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ヒアルロン酸ってなんだ?

こんにちは!タンケ(@tanke_94pt)です!

最近noteの機能が少し変わったらしく、この記事を書いている際も機能を使いこなせずにモヤモヤしてしまいました。。。

そんなことはさておき、今回の記事ではヒアルロン酸やその効果について自分が最近改めて知識をおさらいしてさらに深めていこうと感じたのでそれをまとめていこうと思います。

ヒアルロン酸は変形性膝関節症や肩関節疾患の患者さんに対して診療場面で使用されることが多いかと思いますが、理学療法士としてその効果を把握できているでしょうか?

最近外来リハビリで患者さんに「ヒアルロン酸を打つことを検討した方がいいのかな?」と聞かれ診察に促したのですが、その時に、「そういえば期待できる効果やそもそもどういうものなのかに関して、自分の中で忘れていることが多いな…」と感じることがありました。

なので、このnoteでおさらいをしていこうと思います!

もしかしたらこれを読んでくださった方にとって何か参考になることもあるかもしれないので是非最後までお読みいただければ幸いです!

*間違った内容や誤解釈を含む可能性がありますので情報の取り扱いにはご注意ください。

それでは本文です!(この記事は全文無料でお読みいただけます)

●ヒアルロン酸の概要


ヒアルロン酸が初めて発見されたのは1934年と意外と歴史は浅く、Karl MeyerとJohn Palmerによって牛の眼の硝子体から初めて単離されたとされています。

そしてその構造は1970年にLaurentによって記述されました。

この分子は成体結合組織の細胞外マトリックス(ECM)に豊富に存在します。眼の硝子体や臍帯(Wharton's jelly)においてはより高濃度に存在します。

大きな特徴として非常に親水性で、高分子量では粘性のあるネットワークを形成し、ECMを水和させ、組織の恒常性と圧縮力に対する抵抗力を制御しているとされています。

高分子量ヒアルロン酸は滑液の必須成分であり、関節の潤滑油として基本的な役割を担っています。

参考論文:
Abatangelo G, Vindigni V, Avruscio G, Pandis L, Brun P. Hyaluronic Acid: Redefining Its Role. Cells. 2020;9(7):1743. Published 2020 Jul 21. doi:10.3390/cells9071743

ここで"細胞外マトリクス"と"滑液"について復習していきましょう。

◉細胞外マトリクス(Extracellular matrix)について(1/3)

細胞外マトリクスとは結合組織における基本要素の1つを指します。
すなわち、”細胞”と"細胞外マトリクス"です。

結合組織における細胞外マトリクスとは

間が広くあいた細胞同士の間を埋める物質

を指します。細胞外マトリクスを大きく分けると
タンパク質でできた"線維"と"基質"で構成されます。

基質とは結合組織の細胞と線維の間を埋める要素で

  • 細胞を支え、細胞同士を結びつける

  • 血液と細胞での物質交換の媒体となる

などの役割があります。
ヒアルロン酸はこの基質に含まれます。

参考文献:
トートラ人体解剖生理学 原書8版 p.83 佐伯由香ほか 丸善出版

◉滑液(関節液 Synovial fluid)について(2/3)

滑液は関節腔に存在する粘稠な液体で、血漿濾過液にヒアルロン酸や糖蛋白質などが加わったものを指します。

正常膝関節においては2ml前後とごく少量で色調は無色ないし黄色調透明であるとされています。

赤血球の含有は見られず、白血球は50-100/mm3とされています。

参考文献:
標準整形外科学 第12版 p.61 松野丈夫ら 医学書院

これらを踏まえて、ヒアルロン酸の主な役割としては

  • 関節の潤滑油として滑らかな運動を補助する

  • 修復時に貪食細胞などの移動を助ける

などが挙げられます。2つ目の項目についてもう少し深掘りしましょう。

◉結合組織中の移動を助ける役割とは(3/3)

これは基質の役割にもある物質交換の媒体に由来します。

基質は結合組織中の細胞と線維の間を埋める要素であることは前述しました。

組織損傷などが生じた際、組織の修復を行うためにまずは白血球などが現場に向かうわけですがその際に粘稠性の高いヒアルロン酸などが間隙に多量に居座っている状況では思うような移動が困難になります。

それを回避するために白血球などはヒアルロン酸分解酵素(ヒアルロニダーゼ  
 Hyaluronidase)を産生し基質を液状化する機能があります。

そうすることで白血球などは結合組織を通って修復部位に到達することができます。

ヒアルロニダーゼを産生するのは白血球だけでなく精子や黄色ブドウ球菌などにも見られます。

これらがヒアルロニダーゼを産生し、ヒアルロン酸を分解することで、精子であれば卵子に進入することができる、黄色ブドウ球菌であれば、その運動性を高めることができる。などの効果が得られます。

やや話は逸れますが、このヒアルロニダーゼは肥満細胞がヒスタミンなどの化学伝達物質を放出する際に一役買っている可能性も指摘されており、個人的には大変興味深い物質の1つとなっています。笑

さて、次からはヒアルロン酸と関節軟骨についてまとめていきたいと思います。

●ヒアルロン酸と関節軟骨


まず関節軟骨について復習します。
関節軟骨は湿重量の約95%を細胞外基質が、5%を軟骨細胞が構成します。

細胞外基質の主成分はⅡ型コラーゲン、プロテオグリカン、ヒアルロン酸などがあり、いづれも軟骨細胞から産生されます。

主な機能としては衝撃吸収作用と軟骨間の運動における摩擦の軽減です。

これらは細胞外基質によって機能が維持されます。

◉関節病変における関節軟骨(1/3)

関節軟骨が障害される場合には力学的ストレスによる傷害に加え、化膿性関節炎などに起因する生化学的要因があります。

関節軟骨に加わった機械的損傷はその修復過程において元の硝子軟骨へ自己修復することは困難とされています。

そのためこれらの外科的治療の際には自己軟骨組織を移植するモザイクプラスティーや、自家軟骨細胞を培養して移植する自家軟骨細胞移植などがあります。

機械的損傷における修復過程においては硝子軟骨への修復ではなく線維軟骨による置換が行われます。しかしこれでは荷重への耐性や円滑な関節運動を遂行することが困難となる可能性が高くなります。そして線維軟骨様組織として修復されるのは軟骨下骨に至る損傷であり、そこまで至らない損傷の場合は修復は難しいとされています。これらの修復は骨髄間葉系細胞によるものです。

円滑な関節運動を遂行できる大きな要因としてヒアルロン酸による粘稠性の提供が挙げられますが、関節液の粘稠性はヒアルロン酸の濃度に比例します。

一方で関節における力学的ストレス・生化学的要因はどちらもこのヒアルロン酸濃度を低下させる方向へ働く可能性があります。

それぞれの機序を見ていきましょう。

◉力学的ストレスによるヒアルロン酸濃度の低下(2/3)

力学的ストレスが関節に加わると短期的な対応としては軟骨組織の微小な傷害や炎症に対してⅡ型コラーゲンやプロテオグリカンなどの細胞外基質の産生を増加させることで関節軟骨を保護することができますが、長期的に進行すると破壊が産生を上回る形となり、軟骨基質の総量が低下してしまいます。

変形性関節症などで力学的要因が大きく関与した場合はヒアルロン酸代謝にも変化が生じることがわかっています。

ヒアルロン酸は高分子ヒアルロン酸としての産生と低分子ヒアルロン酸としての産生で大きく異なります。

高分子であれば粘稠性への貢献は高く、関節軟骨の保護機能を十分に発揮できますが、低分子ヒアルロン酸では粘稠性への貢献は少なく機能の発揮は低下してしまいます。

ヒアルロン酸分子量は幼児期から高齢期で約200万→30万へ低下するという加齢要因に加え、変形性関節症罹患関節においては線維化や滑膜炎症などの要因によりヒアルロン酸濃度はさらに低下、高分子ヒアルロン酸の産生能の低下も見られることがあります。

粘稠性を提供するヒアルロン酸分子量・濃度に負の変化が生じれば、摩擦係数を高めることに繋がり、関節機能のさらなる低下を招くことに繋がります。

◉生化学要因によるヒアルロン酸濃度の低下(3/3)

これは何と言っても、蛋白分解酵素による影響が大きいです。

蛋白分解酵素には

  • マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)

  • セリンプロテアーゼ

  • システインプロテアーゼ

  • アスパラギン酸プロテアーゼ

などがあります。軟骨の破壊や変性により強く関わるのは上2つです。

これらは炎症性細胞などから産生されますが、一部軟骨細胞からも産生されることがわかっており、それらを調節するのはインターロイキンやTNF-αなどの炎症性サイトカインや、TGF-βなどの成長因子であると言われています。

まとめると、力学的ストレスなどの要因により微小な傷害や炎症が生じる→ヒアルロン酸分解酵素の産生や炎症性サイトカインの遊走により蛋白分解酵素の産生も亢進する→ヒアルロン酸代謝異常が生じ分子量・濃度に変化が生じる→粘稠性の低下を招き正常といわれる関節運動の異常がさらなる機械的ストレスを増幅させる。

といったサイクルが形成されるのではないかと考えています。

参考論文
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cra/22/3/22_344/_pdf/-char/ja

次からはヒアルロン酸注射についてまとめていこうと思います。

●ヒアルロン酸注射について


ここからの内容はいくつかの参考を元に記載していますが、誤情報・拡大解釈を含む可能性もあるため、情報の取り扱いにはご注意ください。

◉ヒアルロン酸注射の推奨度について

上のデータは『変形性膝関節症の管理に関するOARSI勧告 OARSIによるエビデンスに基づくエキスパートコンセンサスガイドライン(日本整形外科学会変形性膝関節症診療ガイドライン策定委員会による適合化終了版)』の中に記載されているものです。

ここにおけるヒアルロン酸注射の位置付けは(16)

膝OA患者に対して有用な場合があり、副腎皮質ステロイドIA注射と比較すると作用発現は遅いが、症状緩和作用は長く持続することが特徴。

と記載されています。

SORとはstrength of recommendationの略称で"推奨強度"を示したものです。

OARSIはOsteo-arthritis Research Society Internationalの略で、予防と治療に取り組む科学者と医療専門家のためのOA唯一の主要国際組織とされています。

↑OARSIのHPより

ESとはEffect sizeの略称で、治療群と対照群の平均値の差を全体の標準偏差で割ったものです。0.8以上あれば、十分な効果があると考えられています。

LoEはLevel of Evedenceの略称です。詳しくは下図にて。

↑日経メディカルより


薬物治療のSORを見てみるとヒアルロン酸注射はOARSIと日整会では数字に違いがあるのが見て取れます。OARSI→64, 日整会→87

ヒアルロン酸注射における推奨強度の相違は、各国でのヒアルロン酸IA注射の普及度やその効果の実感、RCTの試験計画の統一性、欧米での試験対象がKellgren-Lawllence分類(K-L分類)gradeⅢ以上の中等〜重症例であったことなどが相違の違いとして挙げられています。

◉ヒアルロン酸注射による効果

ヒアルロン酸注射の効果として最もいわれているのが、高分子ヒアルロン酸の抗酸化作用による炎症の抑制です。さらには軟骨代謝にも影響を与える可能性が示唆されています。

次から酸化ストレスが軟骨代謝に与える影響や、高分子ヒアルロン酸が効力を発揮するメカニズムについてまとめていこうと思います。

◉酸化ストレスと軟骨代謝

この論文は約10年前のものになりますが、内容がわかりやすかったのでこれを元に
まとめてみようと思います。

まず変形性関節症に対してヒアルロン酸を関節内に注射することの意義として、関節液の粘稠性(Viscosupplementation)改善が挙げられます。

粘稠性とは前述しましたが高分子ヒアルロン酸が持つ特性であり、円滑な関節運動に大きく貢献する因子であります。低分子であれば粘稠性への貢献は低下します。

円滑な関節運動に貢献する(高分子)ヒアルロン酸を低分子化させる可能性を持つのが酸化ストレス(活性酸素の活性化)であるとされています。

ある程度の酸化ストレスであればヒアルロン酸が持つ抗酸化作用によって活性酸素を濃度依存的に抑制する力がありますが、長期的な機械的ストレスや、老化による軟骨細胞の変性によって活性酸素とヒアルロン酸のバランスが崩れてしまう(ヒアルロン酸に対して活性酸素が過剰に産生される)と、ヒアルロン酸の低分子化を招き、関節機能の低下を惹起することが考えられます。

よって、抗酸化作用を高めることが期待される生活習慣を意識づけることも変形性関節症の進行に影響を与える可能性が考えられます。

健康長寿ネットによれば活性酸素を増やしてしまう要因として

ストレス・食品添加物・喫煙・激しい運動・多量飲酒・紫外線

が挙げられています。代表的な抗酸化物質としては

ビタミンA・C・E
コエンザイムQ
フラボノイド系ポリフェノール(アントシアニンやイソフラボン)
非フラボノイド系ポリフェノール(ウコンやコーヒー)
イオウ化合物
カロテノイド

などが挙げられています。
特に野菜や果物に多く含まれているのでちょっとした生活のアドバイスとして患者さんと話してみるのも良いかもしれませんね。

●まとめ


ヒアルロン酸には粘稠性という特性から、関節運動の円滑性に貢献したり、軟骨保護作用を示すことがわかりました。

それらの機能は老化プロセスや過度な機械的ストレスによる酸化ストレス(活性酸素)の働きによって障害される可能性が考えられました。

ヒアルロン酸注射では高分子ヒアルロン酸の関節内に注射することで粘稠性の改善への効果を見込んでいることがわかりました。

運動や食生活などの生活習慣を意識することは抗酸化作用を高める効果を見込む上で重要であることがわかりました。

●最後に


いかがでしたでしょうか?

今回はヒアルロン酸というテーマで役割や注射の効果についてまとめてみました。

今回このような形でまとめてみると、すっかり忘れていた点や新たな発見がいくつかあり、継続して学ぶ重要性に再度気づかされました。

これを読んでいただいた方の何かしらの気づきになれば幸いです!

最後までお読みいただきありがとうございました!

p.s.

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