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社会的ストレスと痛みの関連

久しぶりの投稿となりました。タンケ(@tanke_94pt)です。

noteをゆるりと書き始めて8記事目となりました。反応をくださる皆様いつもありがとうございます^^

今回は「社会的ストレスと痛み」について自分がこれまでに勉強してきたことやそこから感じたことをnoteにまとめていこうと思います。

社会性という、とてつもなく広範なテーマから特に"ストレスと痛み"と関連した内容を中心に今回は稚拙な内容ながらまとめていければと思います。

まず社会性の大枠から、人類の進化の過程で社会性が現代にどのように影響してきたのか、社会的ストレスがヒトの身体や痛みのメカニズムへ与える影響、現代社会がストレス過多と言われることについて僕自身が思うことといった内容を書き連ねていこうと考えています。

本noteの内容は個人的な考えや誤解釈・拡大解釈を含む可能性がありますので、お読みの際はご了承くださいませ。

それでは本文です!

↓↓(本記事は全文無料でお読みいただけます)

○introduction 

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早速ですが、社会性とはなんでしょうか?

日本国語大辞典では以下の様に定義されています。

① その社会一般に広く通ずる性質。
② 集団をつくって生活しようとする人間のもつ基本的な傾向。
③ 他人との関係や集団生活をうまくやっていく素質や能力。社交性。

さらに繁多ら(1995)は

「人間が人間社会の中で安全にしかも適応的に生きていくためのあらゆる能力や特性を社会性とするとらえ方が最も広義な社会性の定義」[2]

とした上で、社会性を

「個人が自己を確立しつつ、人間社会の中で適応的に生きていく上で必要な諸特性」[2]

と包括的に定義しています。

ヒトの進化過程のなかでは特に②③の発達が現代の社会的コミュニケーションの基盤になっています。

そしてこの社会性・社会的ネットワークは個人によっても大きくばらつきがあり、さらにそのネットワークの大きさはヒトにおいて身体的・精神的な健康状態に影響しているとも言われています。[1]

ここでは社会的ネットワークが側坐核におけるμオピオイド受容体へ影響を与えることが報酬系・疼痛制御機能に関連すると言われています。

さて、"社会性"と"痛み"との関連をみたとき、思い浮かぶのがBio-psycho-social model(BPSモデル)ではないかと思いますが、このBPSモデルにおいて、social factorsでは下記の因子が挙げられます。

文化・コミュニティ・対人・環境・法律・経済など

人類の進化の過程を見ても、社会性の獲得・形成・発達はヒトにおける注意機能・知覚機能・記憶など様々な認知機能と密接に関係しており、人間において社会性というキーワードは欠かせないものと言えます。

今回のnoteではそんな"社会性"に焦点を当て、ヒトにとっての"社会性"の重要さ、さらには現代における痛みについて"社会性"がどのように関わっていくのかを自分なりに勉強しまとめていきたいと思います。

○人類の進化における社会性の獲得

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繁多らが提唱した社会性の定義

「個人が自己を確立しつつ人間社会の中で適応的に生きていく上で必要な諸特性」

これに関連する重要な行動進化のひとつが互恵的利他行動(Reciprocal altruism)と呼ばれるものではないかと考えています。

互恵的利他行動とはトリヴァース(1971)によって提唱された理論で、ある個体が他個体に対して利他行動をとるとき、一定の適応度上の損失を被るが、その個体が将来利他行動をしてあげた個体から同じような恩恵を受ければ損失が解消でき、そのような社会交渉が繰り返されれば長期的には両者ともに適応度が上昇するというものです。[3]

簡単に表すとすると"持ちつ持たれつ"な関係性と言えます。

互恵的利他行動が成立するためには、一個体にとって「この損失が将来本当に埋め合わせがされるのか?」という疑問がつきまとうことになります。

そのため動物における互恵的利他行動にはいくつかの条件が必要になります。[3]

①特定の個体間の社会関係が長期にわたって続く、半ば閉鎖的な集団で生活している動物であること。

②動物が互いに個体識別し、過去にどんな行動のやりとりがあったかを記憶できるような何らかの認知能力を持っていること。

③行為者が被る損失よりも行動の受け手が受ける利益の方が大きいこと。


①はこの一個体の利他行動に対する埋め合わせに時間的なズレが生じるために、行為者が将来の相手からの利他行動を受けるためには長期的に関係を保っておく必要があるということになります。

②は仮に行為者が他個体に利他行動をとったとしてもその恩恵を受けた他個体が行為者に対して将来利他行動を取らない可能性もあり、そうなると"持ちつ持たれつ"の関係性が破綻してしまいます。

そこで個体間でのやりとりを正確に行える情報を理解できる認知能力が必要となるわけです。

③は、互恵的利他行動のやりとりにおいては自分の行った利他行動による損失よりも将来自分が受け取る相手からの利他行動による利益が、過去の損失よりも大きくならないといけないので、行為者のコストは受け手の利益よりも小さい、という条件が必要となるわけです。

このような互恵的利他行動は人間における社会の発達において重要なキーワードとなりました。

つまりは人間社会において、互恵的利他行動に際して、行為者に対して将来のお返しの利他行動を取らない者あるいは取らない可能性のある者に対する監視・罰則などの社会的ルールを設定することなどに繋がったわけです。

さらにこの互恵的利他行動はヒトにおいて特異的な感情システムの進化に繋がったとトリヴァースは報告しています。

○互恵的利他行動から進化した感情システム

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トリヴァースは互恵的関係性から生じた感情を4つに分けて説明しました。[8]

①友情と「好き」「嫌い」の感情
②道義的な攻撃
③感謝と同情
④罪悪感とそれを償うための利他行動

①利他的に行動することは友人や好きな人ほど相手との結びつきを求める動機付けが感情的心地良さを引き起こし、その行動頻度が増加します。

さらには自分を好いてくれる人への利他的行動に敏感であることは淘汰的に有利であることが考えられ、好き嫌いの感情は互恵的な利他行動のシステムを調整する上で重要な要因として機能しています。

②道義とは

ヒトの踏み行うべき正しい道、道理

と定義されています。

利他的行動を動機付ける感情が進化するにつれ、利他者が持つポジティブな感情につけ込む裏切り者が現れるようになります。

利他者はこの裏切り者に対して防衛機能を持つ必要があります。

その防衛機能は具体的には「矯正の働きかけ」「直接的な攻撃」「殺害」「追放」などがそれに当たります。

裏切り者に対する防衛機能が進化の過程の中で現代社会では犯罪心理やそれを裁く司法制度に繋がっているのだと考えています。

③利他行動に対する「感謝」と「同情」は利他的行為の利益とコストを考慮したその後の動機付けに重要な感情です。

"感謝の感情"は利他行為に対する返報を動機付けるものとして、"同情の感情"は利他行為の受け手の窮状度合いに応じて利他行動を動機づけるものとして選択されてきています。

④仮に自分が裏切りを行なった場合、裏切った相手から得られる恩恵を今後全て断ち切られてしまうとなった場合、裏切った本人の損失はとても大きなものになります。

裏切った自分がその罪悪感を感じることができれば、将来想定される損失に対してそれを回避するように「過ちを償い、今後二度と繰り返さない」といった動機付けが働くことができます。

裏切られた相手も、関係を継続することが自分へ利益となることが予想できれば裏切りを許すことは大きな利益となり、互恵的に働くことになります。

このように互恵的利他行動はヒトが社会の中で生きていく上で基本となる感情システムの構築に密接に関わっていることをお伝えしました。

次からは「ストレス」が身体へ与える影響についてまとめていきたいと思います。

○ストレスがもたらす中枢神経系への影響

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"ストレスは身体にとって良くない"

そう感じる方は非常に多いと思いますが、何が(What?)良くないのでしょう?

さらには、何で(Why?)良くないのでしょう?

ストレスにさらされた身体はどのような(How?)影響を受けているのでしょうか。

ストレスによる身体への影響として特に言われているものにHPA系を介したストレス反応やモノアミン神経系が関与するものなどがあります。

○HPA axis

HPA系とは生体に備わっているストレス応答の1つで、視床下部-下垂体-副腎皮質軸(Hypothalamic-Pituitary-Adrenal axis)です。

ストレスに晒された身体では大脳皮質から大脳辺縁系、さらに視床下部へと影響が進み、HPA系を介して免疫系・自律神経系に影響を与えた結果、様々な症状を呈することが近年の研究によりわかってきています。

HPA軸は特にうつ病との関連についての報告をよく目にすることがあります。

うつ病は慢性的なストレス体験に続いて生じることが多いですが、この両者はHPA軸の活動性の上昇といった共通項が存在している可能性があります。

グルココルチコイドのひとつである"コルチゾール"はストレスホルモンとして有名ですね。グルココルチコイドは副腎皮質ホルモンのひとつで中間層(束状帯)から分泌されます。他には外層(球状帯)からミネラルコルチコイドが、内層(網状帯)からはアンドロゲンが分泌されています。(懐かしい生理学ですね)

急性的な(短期的な)ストレスが加わった際にはコルチゾールも一時的な分泌増加が生じるのみで、分泌増加によってエネルギーの温存、炎症反応の遅延、認知機能の鮮明化などの効果がみられます。

そして正常なHPA軸機能によりコルチゾール分泌増加に対するネガティブフィードバックが生じることでCRHやACTHの分泌抑制が起こることでコルチゾールの分泌は抑制されます。

CRH→副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン
ACTH→副腎皮質刺激ホルモン

しかし慢性的なストレスによるうつ病の状態ではHPA軸機能が正常に機能しないことが多いことが言われています。これに関しては僕の勉強不足で詳細なメカニズムまでは把握できておりません。今後の勉強課題です。

HPA軸機能が正常に働かない場合、視床下部や下垂体に対してCRH,ACTHの分泌抑制信号を送れないためにコルチゾールの慢性的な分泌増加を引き起こす可能性が考えられます。

さらに視床下部におけるCRH分泌は扁桃体からの刺激信号と海馬からの抑制信号による制御を受けているため、慢性ストレスによる扁桃体の過剰な活性化は視床下部におけるCRH分泌にさらなる拍車をかける可能性が考えられます。

海馬の特に支脚腹側部(Ventral subiculum of hippocampus)ではHPA軸機能を停止させる機能を有していることから、ストレスの継続的な入力によってコルチゾールの分泌が増加しHPA軸機能が過剰に活動し続けていることは海馬支脚腹側部に対して萎縮や機能低下を引き起こすことが考えられ[5]、これは視床下部のCRH分泌に対する抑制信号が低下することからコルチゾールのさらなる分泌増加につながることが示唆されます。

以上のようにHPA軸を中心にストレス反応について一部書き連ねてみましたが次項からは特にストレスを受けた脳自体の直接的な影響を中心とした内容をまとめていきたいと思います。

○モノアミン神経系

モノアミン神経系はストレス要因に対する素早い反応を示す神経系として知られています。

モノアミンとは、

ドーパミン、アドレナリン、ノルアドレナリン、セロトニン、ヒスタミン

などの神経伝達物質の総称です。

アドレナリンなどのカテコールアミンは副腎髄質から分泌され、視床下部-交感神経系から直接的に影響をうけ、即時的な反応を担っています。

脳でのモノアミンはその細胞体が脳幹部に存在しておりほとんどの脳領域に軸索を投射しているため、広汎投射神経系とも呼ばれています。

*ここで全くの雑談ですが、セロトニンはインドールアミンと呼ばれる種類に分類されます。インドールアミンはある一定濃度の状況では糞臭の主成分であるのに対し、低濃度の状況下では花の香りを持つらしく、オレンジやジャスミンの成分でもあるのです。

香水にもインドールが使われているというから驚きです。
以上、くだらない雑談でした。話を戻したいと思います(笑)

○ストレスによる脳への影響

ストレスに晒された脳に生じる変化として今回のnoteでは2つの項目を挙げてみたいと思います。

1つは「酸化ストレス」、もう1つは「脳内炎症」です。

どちらも近年徐々に明らかになってきているもので現状不確かな部分も多い内容ではありますが、現段階をしっかり理解することを主な目的としてまとめていきたいと思います。

○酸化ストレスによる脳への影響

脳は全体重の約2%ほどの重量であるにも関わらず、そこでの酸素消費は全身の約20%もあると言われています。さらには組成も脂質の割合が高く、酸化のリスクが高い組織であると言われています。

まず「酸化」とはご存知の通り、酸素の影響により金属が錆びたり、油が黒くなったり、新鮮な食品が変色したりする現象のことを指します。

酸化と呼ばれる現象は酸素を空気中から取り入れる生体においても同様に発生しますが、生体には酸化に抗う機能である「抗酸化」作用が備わっています。

食事や呼吸によって取り入れられた酸素がエネルギーに変換される過程で生じた酸化ストレスを招く物質を「活性酸素」と呼びますが、活性酸素自体は強い酸化作用によって病原体に対して働く機能を持っていますが、この活性酸素が増加し過ぎてしまうことで生体の正常な細胞にまで攻撃してしまうことが起こりうるのです。

活性酸素が増大してしまう要因となるのが

喫煙・暴飲暴食・紫外線過多・精神的ストレス

などになるわけです。

「抗酸化作用を高める」などはよく美容品の宣伝にも使われ、

○抗酸化作用が低いことは美容に良くない気がする
○美容にとって精神的ストレスは良くない気がする

といった2つのイメージを掛け合わせると

精神的ストレス→活性酸素の増大→抗酸化作用の高い状態の低下

のイメージも湧きやすいのではないかと思います。
(論理が通っていないのかもしれませんが・・・汗)

様々な要因により酸化ストレスが増加した結果起こりうることの1つに「ミトコンドリア機能障害」があります。[4]

ミトコンドリアの主な機能はなんといっても「ATP産生」ですね。

酸化ストレスがミトコンドリアを直接的に障害するのかという順序性は不確かですが、酸化ストレスの増大によりミトコンドリア代謝の中で活性酸素が過剰生成されることがミトコンドリア膜電位(MMP)の乱れを引き起こし、ATP枯渇・エネルギー代謝の低下などが生じ、最終的にはミトコンドリアのアポトーシス(細胞死)を招くことが言われています。

このようなミトコンドリアの機能障害はアルツハイマー病や、神経変性疾患、さらには老化プロセスなどに関与すると言われており、酸化ストレスによる生体への影響はとても関連が強いものであると言えます。

○好中球の過剰活性による影響

免疫系とストレスの関連を考える際には好中球の働きも1つ重要な存在になります。好中球とは体内に入り込んできた異物を貪食する働きを持つ細胞であり、これに似た性質を持つマクロファージに比べ、より強力な活性酸素産生能力を持っていることが知られています。

前述しましたが活性酸素が過剰に産生されると本来の酸化作用による病原体への攻撃を超えて正常細胞にまで攻撃してしまう可能性を持ってしまいます。

そしてそんな活性酸素を産生する能力が高い好中球は近年の研究において、外科的なストレスや心理的なストレスによって、過剰に活性化されてしまうことがわかってきています。

外科的なストレスとは、いわゆる手術・外傷・熱傷などによる生体へのストレスを指します。

上記の状態に生体が陥れば、免疫機能(細胞性・液性・好中球性など)が減弱することで易感染性となります。これは心理的ストレスにおいても同様に免疫機能の減弱化に繋がることが言われています。

好中球の過剰活性が生じた場合、活性酸素や好中球エラスターゼ、ヒストンなどは非合目的に増加し、臓器障害を引き起こす可能性もあります。

臓器障害を引き起こした場合、それは内臓求心性神経を経由して内臓痛として脳で処理されたり、関連痛としてそれぞれに対応している(可能性のある)身体各部位に痛みが表出されることになりますが、このような心理的ストレスと好中球の関係を知っているだけでも、患者が訴える痛みやその背景因子から、より適切な病態解釈とそのアプローチの選択できることにつながるかもしれません。

○ストレスによる脳内炎症

ストレスによって脳内炎症が起こることについてはいくつかの報告があります。[6]

Steptoe Aらの研究によれば、心理的ストレスは抹消血液中の炎症促進性サイトカインであるインターロイキン(1β・6)やC反応性蛋白(C-reactive protein:CRP)の上昇に強い効果を示すことが明らかにされています。

脳内炎症はミクログリアの活性化による影響が大きいですが、ミクログリアについては下記の記事に部分的にまとめてあります。有料ですが興味のある方はご一読ください。

ミクログリアが活性化することで炎症性サイトカインの産生を促進し脳内炎症に波及する中で、炎症性サイトカインは3つの経路からうつ病へ影響することが報告されています。

・セロトニンやドーパミンの欠乏によるneurotransmitter経路
・コルチゾール増加によるneuroendocrine経路
・神経細胞死、アポトーシスなどによるneuroplasticity経路

の3つです。

これらは間接的に証明されてものに過ぎず、生体で確認されたものではないことが前提ではありますが、慢性疼痛機序について勉強してみると、これらの経路によるうつ病への影響については、あーなるほどな!と頷ける部分も多くあると感じました。

これらの機序についての詳細を書き連ねると量がすごくなりそうなのでまた機会があればまとめてみようと思います。

特にneuroplasticity経路に関してはNMDA受容体変化によるグルタミン酸興奮毒性や脳由来神経栄養因子(BDNF)、酸化ストレスなどが関連するため個人的にはとても好きな分野のお話でした^^笑

○何故現代はストレス過多と言われるのか?

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現代社会においてはあらゆる情報が盛んに飛び交っており私たちヒトも日常生活を送る上で様々な情報に触れて生きています。

ここからは"僕が思ったこと"が中心の話なので明確な根拠などはすっ飛ばして書き連ねたいと思います。(笑)

僕が思うストレス過多の背景には"情報量と意思決定"という要素が大きく関係しているのではないかと考えています。

情報量が少ない状況と、情報量が多い状況を頭の中で思い浮かべた時

情報が多い状況において私たちはより多くの"選択(意思決定)"に迫られるのではないかと思います。

「これとこれはどっちがいいかな?」といった考察とその後の選択は単純に比較対象(情報量)が増加すればするほど選択(意思決定)も増加します。

多くの情報を集めて多くの選択をした結果が現在の自分を形作っているわけですが、"選択しなかったこと"も同時に蓄積されていきます。

"選択しなかったこと"が後々になって「やっぱりこうした方が良かったんじゃないか・・・」といったような"選択したことへの後悔"や"間違った選択をした(のかもしれない)自己への嫌悪"といった思考が多くなるのではないかと思います。

サルを用いた実験で、意思決定における神経機構では内側前頭前野腹側線条体(特に側坐核)、視床下部外側領域などが大きく関与すると言われています。[7]

社会的文脈における意思決定による"報酬の主観的価値"の増減により、上記の脳領域は活動量が変化することがわかってきています。

そしてこれらの領域は疼痛の神経ネットワークにおいても重要とされる領域です。

内側前頭前野は外側前頭前野と活動に関して拮抗関係にあり、どちらかが強く活動する際はもう一方は抑制される関係にあります。疼痛抑制の神経機構においては外側前頭前野の活動量が大きくなることで中脳ドーパミンニューロンの活動が高くなりこれには側坐核や視床下部外側領域も大きく関与します。

意思決定の神経機構と疼痛の神経機構は共通する領域を多く含んでおり、情報量の増加が著しい現代社会において意思決定における関連領域の活動量の増減は"疼痛"にも大きく関わってくるのではないかと考えています。

上記に関してはまだまだ勉強不足ですのであくまで妄想の範疇でお話しさせていただきました。

とてもざっくりとした内容になってしまいましたが、現代社会のストレス過多には情報量の増加といった要素が関わるのではないかというところをお話ししました。

○おわりに

いかがでしたでしょうか?

今回のnoteではあまり多くは語れませんでしたが広く浅くといった内容で社会的ストレスから生体への影響を痛みと関連させながら書き連ねてきました。

ストレスによる身体への影響を知ることで、今までになかった視点での病態解釈が生まれ、それに適した介入選択の幅が広がることにつながるのではないかと思っています。

整形外来に来られた運動器疼痛のような痛みの方でもその背景を垣間見ると本noteのような内容が関連することも起こりうるのではないかと思います。

実際に介入レベルで活用するためには中枢神経系への理解であったり、内臓痛・関連痛・自律神経系機能・免疫機能・内分泌機能・運動器機能・精神心理など様々な知識が必要になりそうだなあ・・・と感じてもらえたのではないかと思います。

ズバリその通りだと僕は考えています!

これら全てを網羅的に完全に理解して臨床に活かすことはとても困難なことだと思いますし、そのために各専門職がチームを作って機能することに大きな意義があるのだとも思います。

理学療法士として理学療法士にできること(専門性)を高めつつ、その中で本noteのような知識も深めていくことで、

「この人にはこれじゃなくて、こういう介入が適切だな」とか

「この人にはもっと慎重に言葉選びしてかないといけないな」とか

そういった視点に大きく貢献してくれるものであると考えています^^

様々な視点から患者さんの状態を考察できるように日々研鑽して行きましょう!

最後までお読みいただきありがとうございました!

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●参考論文


[1]Johnson KV, Dunbar RI. Pain tolerance predicts human social network size. Sci Rep. 2016;6:25267. Published 2016 Apr 28. doi:10.1038/srep25267[2]繁多 進(1995).社会性の発達を考える 二宮 克美・繁多 進 (執筆代表)たくましい社会性を育てる(pp. 1‒17) 有斐閣[3]長谷川寿一ほか 進化と人間行動 東京大学出版社 2020 p,164[4]Kim SH, Kim H. Inhibitory Effect of Astaxanthin on Oxidative Stress-Induced Mitochondrial Dysfunction-A Mini-Review. Nutrients. 2018;10(9):1137. Published 2018 Aug 21. doi:10.3390/nu10091137[5]半場道子 慢性痛のサイエンス 脳からみた痛みの機序と治療戦略 医学書院 2018 p.29.30[6]CLINICAL NEUROSCIENCE ストレスと神経系 2021 Vol.39 No.6 6 [7]CLINICAL NEUROSCIENCE 意思決定と行動選択の神経科学 Vol.39 No.8 (2021-8)[8]長谷川寿一ほか 進化と人間行動 東京大学出版社 2020 p,177

p.s.

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