凍える私
目には見えない透明な箱の中に私はいる。
箱庭なんてものじゃない。
空っぽなの。
何もないの。
空っぽの透明な箱。
私は凍えて動けない。
本当に怖い、
でも逃げ出すこともできない。
どうしたらいい?
わからないの。
空気も時々薄くなる。
呼吸もできなくなってしまいそうなの。
怖い。
私はお人形のように透明な箱に入れられて動き出すことができなくなってしまっているの。
誰か助けて!、と叫びだすこともできない。
怖いのよ。
ずっと向こう側に、何か熱く燃えている松明のような火が見える。
ぱちぱちと火花を散らして燃え続けているその日に向かって私は思う。
向こう側に私も行きたい。
でも。
このガラスでできたケースから出て、松明の火に近づいたら、飛んできた火花を受けて火傷してしまうかもしれない。治らない傷を自分に着けてしまうのかもしれない。燃えて灰になってしまうのかもしれない。でも明るく熱く燃えている松明の火は大きな音を立てながら私に語りかけてくる。
『燃えてるよ』って。
お人形。
私は今、人形の形になって自分を守ろうとしている。ガラスのケースの中で壊されそうになりながら。
松明の火が語り掛ける。
出ておいで。って。
燃えている松明を吹き消してしまおうとしている人がいる。
人形をそのままでポケットの中に入れようとして。
私は燃えてる松明の火を遠くに見ながら静かに思う。
近づいてみてみたい。
だけれども動き出せない。
本当に大丈夫?
震える心。
固まる指先。
燃えている松明の火はだんだん勢いを増してゆく。
震えてしまう。
ここから出たい。
でも。
本当はどこ?
本当は何?
ことばが出てこなくなっても、松明に魅入る自分を止められなくて震えてしまう。
本当はどこにあるの?
ポケットの口に針と糸でジグザグ模様のステッチをかけて閉じてくれる人がいたなら。
燃える火に近づいてみたい。
ありがとうございます。 嬉しいです。 みなさまにもいいことがたくさんたくさんありますように。