理解ある彼くんは待っていても生えてこない

私は学校や職場など、いわゆる自然な出会いの場でモテたことが1度もない。学校や職場の同年代の男性には食事に誘われたこともなく、恋愛に発展しそうな気配が本当に皆無で、少しでも「あの子、いい感じだなあ」とか、「あの子と仲良くなりたいなあ」と思われているような、私に好意を抱いてくれている気配を一切感じたことがなかった。

告白まではされなくとも、20代前半の女性なら、多少なりとも異性から好意の視線を感じたことがある方が多数派なのではないだろうか。20代前半の私は、ちょっと異常なレベルでモテていなかったのではないかと思う。20代前半女性の下位10%には確実に入っているだろう。

20歳中盤はまったくモテなかった私だが、28歳あたりからマッチングアプリや相席屋などの出会いの場に積極的に出向くようになり、29歳で初めて彼氏が出来た。


これまでモテなかった理由は、服装や髪型が垢抜けず外見がブスだったというのはもちろんあるが、自分の有利な市場に足を運ばなかったのも大きいと思っている。

私が言いたいのは、学校や職場などのいわゆる「自然な出会い」を通じて恋人を作ろうとするのは、発達障害のある人にとっては非常に分が悪いということだ。


多くの発達障害の人が抱える問題の一つが、「集団に馴染めない」という特性である。

私の場合、特に大学のサークルなど同年代の集団になるとどうしても浮いてしまう。固い表情から取っつきづらい印象を与えてしまうらしく、まずあまり話しかけてもらえない。せっかく発言するタイミングがあっても、大人しそうな見た目とは裏腹に早口でテンション高めのトーンで話してしまい、「お、おう…」的な反応で引かれてしまう。ASD的な生真面目そうな雰囲気に反してADHDを発動して抜けているのがバレてきたあたりから、「愛のあるいじり」ではなく「いじめに近いいじり」を受け始める。いじられて笑われる以外では、相手から話しかけてもらえない。自分から無理にでも話しかけない限り、気づいたら1人だけポツンと余ってしまう。うっすら避けられるか雑な扱いを受けるかのどちらか。ずっとそんな感じだった。


仲間内で大切にされていない人をわざわざ彼女にしたいと思うだろうか?

その集団に馴染めていない時点で、かなりマイナスのフィルターがかかっているのではないだろうか。社会的には引く手あまたの「20歳の女子大生」が、この集団ではただの「変わった子」なのだ。20歳の女の子ならいくらでも需要はあるのに、その集団内では「女として見れない」「コイツと付き合っていると思われたら恥ずかしい」と思われてしまうほど価値が落ちているかもしれない。

集団内のモテにおいては、個人の性格そのものだけではなくキャラや立ち位置も判断材料となる。学生時代を思い出すと、顔立ちがそれなりに整った美術部の女子より、そこまで美人でもないテニス部の女子の方がモテていたのではないだろうか。素材はいいのに、「美術部所属の陰キャラ」という属性によって相当割り引かれているのである。


また、私はこれまでに「変な人にモテるよね」と何度も言われたことがある。
「変な人にモテるよね」と言われた時、その変な人が具体的に誰を指しているのかは大体分かる。要するに、挙動不審気味なおじさんにモテてしまうということらしい。

集団だと特に、発達障害の特性が悪い方向に発揮されやすくなる。「あの子もちょっと挙動不審な感じで自分と同類っぽいし、派手な雰囲気でもないから自分でも相手にしてくれそう」と思われてしまうのだろう。

私が24歳の時に同じ職場の40代男性と”お似合い”呼ばわりされたのも、常識的に考えればあり得ないことだ。24歳で結婚相談所に登録すれば、まさか年収600万円の40代男性を紹介されることはないだろう。いじられキャラのせいで相当足元を見られていたと思う。


10代後半~20代中盤の1番いい時期にまったくモテなかったのに、アラサーになってそういう場に足を運ぶと同年代の男性から普通に声がかかった。好きなタイプを聞かれたり、連絡先を聞かれたり、ちゃんと恋愛対象として「アリ」認定されているのが分かるのだ。

もちろんヤリモクも多いのだろうが、性欲も含めた異性として見られているような好意の目線が一切感じられなかった20代前半の頃からすれば、男性の態度が明らかに違った。

そして、同年代で仕事もちゃんとしていてまともな見た目の男性から好意を抱いてもらえて、これまでの29年間は何だったんだ?と思うほどあっさり彼氏ができた。「変な人にモテる」と何度も言われてきたが、彼は全然変な雰囲気でもなくて、結婚相談所にでも登録すればいくらでも申し込みが入りそうな至極真っ当な人だ。


この結果から分かったのは、私は美人とまではいかなくとも、見た目が原因で彼氏ができないほどのドブスではないということ。また、話が通じる程度に異性と会話ができているということ。

やはり、集団に入った途端に価値が暴落しているとしか考えられないのだ。


集団の中で浮きやすい発達障害の特性によって魅力が半減してしまう以外にも、発達障害の女性が学校や職場での恋愛に向かない理由がもう1点ある。

それは、周りの女性から反感を買い、人間関係が悪化する可能性があることだ。

ただし、相手の男性のスペックによって周りの態度は一転する。性格の悪い話だが、いかにもチー牛だとか、あまり人気のない男性と付き合えばむしろ同性からの好感度は上がる。「えっ、おめでと〜!お似合いじゃ〜ん!笑」とか言って、ニコニコしながら惚気話を根掘り葉掘り聞いてくるはずだ。

しかし、割とイケメン風で人気のある男性と付き合ってしまうと、全く違う態度になる。いじめとまではいかなくても、多少当たりが強くなったり、態度が冷たくなることは往々にしてあるだろう。

特に女性社会は「変わった子」「不思議ちゃん」に厳しい。そこまで美人ではなくても、しっかりした感じの子ならイケメンと付き合っても周りはあまり強く言えない。それが、浮き気味でいじられキャラの子がうっかりイケメンと付き合えば、「なんであんな子が?」と嫉妬の対象になる。

マッチングアプリや相席屋ならそういうしがらみがなく、好きな相手に自由にアプローチをかけられる。恋人探しが前提の場なら、同じクラスにいても絶対接点がなかったであろう陽キャラっぽい男性でも、女性から誘えば割と応じてくれるだろう。早くセックスに持ち込もうとする奴は多いだろうが、スタートラインには立てているので普通にお付き合いできる可能性もゼロではない。

挙動不審なおじさんからアプローチされても無視すればOK。職場のように仕事を人質に取られているわけではないので、恋愛対象になりそうにもない人には愛想を振りまく必要もない。

結婚を考えている人はマッチングアプリなどより結婚相談所の方がいいだろう。結婚相談所も年齢と顔さえクリアすればとりあえずOK。特に年齢の比重が非常に高いので、若いだけで特大アドバンテージになる。不美人でコミュ障の20歳が社交的で美人な35歳に勝つ世界である。


もちろん例外もある。発達障害でも自分に合った集団に属することができた人は、自分の価値をブーストすることもできる。分かりやすい例が「オタサーの姫」だ。

「競争相手となる同性が少ない」「女性慣れしていない男性が多く求められるハードルが低い」という有利な環境に加えて、そこにいる男性にとっては「普通の女性なら理解できない趣味を一緒に楽しんでくれる」という付加価値も付く。普通ならモテなさそうな女性でも美味しい思いをできる可能性はかなり高いだろう。

ただし、オタサーの姫は誰にでもなれるわけではない。そもそもアニメや漫画などの分かりやすいオタク趣味に興味がない人も大勢いるだろう。


学校や会社など広く人が集まる場では、明るくて社交的で器用な子が結局1番モテる。基本的に「変わった子」認定された時点であまりモテなくなると考えた方がいいと思う。
さらに、「変わった子」がコミュニティ内でそこそこモテている男性と付き合うと、「なんであんな変な子が」と周りの女性から反感を買い、人間関係が悪化するリスクもある。

自分が万人受けするタイプではない自覚があるとしたら、自分に有利なステージに立てるよう一刻も早く動くべきだ。

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