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紙とペンだけで、"本質的"なプログラミングに挑戦しよう〜プログラマー(なりきりラボ#4)〜

小学生向け探究学習プログラム「なりきりラボ®」「おしごと算数®」(2019年度グッドデザイン賞受賞)。子どもたちの探究心や創造性を刺激する、数十の職業が詰め込まれています。マガジン「なりきりラボ・おしごと算数の世界」では、その一つひとつのタイトルの魅力をご紹介します。今回は、「プログラマー」(なりきりラボ#04)です。

<プログラム開発者、いわたくに聞きました!>

いわたく(岩田拓真):
株式会社a.school(エイスクール)代表取締役。京都大学総合人間学部卒、東京大学大学院工学系研究科修了(専門分野は、脳科学とイノベーション)。大学院在学中に、ひとり親家庭に対して動機づけ教育を行うNPO法人Motivation Makerを仲間とともに創業し、理事に就任。Boston Consulting Groupにて経営コンサルタントとして勤務した後、㈱a.schoolを創業。探究学習塾エイスクールを運営するとともに、さまざまな探究・創造的教育コンテンツの開発に携わる。自分自身も新しいことを学ぶのが大好き。一児の父。

ー 昨今教育熱が高まっている「プログラミング」ですが、こちらのプログラムは数年前から開講していますよね。

そうなんです、「プログラマー」の原型となった授業は2017年から開講しています。当時と比べてもさらにプログラミング教育に向けたニーズが高まっている今日このごろですが、「プログラミングってなんだろう?」という本質を探ってほしいという思いは当時から変わっていません。

また「なりきりラボ®」シリーズにおいて「プログラマー」は、エレキエンジニア」「メカエンジニア」とならぶ"ものづくり三兄弟"の一つです。「身の回りの機械やアプリケーションは、どうやって動いているんだろう?」という問いに、プログラミングの観点から迫ってほしいですね。

授業前半ではコンピュータやプログラムについてクイズやワークで知識を深め、後半では身の回りにある機械のプログラム再現やオリジナルロボのプログラムに挑戦していきます。これらは全て「チャート」を使ってプログラムします。一つひとつの指示や条件をすべて付せんに書いていくので、機械が苦手な子でも取り組みやすくなっていますね。

ー いわゆるプログラミング教室との違いはどこにありますか?

小学生向けのプログラミングでは、画面上のブロックや図形を動かしてプログラミングする「ビジュアルプログラミング」が一般的です。触ってみるととても直感的でわかりやすく、誰でも簡単にゲームを作れたり、ロボットを動かせたりします。

ただ一方で、ビジュアルプログラミングにも欠点があって。触りやすさを重視しているので、条件分岐などの複雑な処理ができないんですよね。また「既にあるゲームや教材のアレンジ」で作品が作れてしまうことも多いんです。もちろんそこから学べることや試行錯誤することで得られる体験はたくさんありますが、「どんな課題を、どうやって解決できるか?」という0から課題解決法を考える経験が不足しがちです。

私たちはプログラミング教室ではないからこそ、「課題を分解する」「手順の組み合わせを考える」など、課題解決に役立つ「プログラミング的思考」に重点を置きつつ、(パソコンを全く使わない)チャートという型を通してプログラムとしても表現できるようになることを目標にしています。

ー なるほど、探究学習ならではのプログラミング教育ですね!今回数年ぶりにリニューアルをしたということですが、どんなところがアップデートされたのでしょうか?

プログラミング的思考を「5つのプログラミング術」として再定義し、それらを体感的に習得できるワークとして組み立てたことですね。

今回新たに採り入れたワークに、「お絵かきマシーンプログラミング」というものがあります。絵の描き方を言葉で表現する、いわゆる「絵描き歌」に相当するプログラムを書くのですが、これが意外と難しいんですね(笑)「ま〜る書いて ちょん」と言われても、コンピュータからすれば「丸の大きさは?位置は?」「『ちょん』って、どういう動作?」となってしまい、お絵かきマシーンは停止してしまうわけです。

ではどうすれば伝わるのかと試行錯誤してみると、「丸の半径を指示しよう!」「『ちょん』ではなく、『点を打つ』ならコンピュータもわかるかな?」などの改善案が浮かんできます。これこそまさに「動作の分解」というプログラミング的思考を使って、課題解決に取り組んでいることに他なりません。そして最後に、「チャートではどうやって『分解された動作』を表現できるか」を考えるんです。

このように一つひとつの体感的なワークを通じて、「目の前の課題に対して、どんなプログラミング的思考を使えば解決できるのか」を理解・実践し、最後はチャートの形で整理し伝えるのがこのプログラムの骨子です。

プログラミング的思考そのものについては、NHK教育テレビの「テキシコー」を始めとするさまざまな教材で取り上げられていますが、「プログラミング的思考」の実践と「チャート(プログラム)での表現」をスムーズにつなげるワーク設計は、本プログラムならではの取り組みなんじゃないかな、と。

ー プログラム後半のプロジェクトではどのようなことに取り組みますか?

身の回りの生活における困りごとを考え、オリジナルロボをプログラムします。前半で学んだ「プログラミング的思考」と「チャートでの表現」を最大限活用することになりますね。

ロボといっても本物の機械を動かすのではなく、講師がロボになりきるんです(笑)。物理的な制約がないからこそ、どんなものでも考えることができるのが特徴です。とはいえ、ただの夢物語になっては意味がないので、「本当にこのチャートの書き方で思った通りの動きになるかな?」ということを講師やメンターが丁寧にフィードバックしながら進めていきます。

以前開講した際は、「ネリケシ製造・机お掃除ロボット」というプログラムを考えた子がいました。「ケシカスかどうかの判定」を条件分岐で、「練り消しの練り方」を繰り返し文で、「机の上での曲がり方」をランダムで・・・と学んだ知識をいかしてプログラムを0から組めており、とても秀逸でした。今回もどんなロボットとプログラムが生まれるのか、楽しみにしています!

ー なるほど!なんでも自由に空想できるからこそ、「どこまで、どうやって表現するか」が大切になりそうですね。

そうですね。最終的なアウトプットの形が自由だからこそ、条件・順序・分岐などの論理的思考力が必要になります。

また、プログラミングをとおしてさまざまな科目につながる力を養えるのもポイントですね。例えば「明確に順序立てて表現する」という力は国語における論理的な文章表現力・読解力に繋がりますし、「いくつものパターンを場合分けする」という点では算数の「場合の数」「確率」といった単元と密接に関係してきます。

これまでを振り返ると、大分難易度が高そうな内容に聞こえるかもしれませんが(※)、プログラミングの重要な要素を、体感的にステップバイステップで学べるように設計しているので、そんなに構える必要はありませんよ!クラス全員で教室を移動しながら「条件分岐」を体感するワークもあります(笑)。
※本記事で引用しているスライド資料は全て、ベーシッククラス(小4〜6年生対象)のものです。エントリークラス(小1〜3年生対象)は難易度を調整したものを使用します。

低学年の子や考えることが苦手な子でも、「プログラムってこんな仕組みで動いているんだ!」ということを一緒に楽しく探究できますし、なによりパソコンなしに紙とペンだけで気軽に取り組めるのが魅力ですね。

▼ 「プログラマー」のプログラム詳細

▼ 全国の校舎で開講中!





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