「ポストコロナ」は都市と地方との格差拡大!?

 コロナが社会のあらゆる場面に大きな影響を与えていることは言うまでもありません。大学を例に考えてみると、オンライン授業が普及して講義の多くが自宅で受講できるようになり、週1回程度スクーリングで大学に行けばいいようになったとします。そうなると、大学の立地による優劣が軽減します。東京だったら山手線圏内から遠ざかると偏差値が落ちる、なんて話もありますが、少々の立地の悪さは問題でなくなってくるかもしれません。そうなると授業の質が以前よりも問われてくるでしょう(就職の善し悪しが指標となる点については変わらないので)。そう考えると、地方の大学はチャンスです。大都会という求心力がない地方でも魅力あるオンライン授業によって学生を集められるようになるからです。


 でも、今回はそうならないかもしれません。それはなぜか?首都圏の大学は早々に前期のすべての授業をオンラインにすることを決めた大学も多くあります。そうでない大学も、仮に5月末に緊急事態宣言が解除されても6月一日(いっぴ)から完全な状態で再開できると本気で考えている首都圏の大学はないと思います。世間からの批判リスクを恐れて、いわゆる3密の大学でとても通常授業はできない。だからといって経営上、学費を返還することもしたくない。となると、ここはなんとしてもオンラインで授業を続けていくしかない。いま必死でそのノウハウの獲得をしています。


 翻って地方は幸いなことに、近いうちに授業を再開できるかもしれません。つまり一時的にこの状態を「凌ぐ」ことができればいいわけです。しばらくの間この状態をやり過ごすことができれば、以前と同じような大学環境に戻ることができます。それはそれでいいのですが、同時に「オンライン授業のノウハウ」を手に入れるチャンスを失うことにもなります。これは今後の大学運営上、またそこに所属する大学教員にとっても大きな損失です。

 不幸な仮定をすれば(リスクマネジメント上は必須ですが)、コロナ感染の第二波が来るかもしれません。また、感染症はコロナだけではありません。近年の激しい気象状況に鑑みれば天候によって大学に学生を集めて授業ができない日数が増えるかもしれません。今後のことを考えればこの「オンライン授業のノウハウ」は手に入れておいて決して損はありません。いや、恐らく「必須」でしょう。


 話をビジネスに転じます。首都圏の企業はいま必死にネット上で売上を上げることに注力しています。一方で地方は営業再開が視野に入ってきたので、やはり「凌ごう」と考えている企業が多いと思います。しかし、よく考えてみてください。ネット上で稼げるのであれば、その企業の営業展開エリアである首都圏に「顧客(ターゲット)を絞る必要」はまったくありません。つまり、日本全国、世界の顧客を対象にすることができるのです。


 「ポストコロナ」は大都市を中心に広がっています。したがって、これらの地域で事業を展開する企業にとっては死活問題です。必死で生き残りをかけて、インターネットで稼ぐノウハウを手に入れようとしています。同時に、P.F.ドラッカーの言葉を借りれば「イノベーションの機会」でもあるわけです。その結果として、「ポストコロナ」は「都市と地方との格差の拡大」の可能性が大なのです。それはICTとインターネットを使ってビジネスを展開する「ノウハウとスキル」の差です。エリアの無力化はインターネットの普及により、すでに起きていることです。どこに拠点があっても通販やネットのサービスは営業できます。今後は今までになかった分野、業種においても、全国規模でインターネットを介して顧客の獲得競争が起きます。

 社会全体のオンライン化の流れに関して、それが正しいか間違っているかの議論は別途行うとしても、現実的に生き残るためには「抵抗するな、受け入れろ、流れに乗れ!」、そして「流れの先頭に立て」です。

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