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【親子の会話を豊かにする 「アート編」に込めた想い】 アート編制作者インタビュー(後編 あつし)

こんにちは!
探究学舎 広報チームです。

2021年1月よりオンライン通塾『アート編』がスタートしました!

「アートは世界の見方を変えたものである」というテーマのもと、名画に隠された秘密や知られざる画家たちのストーリーを様々な角度から探究していきます。

さて今回は、前編のたかおさんに続き、もう一人の授業制作者であるあつしに聞くアート制作者インタビューの後編です。

あつしは、授業制作の進行管理も務めるコンテンツプロデューサーのような存在でもあります。
常に「良い授業とは?」を探究し続け授業制作に関わってるいるあつしに、アート編に込める想いを聞きました。

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向 敦史(むかい あつし)

1993年12月14日 富山県生まれ
国際基督教大学 教養学部 教育学専攻 卒業
高校に4年、大学に6年通い、2019年3月に3つ下の妹と一緒にようやく大学を卒業。高校在学中に休学し、アメリカ留学。大学在学中に休学し、岡山県立和気閑谷高等学校にて2年間、中山間地域における学校の魅力化に従事。休学マニア。卒業論文「変容的学習論にみる教員の変容の促進要因に関する一考察」では、人はどのように変容するのかについて、上記の高校を題材に研究。人の変容を分析するのが好き。最近ハマっているのは、島巡り。屋久島、青ヶ島などの離島で石ころを拾い、その島がどうやってできたかに思いを馳せて感動している。

なぜ「アート編」では「絵画」をメインで扱うのか?

■前編で、アート編では絵画をメインに扱うと聞きました。
アートとなると、かなり広範囲にわたるテーマだと思いますが、なぜ今回は絵画を中心に扱うのでしょうか?

確かに、アートって広いですよね。正直、全部盛り込んでしまうと8章では終わらないです(笑)。
でも絵画を選んだ理由はちゃんとあります。それは、表現媒体として人類と共にメインストリームを歩いてきているのが絵画だからです。
何万年前の洞窟の壁画からはじまって、現代アートに至るまで、絵画は常に、「時代のありよう」を描いてきました。さらには、時に絵画は、時代を生きる人々の世界の見方を変え、新たな時代を切り拓いてきたと見ることもできます。そうしたこともあり、一部のアート作品は、作品そのものが物質的にもつ価値を大きく超えて評価され、高額で取引されています。現在も海外の高額落札ランキングの上位はほとんど絵画です。
つまり、人類の歴史と紐解くと、人間は絵を描くことを通して何かを表現することに価値を見出し、太古の昔から描くことを通して、時代を変え続けてきたのです。

そんな歴史のある絵画の中の隠された謎を解いていくことが、自分の人生にアートというエッセンスを溶け込ませて行く上で大事なポイントだと思っています。

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出典:istock


絵画に隠された「謎」を解くとは

■アート編の入門ってどんな感じになるんですか?ちょっとだけ教えてください!

ではこちらから質問します(笑)。
名画は、なぜ名画たるのか知っていますか?
先ほど話したように、いわゆる名画と呼ばれているものは高額で取引されていますよね。それを裏返すと世界中の多くの人が絵画を価値のあるものだと捉えているんです。
でも、素人である僕たちがぱっと見ても正直、その絵がなぜそのように扱われているのか分からなかったりしますよね。

そこで、授業では名画を少しいじった絵を子どもたちに見せます。
例えば、一部の構図を変えたり、色や形を変えてみた絵を見せたりして、「どっちが本物の名画だと思う?」と聞きます。すると、「なんとなく正解はこっち!」と、当たったりするんです。でも、「なんでそう思ったの?」と聞かれると、うまく説明できない。

ここまでくると、子どもたちの頭の中に「なぜだろう?」という問いが生まれ、「その理由を知りたい」という欲求に繋がっていきます。こうしたやり取りを通して、僕たちは子どもたちと絵画の間に「わかること」「わからないこと」の線を引いていくのです。 私たちは元来「わからないこと」を「わかりたい」と思っている生き物。子どもたちの中に生まれる素朴な「何でだろう?」をたくさん生み出すことで、気がついたら「知りたくなっている」という状態を目指しています。
そんな1,2章を導入として展開していき、「アートとは何か?」「名画はなぜ名画と呼ばれるのか?」、「アートが私たちに問いかけてくるものとは何か?」を味わう授業にしていきたいと思っています。

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アート編が産声を上げるまで

■アート編の制作はどんなことから始めましたか?

まずは大量の情報収集をすることから始めました。7冊ほど本を読み、関連する動画をたくさん観ました。もちろん、美術館にも行きましたよ。
情報収集する時は「どういう構成にしようかな」とは考えず、自分が面白いと感じたものを大切にしています。

例えば、僕が興味を持ったテーマのひとつが「色」でした。
12色相環ってありますよね。どの色とどの色を組み合わせたら調和になりやすいのか、どのバランスだと相性が良いのかをちゃんと説明することが出来るんです。しかも、その説明に使われるのが、人間の脳科学とか、ではなく、何と「カタチ」なのです。なぜか、12色相環から、綺麗なカタチが得られる色を数色ピックアップするとそれが見事に調和する。不思議です。

「色は“科学的”であり、色の組み合わせは“幾何学的”なんだな」と気がついたところから「じゃあ、本当に名画ではそうなっているんだろうか?」→「本当だ!」→「じゃあ、この面白さをどうしたら子どもたちが自分たちで掴み取っていけるかな?」そんな順番で考えを進めることで、少しずつ構成が立ち上がってきます。

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出典:istock


「表現する」というバトンを受けついでいく

■アート編を受けた後に子どもたちがどう言う状態になっていてほしいですか?

「自分も表現したいな」という気持ちを持ってくれたら嬉しいですね。

というのも、僕は、子どもは誰もが何かを表現したいという気持ちを持っていると思うんです。
ただ、成長のプロセスの中で、「それを出すと馬鹿にされちゃうかもしれない」「ダサイかも」「なんかあまり良くないかも」といった感情が積み重なることによって、自分の中にある「何か」を、「これは無かったことにしておこう」と封じ込めてしまう。
でも、僕は「自分の中にあるものを表現して世界に出現させる」ことが一番幸せな状態だと思っています。

だからこそ、アート編では、芸術家達がその時代の常識に対して、自分の中にある何かを表現しきることで、世界の見え方や感じ方をひっくり返してきたアートの歴史を知ってもらいたいと思っています。

そういった芸術家たちの姿から「表現する」というバトンを受け取り、世間の当たり前や他人に価値観に囚われるのではなく、自分が本当に表現したいものを出してもらえると良いなと思っています。

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出典:istock

自分が表現したものを、他者に受け取られる経験

■アート編では表現する機会はあるんですか?

授業以外のクエストやホームルームで、何かを作ったり表現する活動は出てくると思います。せっかくなので、変なものが出てきて欲しいですね(笑)

変なものというと語弊があるかもしれませんが、例えば、僕らが「三角形を作って」と言ったとしても、見たこともないような変な三角形を作ってくる子がいても面白いですよね。
「自分はこう捉えてるんだ」「自分が表現したい形はこういうものだ」と、どんどん恐れずに表現してほしいと思ってます。
そして、それを見た周りからも「この三角形、ねじれているけれど、なんかいいね」みたいな反応がたくさん起こるといいですね。

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出典:istock

アートは親子の人生を豊かにする

■とは言っても、表現することがやっぱり苦手な子もいると思います。

そうですね。何か表現するのはちょっと苦手っていう子にも、アートを通して世界の見え方を変えるってすごいな〜って感覚を味わったり、自分にしか見えない景色が見えてきたりするという体験を届けられた良いなと思っています。

アート編で学んだ絵を実際に観た時に「この絵はこういう思いがあったから描いた絵なんだな」や「この線が時代を変える線だったのか!」と親子の会話が増えてくると思いますし「自分はどう感じたか」を親子で味わってもらえたら嬉しいです。

きっと「美術館にいきたい!」なんて声も上がってくると思うので、一緒に美術館に行って、画家の描いた絵を直に見て感じて、そこからいろんなものを受け取る経験をしてくれたら最高です。

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出典:istock

---おまけ---

■あつしくんにとって印象的なアート作品は?

ぱっと思いついたのはジャコメッティの作品です。細くてまるで針金みたいな人間の形をした彫刻。でも、あの作品って全然人間っぽくないじゃないですか。写実的じゃないし、なんか変じゃない?って(笑)。
でもジャコメッティいわく、「人間の本質を見つめた時、人間はこういう風に見える」らしくて。細くて、今にも折れちゃいそうなんだけど強い。
展示を見ながら「人間の本質を表現するとこうなるのか。この人には人間がこういう風に見えていたんだな」と味わえて面白いなと思いましたね。

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出典:アートペディア(https://www.artpedia.asia/alberto-giacometti/)

そして、僕は自然もアートの一つだと思っていて。自然をモチーフにしたアートでは、「チームラボ」が手掛けた「増殖する生命の滝」という作品が好きです。
四国の山奥に、遥か昔からずっと流れ続けている滝があります。刹那的に流れる滝。その滝は、数千万年、数億年と地球にあり続けている岩を切り裂き続けている。そして、そんな自然の営みに投影されるのは、花という生命が生まれ、散っていくという生命が循環する様。様々な時間軸を持つ生命が一つの作品の中で溶け合い、混ざり合うことで、人間1人の持つ生命のスケールを遥かに超えた「生命」を感じられる作品です。僕はその作品を写真で見ただけですが、それでも悠久の時の流れや、生命の雄大さに、もの凄く感動したんですよね。
しかもこの展示の面白いポイントがこの作品を作るのに夢中になり過ぎて、告知をまったくしなかったらしいんです。なので、この作品を見たのは現地で設営した人だけだった。
自分たちが表現したい、自分たちが見たいものを世界に出現させる。ただそのためだけに作られた作品。その姿勢もアーティストとして素敵だなと思いました。

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出典:チームラボ(https://www.teamlab.art/jp/w/ever-blossoming-life-waterfall/)
https://www.teamlab.art/jp/w/ever-blossoming-life-waterfall/waterfallinshikoku/

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