私の、わたしだけの顔

『リップ色落ちしてる~!マジで死にたい~!!』

そんな軽率に、生死をさまよえるのか。やけに冷静なわたしは19歳。未だ、あか抜けない。


高校生の頃は勉強一筋を良しとする風潮だったのに、19歳や20歳になればお堅い教師も『髪は染めないのか?』と掌返し。こちとら、化粧も未修得だよ。

学生の頃、たまたまアイプチをした日があった。そのことを友人に話していると、それを聞きつけたクラスメイトが『えーーーー!アイプチしてるのー!』と大絶叫。放課後の教室。一斉に集まる24の瞳。その中には、担任もいた。




ワタシ、ハンザイデモシマシタカ?



目の前で、興味津々に顔を覗き込む男の子に心の中でぽつり。


あなたがいつか好きになる女の子も、あなたの知らないところで同じことをしているはずだよ。だけど、絶対にあなたのためじゃないよ。他の誰でもない自分自身のためだよ。


この経験がトラウマで、必要以上に可愛くなろうと思うことに抵抗してしまう。でも、あの日の私は確かに少しでも可愛くありたかった。それは誕生日でも好きな人に告白する日でもなかったけれど。


素敵にお化粧できた日は、レジで店員さんの顔を見てありがとうが言える。友達と目が合って、ダブルピースでポーズもできる。電車の中で、靴のかかとを踏まれても、絶対にへこたれたりしない。


みんな、誰かに「好き」って言われたくてお化粧してるだけじゃないと思う。少なくとも私は、私のことを『好き、愛してるよ』って本気で思いたいから、どうしても伝えたくて、背中を押してもらってるだけだよ。



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