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ジャズは怖くない!分かりやすいジャズ、その2

投稿者:さかな先生 (ツイッターで音楽のことつぶやいてます

前回は、ジャズにも色んな種類があって怖くないジャズもあるよ〜って話をしました。ジャズ初心者でも入りやすい曲も紹介してます↓


それでは今回も、ジャズ初心者が聴くべき曲を早速ご紹介していきます。

といっても実はすでに前回の記事の冒頭で触れた、この作品をご紹介。

Miles Davis "Someday My Prince Will Come"【1961】

まずは何と言っても1曲目の"Someday My Prince Will Come"です。
ディズニーが1936年に製作したアニメーション映画『白雪姫』で使われた劇中歌で、日本では『いつか王子様が・・・』というタイトルで知られる曲。
そんなロマンチックな選曲をしたのはマイルス・デイヴィス。
(ちなみにマイルスは当時の奥さんをカバー写真に使っているようです。)

マイルス・デイビスはモダン・ジャズの生んだ最大のスターです。スターと形容するからには、音楽的な意味はもちろんのこと、スタイルや生き様まで含めて人気を得てきたジャズ・ミュージシャン。日本には彼を「モダン・ジャズの帝王」と呼ぶジャズ・ファンやジャズ評論家も多い。

マイルスはミュージシャンとしての技巧は、一流かも知れないが超一流とまでは言えない、とよく指摘されます。

しかし、マイルスほどの人気を獲得したトランペッター、ジャズミュージシャンはいないと断言できます。
一番テクニックを持ったラッパーが、世界一聴かれているわけではないのと同じ理論ですね。


では、なぜマイルスはこれほどビッグネームになったのか。その源泉は彼のプロデュース力にある。どのミュージシャンをメンバーにするか。どの曲を選ぶか。どの編成にするか。このような当たり前のことはもちろん、時代の空気を敏感に察知して、常に新しい方向に進む感性。

ミュージシャンを選ぶ際にも、自分を越えそうな、彼を喰ってしまうような凄腕の若手を平気で抜擢しました。彼らに、その才能を発揮する場を与えてあげる訳です。若いミュージシャンは野心的で自らの新しい考え方を発揮する場を求めております。すごいですよね、そんな若いミュージシャン達と切磋琢磨して常に高みを目指す向上心と自信。普通は自分が絶対勝てるやつばっか集めてやっちゃいそうですけど。
その結果、彼らの力を使ってマイルス・デイビス・グループは名を高める。つまり、マイルスの名が高まる。すげえ。


もう一点。マイルスのミュートされた独特の音色も彼の最大の特徴です。彼は”早吹き”テクニックを持ちませんが、ゆったりとしたバラッドで切々と歌い上げるときの彼の音は尋常ではない。これぞ”マイルス節”といったところでしょうか。いわゆる”リリシズム”と形容される音です。


プロデュース力とリリシズム。このふたつがマイルス・デイビスというミュージシャンを支える根幹であり、そこに注目してみるのも面白いでしょう。

さて、曲紹介に戻りまして、冒頭のチェンバースのブンブン・ベースに明るくクリアなピアノが舞い降り、マイルスのミュートがメロディを奏ではじめる。ほのぼのテナーサックスがソロを取ったあと、マイルスが間を取り持ってからコルトレーンがシャープに締める。良い曲に、良いアレンジ、良い演奏と3拍子揃っている。
この冒頭の1分。これで全ては決まり。むしろ、なぜ今までこの作品を聴かなかったのか、と後悔するかもしれません。マイルス生涯の名演。”泣きのトランペット”なんていう表現はあるいは下品かも知れませんが、この冒頭3分超のマイルスの演奏は、彼のリリシズム美学の頂点と言えるでしょう。必超です。


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