2020教育改革に向け「これからの探究学習」はどこへいくのか? 学びを探究するメディア『Q』トークライブレポート
6月2日、学びを探究するメディア『Q』トークライブ―2020教育改革に向け「これからの探究学習」はどこへいくのか?―を開催いたしました。60名の定員を超えて多数のキャンセル待ちが出るなど、”探究学習”への関心が高まっていることを感じさせた今回のイベント。ダイジェストをお届けします。
イベントの始まりは、「学習学」を提唱されている本間正人さんと、『Q』の責任編集を務める炭谷との対談セッション。20年来のお付き合いがあるお二人です。
まずは、23年前、炭谷が探究型学習を行うラーンネット・グローバルスクールを設立した経緯について話すところから始まりました。
何を学ぶかを自分で選べば、探究サイクルが回り始める
自身の子ども時代、「自分が興味のある、本当に学びたいことは学校では学べない」という不自由さを感じていたという炭谷。その分、赴任先のデンマークで、娘さんが通う学校の教育のあり方から受けた感激は、大きかったようです。
「学校では、本当に学びたいことが学べなかった」という炭谷の言葉をうけ、本間さんは、日本の集団型の一斉授業では、子どもの好奇心を刺激できる仕組みになっていないことを指摘します。
その原因は「集団型の一斉授業では、何を学ぶのか、子どもが自分で選べる環境になっていないことにある」と、炭谷は言います。
「点数で測れる」だけでない子どもの能力を、見つめなおす教育へ
2020年教育改革では、知識偏重型の大学入試から主体的に考える力を問う大学入学選抜への改革や、小中高での「主体的、対話的で深い学び」への変革など、大きな転換が求められていますが、教育現場はその変化にどう対応していけるのでしょうか。
本間さんからは、学校現場では、社会で生きていくために重要な力よりも「点数で測れる能力」を評価する文化が根強く残っている現状が語られます。
「1つの正解がある」と思い込まずに、みんなで考え続ける
その後は本間さんの投げかけにより、参加者同士のダイアログタイムが始まります。
本間さんは、正解がない問いに対してみんなで考えること、そして正解がないゆえに、「自分らしい考えを安心して言っていい」と思える場を作ることが、とても大事だと言います。
参加者の方々からは、探究学習についてこんな質問があがりました。
これらの他にも出された質問は、「探究型学習を探究したい」という参加者の皆さんの熱意が表れた、具体的な質問ばかりでした。
探究学習の実践者たちが、現場で考えていることは?
休憩をはさんだ次のセッションは、探究学習の実践者によるショートプレゼンを聞き、興味のある分科会にそれぞれ参加するというプログラム。
1人目のスピーカーは、矢萩邦彦さん。知窓学舎で塾長を務める矢萩さんは、様々なフィールドで活躍しながら、”現場で授業を担当し続けること”をモットーに、実践を続けています。「従来の詰め込み型の学習を楽しめる子もいますよね。詰め込み型の学習を頭ごなしに否定するのではなく、探究型学習と従来の詰め込み型の学習法を接続し、子ども1人1人が輝ける場を作ることが大事なんです」と熱く語りました。
2人目のスピーカーは大日向百樹さん。cst(コミュニケーション スキルス トレーニング)の代表を務め、「探究をしていく過程で、どう子ども達は能力を発揮していくのか」「他者と協働していくには、何が必要なのか」という2つの問いを日々探究しているそうです。その問いのカギは「最大限のコミュニケーション能力をもつこと」にあり、「言語技術(ランゲージ・アーツ)」を子ども達が習得することが必要だと言います。
最後のスピーカーは、池田哲哉さん。小学校受験を対象とした学びの道教育研究所の代表を務め、「社会が変わるにつれ、主体性や協働する力が小学校受験でも非常に重視され、最近ではほとんどの小学校が行動観察という手法を取り入れています」と話します。行動観察では、主体性やコミュニケーション能力など、数値で評価できない力を、どう評価するのでしょう。分科会では、その評価の方法について、ワークが行われました。
セッションの最後では、参加者もスピーカーも早口で熱心に話す姿が見られ、「話し足りない!」「聞き足りない!」という、あっという間の3時間でした。
子どもだけでなく大人自身が、探究サイクルを磨いていこう
最後に、炭谷がトークセッション中に語った、ラーンネットの卒業生の言葉を紹介します。
子どもが好奇心のアクセルを踏むためには、「探究サイクル」というエンジンが必要です。本来、子ども達には、そのエンジンが備わっています。子ども達が、そのエンジンを錆びさせるのか、または、うまく回転させて使いこなしながらその後の人生を生きていくことが出来るのか。それは、子どもを取り巻く環境次第だと言えるでしょう。
まずは、子どもに関わる大人自身が、どこかで落としたエンジンを、再装備しなければなりません。もしくは、錆び付いてしまったエンジンを、もう一度磨いていかなければ。
子どもだけでなく自身が好奇心のアクセルを踏み、探究学習の実践をより深めたい大人が集まるコミュニティへとメディア『Q』が育っていくよう、これからも発信を行っていきます。
(文:齊藤香恵子、写真:玉利康延)
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