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2-14 そうだ,教師になろう!(前編)

-教師デビューへの道

●はじめに

 北海道の高校で採用されて,今年(2018)で5年目。といっても,北海道にはもともと縁もゆかりもなく(地元は千葉県),いくつか受けた教員採用試験で北海道だけ合格したのでした……。

しかもボクは大学を卒業してすぐに教員になったわけではありません。ボクが大学時代に通っていたのは工業大学の工学部。そして,その後は民間企業へ5年ほど勤めていました。

 

●ざっくりな進路選択

 将来どうしたいか決まっていなかった高校時代。とりあえず周りの友達と同じように大学を志望していた矢先,夏の金曜ロード ショーで『天空の城ラピュタ』を見て,機械をいじる主人公・パズーに感動! 「自分もあんな風になりたい !!」と,機械工学科に進路を決めたのでした。

 意気揚々と大学に入学。けれど,機械工学のキモである材料力学やたくさんの実験,製図の講義にボクはあまり興味を持てませんでした。パズーのように「機械をいじって誰かの役に立つ」なんて講義もありません(そりゃそうだ)。そんなわけで,卒業後に技術職・ものづくりの仕事を目指していいのかどうか,疑問を感じるようになっていたのでした。

 やがて,就職活動の時期が始まりました。いくつかの職種を受け,結局,音響・防犯設備メーカーの営業職に採用されました。

 

●民間企業にいた頃

 「音楽が好き」という理由で音響メーカーに入社したのですが,配属されたのは「セキュリティネットワーク営業所」という防犯カメラやネットワークシステムを販売する部署(汗)。仕事内容は,代理店からの要望を聞き,システムを構築して見積作成,提案,納入立会い, 現場調査, 新商品の PR…etc。

 希望部署とは違ったけれど,やりがいもありました。営業活動の中で,相手に感謝されたり役に立つ幸せを感じることができたし,自分の売上成績が上がっていくのは達成感もありました。

 一方で仕事量は膨大……。仕事に慣れていなかった入社1~3年目の頃,残業は毎月 100 ~ 150 時間ほどになりました。休日出勤もたくさん。平日は 23 ~ 24 時まで職場。得意先から電話を受けすぎて,朝受けた携帯の着信履歴が夕方には消えている,なんてことも……。まさに「仕事に追われている」感覚でした。そんな仕事にも年を追うごと慣れてきました。そして自分の時間にゆとりを持つことができるようになった頃,「このままでいいのかな~」なんてことを強く思うようになりました。

 ところで,ボクは入社1年目から,大学生相手に業務内容を説明したり,相談に乗る「リクルーター」という仕事にも関わっていました。

 「自分より若い人相手に仕事をする」「何かを伝える」この仕事内容にボクはとても魅かれ,毎年たのしみにしていました(でも毎年,3月に数日だけの仕事,汗)。

「ずっと若者相手に仕事をしたいなぁ。そんな仕事ないかなぁ」

 そんなことを考えていたら,いつしか「学校の先生」という仕事に魅かれるようになったのでした。

「でもなぁ,教員免許も持ってないし,教職の単位もないなぁ。それに何の教科を教えればいいんだろな」

 あらためて自分の仕事内容を考えてみると… 

 「音響・防犯設備 ⇒ 電気・音・波・光 ⇒ うーん理科っぽい!

よ~し,理科の先生になるか~!」

……そんなざっくりな理由で,理科教師を目指すことにしたのです。

 

●日本初! 通信制の理科コースが開設される大学へ

 教員免許状を取得するため,あれこれ調べてみると, 平日にキャンパスに通うのではなく,郵送で送るレポートと,夏・冬に行われる「スクーリング」(通信教育生が教室で講義・授業を受けること)で単位をとれる「通信制の大学」があることが分かりました。説明会に参加すると,「翌年から通信制の理科コースをはじめて開講します。日本初ですよ」とスタッフから説明を受けます。

 「日本初!なんてタイミング! …神様が入学しろって言ってるんだ!」

 そう思ったボクは入学願書を提出し,入学選考(小論文・面接)に無事合格。あわせて5年間勤めた会社も退職し,第2の学生生活を,日本初の通信制理科コースが開設された「明星大学通信教育部」でスタートさせたのでした。

●二回目の大学生活へ

 こうして,ボクの第二の大学生活がはじまりました。といっても,通信制なので大学に通うことはほとんどなく,主にレポートや試験で単位を取得します。入学手続き後,届いたのはテキストとレポート課題の山…(汗)。このレポートを仕上げながら,夏休み,冬休みにスクーリングという集中講義を受けて,教員免許取得を目指すというわけです。

 ちなみにボクは大学時代にひとつも教職課程を取っていなかったので,2年間で約 70 単位ほど取りました。学費は 40 万円くらいです。

 

●明星大学通信教育課程の特徴

 そうしてスタートした第2の学生生活。入学後,はじめて「通

信制ってこんなカンジなんだ !!」と知ることがありました。 

①人が多い

……スクーリングに行くと,意外とたくさんの人がいます(食堂に行列ができるぐらい…)。夏には全コース合わせると1日何百人もの学生がキャンパスに集まります。「もう1回大学に行くなんて,よっぽど珍しい人だろう」と思って入学したのですが,そうでもなかったようです(笑)。

  通信制で勉強をしはじめて「孤独に勉強する不安」に襲われ,単位を取るのが心配だったボクは,同じ講義を受けている周りの人に声をかけて情報を交換しあったり,悩みを共有しあったりしました。初対面で緊張する性格だったのに不思議です(追い詰められたらなんとやら…)。

②学生の多様さ

……「もう一度大学で単位を取る人たち」は,様々なキャリアを持つ人であふれてます。「現在 JR で働いている人」だったり,「現役で小学校の先生やってる」人」だったり, 「バンドやってる人」だったり。様々なキャリアの人たちと話すのはとても刺激的で,自然と雑談も長くなります(講義が終わって飲みに行くこともしばしば…)。

●単位取得までの道のり

 ひょっとしたら,「あら~,じゃあ私も入学してみようかしら」と思った人がいるかもしれません。ここからは,ボクの単位取得までの道のりを簡単に紹介したいと思います。

①とにかくレポート

…… フツーの通学制の大学では,1科目(2単位)に対して「15週(90 分)の講義+試験」みたいなカンジだと思います。一方,ボクが通った明星大学通信教育部では,「課題レポート2本(2000 字 × 2)+科目修了試験 or スクーリング」というカンジで単位を取得します。科目修了試験は年に8回あり,レポートを出さないと試験が受けられません。なので,とにかく「レポートを仕上げて郵送」の日々を繰り返します(レポートはいつ出してもかまいません)。

  仕事を辞めていたボクにはたっぷり時間がありました。そのため,「レポート1本(2000 字)を1日で仕上げよう!  2日で1科目仕上げたら,だいたい 70 日ぐらいで単位取得できる!」こんな見通しで学習を進めていたのでした(実際は半年ぐらい時間がかかりました…汗。レポート1本に1~2週間かける人もいれば,1週間で 20 本ぐらい仕上げてしまう強者も! 勉強するペースはさまざまです,笑)。

②試験は数打て

……一方で悩んだのが「科目修了試験」でした。分厚いテキストから 1 ~2問出題され,50 分の試験時間内に答案を埋めます(テキスト持ち込み不可)。困ったボクでしたが,フツーの大学と違って「試験に落ちてもまた次回(来月など)受ければいい」というシステムに救われ,何回も受けて合格しました。何回も受けていると,前回と同じ問題が出題されたりします(ねばり勝ちか? 笑)。

 そうして,順調に単位を取得していき入学して半年もすると時間に余裕も生まれてきました。そこで,中学校で「学習支援員」というアルバイトをしながら,教員採用試験の準備を始めることにしたのでした。

●〈教育〉ってなんだろな

 単位の取得は順調でしたが,一方で肝心の「どんな教師になりたいか?」「理想の授業を実現するためには?」といったことはまだ見えずじまいでした。「教育原理」「教育心理」などの教職科目を勉強しても「こんな教師になりたい」「こうすれば子どもから喜ばれる」というものがわからなかったのです。ちょっぴり悩んだりもしたけれど,当時 28 歳のボクです。

「そういや,理想の社会人とは? 理想の営業マンは? なーんて考えずに就職したよなぁ…。現場に出てから苦労して探し出していくものなのかな」

 そんなオトナな割り切り方をして,〈教育〉について考えることもなく,とにかく「単位取得」のためだけに勉学に励むのでした…。

 そんなカンジで勉強を進めていたボク。そして何コマ目かのスクーリング「理科教育法」で,ボクの教師人生を変える人に出会うのです。

(つづく)


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