやるのは正直なところ面倒でした。
そこでエムスリーに電話しました。(選んだ決め手は最大手だからでした。)

担当いただいたM浦さんに絞り込みから細かい事務的なやり取りまでほぼ丸投げさせてもらい、大変助かりました。(自分でやったのは面接と経歴書・契約書の記載だけ)
ご丁寧に面接対策までしてくれたのは驚きでした。
M浦さん、本当にありがとうございました。

最初はもっと規模の小さい病院で、細々とやり続けるという選択肢もありました。
けど、それは全然ワクワクしませんでした。

老健施設とかで週4くらいでゆる〜く働くことも考えましたが、そういう働き方はもうちょっと歳をとってからでもできるかな、という風にも思えました。

そんな中で、M浦さんが、
『気に障ったら申し訳ないですが……美容外科とかはいかがですか?』
と聞いてくれたのが美容外科医になるきっかけでした。

その驚きの勤務条件は以下の通り。

  • 当直なし

  • オンコールなし

  • 年収うまい棒250万本分相当(ちなみに最高で1300万本相当くらいまで増加)

当直もオンコールもないという最低条件を軽々と満たした上に、お金も儲かるし、好きな手術もできて、なんか華やかそう!
最高かよ!!

大事な決断は、わりと直感で決めるタイプの私。
気持ちはすぐ決まりました。

(ちなみに妻に相談したら、あまりに待遇が良すぎるから詐欺ちゃうか?と入職してからも数ヶ月間は疑っていました笑)

転職して良かったこと

ちゃんと眠れる

最も自分にとって良かったのは、夜に安心して眠れるようになったことです。

これは何物にも代え難い幸福です。
なにをその程度で…と思うかもしれませんが、もう一生保険診療には戻りたくないと思わせるほど最高です。

数年間悩まされていた不眠症は、1ヶ月でだいたい軽快し、3ヶ月でほぼ完全に治りました。

あまりに早く治ったので正直驚きました。
肌艶も良くなり、身体も軽くなりました。
たぶん寿命も伸びたと思います笑

今では22時半には寝て、5時半に起きてトレーニングしています。

毎晩6〜7時間も規則正しく眠れるなんて、なんと幸せなのでしょうか!

実際の睡眠時間。寝過ぎ⁉︎笑


家族との時間をより多く共有できるようになった

これも私にとっては幸せなことでした。

生存の欲求は、マズローのいうところの最下層に位置する欲求です。

夜に叩き起こされて強制的に労働が始まるというのは、最低限の欲求である生存欲求が満たされない状態です。
これはあまりにひどいことなので、それがなくなったところで、マイナスがゼロに戻るに過ぎません。

人生のバランスを考えるに当たって、コーチングにおける、バランスホイール を参考にしました。

バランスホイール コーチング・バイブルより

各分野をバランスよく伸ばすことで、豊かな人生になるという考え方です。
仕事に全振りしていた人生のリソースを、バランスよく他の分野に振り分けていくイメージです。

これを見て、大事にしたかったのは『家族』です。

土日に半日病院に行っていた生活から、土日の朝から子供と公園に行ける生活に変わりました。

子供が全力で親を慕ってくれるのは幼少期だけではないでしょうか?

かけがえのない貴重な一瞬一瞬を、より多く共に過ごせるようになったことはこの上ない喜びです。

実は今回の雇用に当たって、基本条件は土日祝日は休みではなく、不定休でした。
そこで、年収が200万円下がることを許容した上で、土日も休みにしてもらうことにしました。
大切な人と過ごす時間の価値を考えたら安いもんです。

お給料が倍増した

月の手取り額が、うまい棒7〜10万本相当から、ほぼ倍増しました。

ただ、これはまあこれだけです。
単純な数字上の変化です。
強いて言えば、教科書を買うのに躊躇しなくなったことは良かったです。

虚しいことに給与が増えた感動は、3ヶ月で消え去りました。

地位財による幸福は長続きしないのに対し、非地位財による幸福は長続きする、という重要な特徴があります。 「快楽のランニングマシン(hedonic treadmill)」というたとえがあります。収入が増えるとその時はうれしいですが、すぐにもっと多く欲しくなります。人はよりよい収入を求めて常にランニングマシンの上を走り続けてしまいますが、実はどこまで走ってもゴールにはたどり着かない(付録)。まさに、フォーカシング・イリュージョンですね。人はついつい、幸福の持続性の低い地位財を目指してしまいがちなのです。

幸せのメカニズム 実践・幸福学入門

例に漏れず、私も今ではもらえるならもっと欲しいと思っています笑
ああ、フォーカシングイリュージョン…

一般的に言われる通り、額面年収800〜1000万円を超えていると、主観的幸福度は頭打ちになります。

我々医師は、多少給与が増えても生活がさらに豊かになる実感はほぼないのです。

年収が増えれば増えるほど、幸せになれますか? お金と幸せの話

そのため、お金をうまく使う賢さが求められます。
お金をうまく使うことができないと、幸福度は全く上がりません。

参考までに…お金の使い方として、私自身が意識していることは以下の通りです。

  • 今しかできない経験に使う

  • 他者を喜ばせるために使う

  • 時間短縮に使う

  • 健康の維持・向上に使う

  • 知識や技能の維持・向上に使う

  • 心からときめくものに使う

  • たまに無理のない範囲で無駄遣いする


(無駄遣いとは、例えば、スポ根漫画が好きだけど、ちょっとズラして恋愛小説を買ってみるなどです。

無駄遣いは偶然と直感による、新たな可能性との出会いに対する投資だと思っています。
(大抵は本当に単なる無駄遣いで終わりますが、ハマった時にはほっこり幸せになれます。)

お金の使い方については、リベラルアーツ大学のこの記事が分かりやすいです。

そして、高収入の人にこそ読んで欲しい本が、『DIE WITH ZERO人生が豊かになりすぎる究極のルール』です。

私は価値観が変わるくらいの衝撃を受けました。
要約ブログなどでサラッとでも良いので、ぜひとも読んで欲しい本です。

おそらくミレニアル世代〜Z世代にはめちゃくちゃ心に刺さる内容になっていると思います。

ただ、実現するには相当高度なマネーリテラシーと家族の理解が必要なので、可能ならしっかり腰を据えて何度も読んで、家族とたくさんディスカッションして欲しいです。

仕事が苦しくなくてそれなりに楽しい

誰にとっても楽しい仕事というものは存在しません。

一般的には、

  • 自分が好き

  • 人より得意

  • 社会に役立つ

ということを仕事にすると天職になるということがよく言われます。

しかし、好きなことであっても、仕事にしてしまうと多少のしんどさが伴います。

また、社会が求めることと、自分のやりたいやり方が完全に一致することは稀でしょう。

得意なことも、その他大勢のレベルから突き抜けるにはそれなりの努力と時間を要します。
また、上位10%以内で居続けることは多少の天賦の才を持っている必要があると思います。

現実的な良い仕事の条件としては、以下のことが大切だそうです。

  • 協力してくれる仲間が存在する(最重要!)

  • 強制されるばかりではなく、自分で仕事を調整したり創意工夫する余地がある

  • 仕事の成果に対して、適切なフィードバックがあり、達成感を味わえる

  • 単調・単純な作業ではない

  • 世のため人のためになっているという意義を感じられる

  • ワークライフバランスが適切

  • 労働時間が過度ではない

  • 規則正しい勤務時間

  • 嫌なやつがいない

  • 組織内に不公平がない

  • 通勤時間が長くない


外科医のときは、やりがいや達成感に特化し過ぎて、ワークライフバランス的なところがあまりに疎かでした。

転職して、やりがいは程々に満足というところに落ち着いたものの、ワークライフバランス的な要素が合格点を超えました。

いい奴・嫌なやつというのはどこの組織でも存在すると思っているので、とくに変動はありません。

嫌なら辞めても良いということを覚えた

医師をやっている人は、多くが優等生タイプです。

医学部合格という、受験ゲームの最難関ステージをクリアした、ごく一握りの『エリート働き蟻』たちです。

  • 真面目にコツコツ努力する。

  • 与えられた課題は、多少無理でも結果を出す。

  • 人より頑張る。

  • 人より努力する。

これこそが働き蟻にとっての正義です。

逃げるとかサボるとか手を抜くということは選択肢にすら挙がりません。
もしそんなことしたら、『敗者』『脱落者』の烙印を押されると信じ込んでいます。

しかし、人生はもっとやりたいようにやって良いものだと思います。

受験勉強みたいに明らかな正解など存在しないのです。
誰と勝負しているわけでもないのです。
人より優れた人生なんて無いのです。

『最高』の人生なんてものは決して存在しないのだから、『最低』な要素をなるべく排除するというのは有効な戦略だと思います。

逃げたって辞めたって良い。
逃げるが勝ち。
三十六計逃げるに如かず。
Szégyen a futás, de hasznos. (逃げるのは恥ずかしい、だけど役に立つ)

志をもって生きていれば、なるようになるのです。

増してや、『医師免許』という打出の小槌を我々医師は持っています。
犯罪でも犯さない限り、食いっぱぐれる心配など皆無です。

変なこだわりから解放されて、自分が本当に大切にしたいものが明確になったことは、今回の転職で得た大きな財産になりました。


転職して失ったもの

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