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迷える子羊が運命の出会いを果たした結果、書店員になった話。〜現在に至るまで vol.1〜



恋に落ちてしまったのかもしれません。

どうしたってあの人のことを考えてしまうのです。そのせいで一日平穏に過ごせません。一緒に過ごしたのは、たったの数時間だけであったというのに。その僅かな時間だけで、あの人は私の心を鷲掴みにしたのです。

忘れられない。また会いたい。

日に日に想いは、募っていくばかりです。こんなことになるのなら、いっそのこと知りたくなかった。もし時間を戻せるのであれば、あの時何気なくテレビをつけようとしていた過去の私のもとへ飛んで行って「今テレビをつけたら、後に大変な目に合うぞ」と警告するでしょう。

そう、私が今こんなにも思い悩んでいるのは、あの日ある番組を見てしまったからです。しかも普段は、ほとんど見ない放送局のもの。本当に偶然でした。でもこのときにはもう、運命の歯車は動き出していたのでしょう。

***

忘れもしない、あれは2017年に入ってからもうすぐ一カ月が経つという頃。

大学卒業まで2ヶ月を切ったその当時、
私は就職先をまだ確保していませんでした。

迷っていたのです。
このまま卒業して教員になることに。

少し話は遡りますが、私は物心ついた時から「教育業界」には興味がありました。

元々好奇心旺盛で、人の話や映画、本などの言葉に影響されやすい性格もあって、将来の夢に関してはしょっちゅう変わっていました。

ただ、自分の中の1番コアな部分は
ブレませんでした。

それが「教育」に携わりたい、携わっていたいということ。

それはなぜか。
おそらくは母が教員をしていたからでしょう。小さい頃は中学教員をしていた母親が忙しさで家にほとんどおらず、構ってもらえない寂しさから、教師という仕事を憎んだこともありました。

しかし、ある程度分別がつくようになると時々母は私や妹を職場に連れて行ってくれるようになりました。

おぼろげに覚えているのは、母が作業をしているのを待つ間、職員室で他の先生方に遊び相手をしてもらったことや中学生のお兄ちゃん、お姉ちゃんたちとたくさんお話をしたこと。肩車をされて体育館に連行され、積み上げられたマットの上に降ろされて「高い、高い! 怖い!」と必死になって叫んだことはなぜか今でもはっきりと記憶しています。

大変、大変と言いながらも生き生きと教育現場で働く母の姿を見て、私も誰かに影響を与えるような仕事をしたいなぁ、と思ったのが初めのきっかけだったかと思います。

しかし、私が成長するにつれて
母が漏らす仕事が「大変」だという
意味合いに変化が生じていきました。

年代が経つにつれて問題が複雑化していること、それも目に見えない、水面下で拡がっていること、雑務をこなすことを惰性でしており、本来自分が最もやりたいことが全体の1〜2割程度しかできていないこと……。

教員がどんどん疲弊していっている姿を間近で見てしまったが故に本当にこのまま教員になっていいものかどうか、ということに卒業間際にして迷いが生じてしまったのです。

そんな時でした。
私の人生を変える運命的な出会いを
経験してしまうことになるのです。


その日は大学も休みで、後は卒業に向けて最後の調整に入っている時期だったので、とくに急ぎでやるべきこともなく、家でゴロゴロしながら時間を過ごしていました。

ぼちぼち寝ようかなぁ、なんて思ってソファから一度は立ち上がったのですが、なぜかその日は目が冴えていたので普段はあまり見ることのないテレビをつけたのです。

すると画面にある女性が映りました。

年は私と同じくらい。小顔で華奢な体つき。可愛いとも美人ともいえる容姿。何より惹かれたのは、強い意志の籠った大きな瞳。じっと見入ってしまいました。見入ってしまった最初の理由は、おそらく彼女が私の好きな系統の女性だったからでしょう。

だけど最後までチャンネルを変えなかった、いや変えることができなかったのは、彼女が働くその場所にどうしようもなく魅了されてしまったからです。

その番組を見終える頃には、もう福岡行のチケットを抑えていました。極度の面倒くさがり屋でできることなら楽をして生きていきたいと思っている私が、です。

自分でも驚きました。これが俗に言う「恋の力」というものでしょうか。この人に会ってみたい、話してみたい、ここに行ってみたい。そんな感情が私を突き動かしたのです。


数日後、福岡に降り立った私は、柄にもなく緊張していました。待ちに待ったあの人に会うことができるのです。

そしてあの不思議な空間へと足を踏み入れることができるのです。

目的地へと向かう足は自然と速くなり、それに伴って心臓の音も大きくなります。

あの人に会ったら最初になんて言おうか。
「ずっと会いたかったんです!」かな。
それとも「憧れです!」の方が良いだろうか。
いや、いっそのこと「好きです!」と告白してしまった方が印象に残って、覚えてもらえるかもしれない……。

そんなことを考えていたら、いよいよその建物が目の前に見えてきました。建物に近づくにつれ、速足だった足は速度を落とし、代わりに心臓の動きが速くなりました。建物の前で一度深呼吸をし、はやる気持ちを押さえつけてゆっくりと階段を上ります。扉の前でもう一度深呼吸。

そっとドアノブをひねる。ふわっと香る優しい木の匂い。柔らかな照明。極めつきは一番奥の一角にその存在を主張する炬燵。
初めて来たはずであるのにどことなく懐かしさを覚える空間。

ついにここまでやって来たのです。テレビで見た空間が今目の前に広がっているのです。その感動は、計り知れません。時間が止まってしまったかのように感じたほどです。

「いらっしゃいませ」

声がかかって一瞬ドキッとしました。見るとどうしても会いたくて仕方がなかった女性が迫ってきているではありませんか! 

会った時に言う一言目をあれだけ一生懸命考えていたのに、結局口から出た言葉は「こんにちは」でした。

ばかばか、自分。夢にまで見るほど会いたかった人がすぐそばにいるというのにどうしてありきたりな挨拶しかできないんだ! 

「今ちょうど読書会をしてるんです! 参加しませんか?」

彼女に誘われるがままに参加を承諾し、気がつけば私もあの炬燵の中に足を突っ込んでいました。

「今働く若者に読んでほしい本」

これがテーマだったと思います。

初めて訪れた場所で偶然居合わせた人たちと一つのテーマに沿って話し合う。年齢も職業も違っています。共通しているのは、本が好きなことと熱い情熱を持っていること。

どの人の話も最高に面白かった。自分が知らなかった世界がどんどんと広がっていく。その中で彼女とも打ち解けることが出来たように思います。

彼女はフランクでとても親しみやすい人でした。そして好奇心旺盛で聞き上手。おまけに人の目をしっかりと見て話せる人でした。彼女のこともこのお店に足を運んで来る人もこのお店もますます好きになりました。この時間が永遠に続けば良いのに……。一時間はあっという間に過ぎていきました。

その場所の名前。それは「天狼院書店」というちょっととがった本屋さん。

書店員をしながら、プロのクリエイターを目指せる機会が設けられていること。お客様にも本を通して、その先の体験までを届けられる、夢やワクワクを提供できる仕事であること、「面白い」を自分自身の手で企画できること。当時の私の目には、そのすべてが魅力的に映りました。


あのアットホームな空間で生き生きと働く彼女とその周りに集まってくる素敵なお客様。私もこの素敵な場所に身を置きたい。この素敵な場所に行きたいという気持ちは、いつしかここで働きたいに変わっていました。

それから私は、京都にもある同じお店に行きました。同じ系列のお店であるはずなのにそこは福岡とは全く異なる空間。だけど働く人が生き生きとしているのは、同じです。この書店が主催している「大人の部活動」には、何度か参加しました。

この店とここで働く人たちの虜になってしまいました。初めはいちファンとして通っていましたが、スタッフさんとの関係が深まれば深まるほど、
また「大人の部活動」の企画側の魅力を知れば知るほど、ここで働いてみたいという気持ちが募り、気がつけば私もスタッフの仲間入りをしていました。



たまたまつけたテレビ。そして偶然合わさったチャンネル。

ここまで来ればもう後戻りはできません。
「人生をも変えてしまうかもしれない恐ろしい場所」であると誰かが言っていましたが、もうそう認めざるおえません。

この店を知るきっかけになった彼女、
そう川代紗生さん。
あなたは最近〈川代ノート〉にこう綴っていました。

「本当に、悪いことは言わないから、天狼院書店には、近づかない方がいい」と。
ごめんなさい。もう遅いです。片足をつけてしまったら、引き返せなくなってしまいました。
きっと私のようなことに陥っている人は全国にたくさんいるでしょう。

人は、禁止されるとそれを破りたくなってしまう生き物です。

それは恋も同じ。
「あの人は危険だからやめておけ」と言われれば、余計にスリルある恋に燃えたりするでしょう?

あぁ、だから川代さんは、あんな言い方をしたのですね。そんな言い方をされれば嫌でも天狼院に行きたくなるではありませんか。
川代さん、その作戦大成功です。

***

天狼院書店のコンセプト。それは
「人生を変える書店」

天狼院書店とは

新刊書店、と申しましても、我々は本を売っているのだけが仕事ではありません。
読書会や部活、ゼミなどのイベントや、旅行をお客様に提供したりしますし、演劇を開催したり、時には映画を創ったりもします。
最近では、BARも併設し、書店なのにこたつを置いていたり、昼寝ができたりします。
それは、天狼院書店が「READING LIFEの提供」を、オープン以来掲げているからです。

READING LIFEの提供とはなにか?
本の先にある体験までも提供するということです。
たとえば、人が書店の写真本コーナーに行く場合、多くは本を欲しいのではなく、「写真がうまくなる自分」がほしいのだろうと思います。残念ながら、そのお客様の本当のニーズに応えるには、本だけでは足りません。
それを学べる場と、プロの先生と、仲間が必要になります。実践の練習が必要になります。

それまでもすべて揃えたのが、部活やゼミです。
天狼院書店には、今、数多くの部活やゼミ、読書会、その他のイベントが存在します。
店主三浦より


人生に迷える子羊は

「人生を変える書店」で本当に人生を
変えてしまいました。

本当に何が起こるかわかりません。
出逢いとタイミングで人生は思わぬ方向に
進んでゆきます。だから面白い。

書籍や映画、ドラマなんかも予測不可能な
物語が昔から大好きなのですが、私の人生も
まさにそんな感じ!!

一度きりの人生、直感的に「面白い」と
感じたところへ常に向いていたい。

いつだって好奇心を忘れずにいたいものです。


◎まとめ

のんの特徴

1. 完全なる猪突猛進型

2. 直感派 「面白い」を大切にする

3. 思い立ったら即行動 とにかく現地へ足を運び実際に現場を見る、気になる人には会いに行く

4. 元々教員志望。教育業界にはずっと関心あり

5. 川代さんはタイプの女性
(まじで川代ノート面白いので今度、川代ノートについての記事を書きたい)

6. 現職「地域コーディネーター」になる前はちょっと変わった本屋で書店員してました。

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