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ユートピアについて

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ユートピアについての覚え書きを一覧化したもの。見返すときの便宜として。
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記事一覧

ユートピアについて その39:ブロニスラフ・バチコ『革命とユートピア』他

16~18世紀の「ユートピア」  ブロニスラフ・バチコ『革命とユートピア』は18世紀フランスの…

大沢野櫻
8か月前

ユートピアについて その38…空想旅行記から非ディストピアフィクションへ

反ユートピアから逆ユートピアへ…ディストピアフィクションの構造  ユートピアという語はモ…

大沢野櫻
9か月前
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ユートピアについて その37:ミヒャエル・ヴィンターのユートピア論②

「その36」に加筆し小見出しを付けたものになる。加筆分は「19世紀のユートピア」とその少し…

大沢野櫻
9か月前

ユートピアについて その36:ミヒャエル・ヴィンター『夢の終焉』のユートピア観

 ミヒャエル・ヴィンターは戦後間もない東ドイツに生れ、壮年期にさしかかる頃までをこの社会…

大沢野櫻
10か月前

ユートピアについて その35:ヘクスターの『ユートピア』論

ヘクスターの『ユートピア』論の企図  原書は1952年、翻訳は1981年に出版された、アメリカの…

大沢野櫻
10か月前
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ユートピアについて その34:ヘクスター③(モアの思想の階位制について)

 へクスターは本書の方針として、『ユートピア』が持つ社会批評としての一貫した意図を想定し…

大沢野櫻
11か月前

ユートピアについて その33:へクスター②・『短くて恐ろしいフィルの時代』

『ユートピア』が冗談の類ではなく、同時代の流儀で真剣な社会批評を展開した作品であるということについては、同時代のモアの友人たちのあいだで既に合意があった。そして、優れた社会批評である以上、その意味は明確に読者に伝わるものであるはずだ。社会主義の先駆としての、あるいは全体主義への警鐘としての『ユートピア』という近年の解釈を遠ざけるヘクスターは、同時代の友人たちによる明確な理解をまず取り出す。 『ユートピア』のバーゼル版が出版される際、三人の人文主義者がこれについて文学的な寄稿を

ユートピアについて その32:J・H・へクスターの『モアの「ユートピア」 ―ある思…

 原書は1952年、翻訳は1981年に出版された、アメリカの歴史学者J・H・へクスターによるトマス…

大沢野櫻
1年前

ユートピアについて その31:菊池理夫『ユートピアの政治学』とモア

 菊池理夫『ユートピアの政治学』をようやっと一通り読み終えた。1970年代から80年代にかけて…

大沢野櫻
1年前
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ユートピアについて その30:『リコリス・リコイル』について①

前置き  アニメ『リコリス・リコイル』1話冒頭では「暗殺者集団により保たれる治安を誇る平…

大沢野櫻
1年前
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ユートピアについて その29

カンパネッラ『太陽の都』概要  トンマーゾ・カンパネッラの『太陽の都』は1623年にフランク…

大沢野櫻
1年前
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ユートピアについて その28

 未来に実現するかもしれない「悪しきユートピア」への不安、それをいっそう率直なかたちで表…

大沢野櫻
1年前
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ユートピアについて その27

「タイム・マシン」の未来世界  ハーバード・ジョージ・ウェルズの『タイム・マシン』は西暦…

大沢野櫻
1年前

ユートピアについて その26

 ユートピアの名ははじめイギリスの大法官トマス・モアによって創造され、その起源は古代地中海の対話編に求められ、物理的実在としては小アジア・ミレトスのヒッポダモスの計画に類例が見いだされ、都市計画としてはルネサンス期のイタリアから近代のパリにもみられ、西欧世界の近代を通じて類似物が多く想像され、20世紀には逆ユートピアのかたちで隆盛を見、21世紀にいたるまでその系譜は続いている。  この「ユートピア」、理想社会は、ディストピアフィクションおよび先行するユートピアフィクションに