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「探究」とは悩むこと、楽しむこと だからこそ生まれてくるものがある 〜「実践探究」プロジェクトリーダー“わっきー”インタビュー〜(後半)

2021年4月よりスタートした新プロジェクト「実践探究」。インタビュー前半では、「実践探究」とはどのような場所なのかということについて語りました。
インタビュー後半では、「実践探究」を通じて何を伝えていきたいのか、その世界観にせまっていきます。

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実践探究だからできること

ーーー家庭では実践探究のようなことはできないのでしょうか?ーーー

「実践探究」という場だからこそできることもたくさんあります。

例えば、子どもたちの「好き!」「やってみたい!」を、本当の意味で引き出すこと。
保護者さんが子どもを見たときに、どうしても生まれてしまう気持ちが「期待」です。だからついつい結果を求めてしまいやすい。そうすると、子どももそれを感じ取って応えようとしてしまうんです。そんなときに、第三者が関わると全然違ってきたりします。

あと、「好き!」「やってみたい!」を引き出すためには、せかさず、根気よくコミュニケーションしていくことが大事。

そして、やりたいことが見つかったら、プランニングして、行動して、振り返りをする。多くの子どもたちは誰かの力を借りることで、次にやるべきことがわかるし、それを振り返ることができます。けれど、保護者さんは忙しかったりするから、子どもたちのタイミングに合わせて見てあげることが時間的にも精神的にも難しいこともあると思います。

さらに、家族や先生以外のいろいろな大人に、ほめられたり見てもらえる経験ってすごくいいんじゃないかなって思います。これは、学校や家庭ではなかなかできないのではないかなと思っています。

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僕たちが「実践探究」でつくりたい世界

ーーー実践探究は何を目指しているのですか?ーーー

子ども、保護者さん、メンターが、三者で一緒に走っていくような感じのイメージです。

ぼくは、うまくプロジェクトが進むかどうかではなく、まずはその子が楽しめているか、わくわくしているかが大切だと思っています。無理なく、自然体のまま、自分が楽しいと思える範囲でできればそれでいいんです。

本当に伴走できているんだろうか?進んでいないようだけどこれでいいのだろうか?という質問を、保護者さんからたくさんいただきます。正直、僕たちも子どもも悩んでいます(笑)。
そもそも、「探究」っていうのは悩むものだと思っています。何が正解かわからない。それを、悩んで、深めて、そして楽しむ。
その中で生まれる一瞬一瞬こそがすごく大事なんです。ああでもないこうでもないと言いながら、一緒に、前に進んでいく。悩むからこそ生まれてくるものがある。

最終的には、僕たちがいなくても、その親子の探究のスタイルが確立されていったらいいな、なんていうことすごく願ってます。

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子どものちいさくてすてきな成長

ーーー印象に残っている子どもたちの変化を教えてください!ーーー

時計作っている子がいるんですよ。彼はもともと積極的にコミュニケーションをとったり、誰かと一緒に何かをしたりすることがそんなに得意ではないのかな?と思っていました。
だから作り方に困って1人であたふたしていても、周りに助けを求めることがなかなか難しい。
だから、ちょくちょくほめたり、何か困ったことあったら聞いてな、と気にかけながら、繰り返し声をかけてきました。
そんな調子で1ヶ月くらい経ったときに、さりげなくこっちに近づいてきたので、
「何か困ってるの?」と聞いてみたら、「ここがちょっとわからなくて、、、」と伝えてくれたんです。

時計作りは彼にとってすごく難しい作業なんだけど、保護者さんに話を聞くととても楽しく取り組んでいるそうです。
だから、自分が好きな時計作りを通して、困ったときに誰かに助けを求める、ということが少しずつできるようになってきたのだと思います。

それがあってから彼は、他の子が困っていそうな時に自分から声をかけて助けてあげるようになったんです。

難しい時計を作っていること自体は確かにとてもすてきなことです。でもそれ以上にすてきなことは、彼が自ら誰かの力になろうとして行動したということ。
とにかくこの彼の変化がとてもうれしかったです。

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保護者のちいさくてすてきな成長

ーーー保護者の方の変化はありましたか?ーーー

いま、カードゲーム作ってる子がいるんです。その子自身は、本を書きたいとか、YouTubeをやりたいとか、やってみたいことがたくさんあるような子です。

保護者さんには気になることがいろいろありました。あまりプロジェクトが進んでいないんじゃないか、とかペースが遅いんじゃないかとか。そんな保護者さんの様子が子どもも気になるみたいで、実践探究にいても集中して自分の好きなことに没頭できない様子でした。

だから、いちど教室の保護者スペースと子どもスペースの間に仕切りをしたことがあったんですよ。
そしたら、その子は保護者さんの目を気にせず、自分のやりたいことを素直に話してくれるようになりました。保護者さんは保護者さんで、子どもの様子を見ない!口出さない!という選択をしてすごく解放されたみたいで、その子のペースに任せようと。
「口出さない」という決断は、実際勇気がいることかもしれませんが、
それは、放置とか放任ではなくて、ちゃんと見ているよ、応援してるよ、信頼しているよ、っていう無言のメッセージでもあるな、と思っています。

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さまざまな体験から、自分で「気づく」

ーーーそれでも、うまくいくかどうか正直不安です。ーーー

そうですね。子どもたちのチャレンジを見守る保護者さんからも、これで大丈夫かな?うまくいきますか?という質問をいただくことはあります。しかし、僕たちが伝えたいのは「うまくいくことも、うまくいかないことも子どもたちには経験してほしい」ということ。

うまくいくことだけではなく、うまくいかないことからもいろいろなことに気づくことができると思うんですよね。

これって自分が本当にやりたいことなのかな?
うまくやるためには次どうしたらいいかな?
あそこでちょっとさぼっちゃったから、次はちゃんとがんばろうかな、
とかね。

様々な体験から、自分で「気づく」。それが小さな変化として積み重なっていきます。

僕たちは近くで子どもたちを見守りながら、その小さな変化を見逃さずに、保護者さんに伝えていくことをとても大事にしています。

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不安定を楽しむ

ーーー大変だと感じてることは何ですか?ーーー

やっぱり子どもとのガチンコ勝負。
日々僕たちも葛藤しているんです。口を出したくなることは山ほどあります(笑)
でも、その子がどう思ってるかっていうのをまず受け止めて、自分の言葉はいったんしまいこむ。
次どうすればいいのか一緒に悩み、葛藤しながら、毎回、来週、再来週、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月後の子どもの成長のプロセスをイメージして作っていくことだから、安定することはきっとないんだろうなって思います。
だから、正直大変です笑 でも楽しいんですよね。

あとは、僕たちスタッフみんなが持続可能であることが本当に大事。
ぜったいに無理はしない。子どもたちや保護者さんの幸せを祈りながら、僕たちがいかに幸せであるかっていうのを常に考えています。

毎回何が起こるかわからない不安は確かにあります。でも、実践探究のスタッフは、基本的にはそれもふくめて楽しめる仲間たちです。

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実践探究の今後の展望

ーーー今後、実践探究はどうなってほしいと考えていますか?ーーー

やっぱり少しでも多くの人に届けたいという思いがありますね。
でも、まだまだ至らない、もっともっと整えていかないといけない部分は山ほどあります。一人ひとりに向き合えば向き合うほど答えがないものだと思い知らされているので、日々アップデートしていくものだと痛感しています。
現時点では、自分たちがこんなふうに社会とかを変えるんだ!みたいなおおげさなことは考えていません。まずは目の前の人に全力で向き合うことから始めて、それを一つずつ積み重ねていきたい。がんばっていきたいと思います。

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実践探究は現在試行錯誤しながら、探究学舎三鷹教室にて運営しています!
ご入会を検討されている方、どんなプログラムなのか詳しく知りたいという方は、以下のメールまでお気軽にご連絡ください。
practice@tanqgakusha.jp(担当:宮脇)

※実践探究は2023年8月をもってサービスを終了いたしました。今までありがとうございました。
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(ライター 藍以)

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