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ヒトの行動心理と痛み

かなり久しぶりのnote投稿になりました。タンケです^^

今回のnoteでは「ヒトの行動心理と痛み」というテーマで、特に疼痛行動に関する内容を中心に自分がこれまでに勉強したことや経験の中でお話できることをまとめていこうと思います。

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疼痛に関しては1960年代から70年代にかけて痛みに対する認識が大きく変革する時期がありました。

そのなかで痛みの表出における中枢性の侵害刺激伝達の調節機構であったり、内因性オピオイドの発見による体内の自己鎮痛機構であったりが報告されてきました。

その後、臨床心理学者であるFordyceにより、痛みにおける学習理論の応用が提唱されてからは、痛み領域における学習理論、行動科学などへの考え方に注目が集まるようになってきています。

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これまでのnoteでは上記の変遷の中でも"侵害伝達の調節機構"であったり、"Exercise induced hypoalgesia"などの自己鎮痛機構などのテーマを主にまとめてきましたが、今回はより環境との関わりが深い疼痛行動などについてまとめていきたいと思います。

*本文の中でいくつか論文の引用や、個人の考えなどを述べさせていただいていますが、僕の誤解釈・拡大解釈などが含まれている可能性もありますので本noteの内容に関する情報の取り扱いにはご注意ください。

(本noteは全文無料でお読みいただけます。)

↓それでは本文です!↓

●痛みに関連する行動にはどんなものがあるか

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痛みに関する情報を深く勉強できるようになってきた近年では、慢性疼痛に関する科学的な報告も多く勉強できるようになってきています。

なかでも"慢性疼痛"に関しては、組織損傷に起因する警告信号といった意味合いが急性疼痛に比べて少なく、BPSモデルに言われるような生物学的・心理社会的要因の中でも心理社会的要因の要素が多く反映されている状態とも言われています。

僕は整形外来で勤務していますが、通院する患者さんの中には数年・数十年もの間痛みに苦しめられている方が多くいらっしゃいます。

慢性的に痛みを訴える方の行動を観察してみると、痛みを訴える部位をさする、足を引き摺りながら歩く、薬を飲むといった行動が見られることがあると思います。

上記の行動は急性疼痛患者であれば痛み刺激に対する正常な逃避行動と捉えることができますが、組織損傷の程度に必ずしも起因しない慢性的な痛みを持つ方の場合、「痛み刺激に対する逃避行動」とは考えづらい行動である事も考えられます。

慢性疼痛患者が行うこのような行動に対して行動科学の分野では、"単に刺激に対する反応というよりも何らかの社会的メッセージを有しているのではないか"と考えられています。[1]

ではその社会的メッセージとは?についてまとめていこうと思います。

●行動の理解に必要な学習理論

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ではまず、サブタイトルにあるように行動を理解するために重要になる学習理論について簡単にまとめてみようと思います。

行動心理学の分野では"行動”を

環境とのやりとりの中で生体が示す反応

と捉え、"学習"を

経験によって生じる比較的永続的な行動の変化

と捉えます。[2]

学習理論の主要なものに「レスポンデント条件付け」と「オペラント条件付け」があります。

レスポンデント条件付けは行動の直前の環境変化が行動を誘発するという仕組みであるのに対し、オペラント条件付けは行動の直後に随伴する環境の変化が行動の生起頻度を変化させる仕組みを言います。

疼痛行動に関しては上記のうち、特にオペラント条件付けの原理によって説明されます。

つまりオペラント条件付けでは、"ある行動"を起こした際に周囲が"自分にとって好都合なアクションを起こしてくれた"際に、それ以降で、"ある行動"を起こす頻度が増加する。ということを表します。

逆に"ある行動”を起こした際に周囲が”自分にとって不都合なアクションを起こした"際は、それ以降で"ある行動"を起こす頻度が減少する。ことも然りです。

このようなことをオペラント行動と呼びます。

次項ではオペラント条件付けに関してもう少しだけ深掘りします。

レスポンデント条件付けにおいてもnoteの最後の方に触れています。

●ABC分析

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オペラント条件付けを考える際に重要になる行動分析の考え方にABC分析(三項分析)というものがあります。

ABC分析(三項分析)とは

A:Antecedent 先行事象
B:Behavior 行動
C:Consequence 結果

を表していて、この3つの要素のつながりを"三項随伴性"と言います。

「行動(B)」によって得られた「結果(C)」が自分にとって"好都合だった"場合、その結果は強化子としてそれ以降の行動の生起頻度を増加させます。

日常の例を挙げてみましょう。

あなたは今、電車に乗っていて、席に座っています。電車が駅に止まると高齢の方が乗車してきました。あなたはこの高齢者に席を譲りました。すると高齢者から「ありがとうね」と感謝され、嬉しい気持ちになりました。

↑の場面をABC分析のようにまとめると、

(B:行動)高齢者に席を譲った→(C:結果)高齢者から感謝されて嬉しかった。

この経験は今後、あなたが電車で高齢者に席を譲る行動をとる頻度を上げることになるかもしれません。

では、別のパターンを考えてみましょう。

(B:行動)高齢者に席を譲った→(C:結果)「大丈夫です」と断られ気まずかった。

この経験は今後、あなたが電車で高齢者に席を譲る行動をとる頻度を下げることになるかもしれません。

仮に前者のように自分にとって好都合な結果になったとしても、次から必ず高齢者に席を譲るようになるとは限りません。

行動と結果の関係性には"先行事象(A)"も加わります。

この「先行事象(A)→行動(B)→結果(C)」の関係性は、ある具体的な文脈の中で強化されたことを意味しています。

つまり、上記の例における追加条件として、

"自分が今あまり疲れてなく、駅で一見虚弱そうな高齢の方が乗車されたが、周りに席を譲る雰囲気の人がいないと感じた"という条件下において、"高齢者に席を譲る"という行動を選択したことになります。

これがもし、"夜勤明けで酷く疲弊しており、駅で一見虚弱そうな高齢の方が乗車されたが、近くの席に座る別の方が高齢者に席を譲ろうとしている"条件下では"自分が席を譲る"という行動の選択はしなかったかもしれません。

そういった条件のもとで席を譲った高齢者から「ありがとうね」と感謝され嬉しかったことが、それ以降に同じような条件の状況に遭遇した時、行動の生起頻度を増加させることにつながります。

少し細かい話をすると、この(A)先行事象には2つの型があると言われています。すなわち、「弁別機能」と「動機付け機能」です。

これらはどちらも「行動→結果→その後の行動」の強化or弱化に影響を与えます。

弁別(discriminative)機能」とは、
(A)このような条件で、(B)こういう行動をしたら、(C)こうなった。

という過去に経験した"特定の繋がり(connection)"が、現時点での行動に影響するという先行事象の機能になります。

「電車で席を譲った」という過去の経験を元に、それ以降に再度同じような条件下に遭遇した際に席を譲った、ということがあればそれは先行事象の弁別機能によって行動に影響が与えられたことが考えられます。

一方で、「動機付け(motivation)機能」は少しだけ難解です。(個人的に)

引用文献[3]の内容がわかりやすかったのでそれを元に解説します。

動機付け機能の代表的な例としては「食べ物の遮断化」が挙げられます。
もしあなたが料理をしていて、自分の子供が近くに来た時、「夕食ができたよ」と声をかけたとします。この声かけが子供にとって"弁別刺激"として機能した場合、子供は自分の部屋に行くのをやめ、食卓につくのでしょう。これは「夕食ができたよ」という声かけ→食事が出てくる→食べて満腹になる。という過去に経験した繋がりによる子供の弁別機能による行動選択というものになります。

しかし、もし子供がその時におやつをいっぱい食べて満腹だったら。「夕食ができたよ」という声かけによって食事が出てきて、それを食べて満腹になるという繋がりを経験上有していても、食卓につくという行動をしないかもしれません。これは弁別機能による影響ではないということです。

つまりこの条件下での「子供が声かけによって食卓につくかどうか」は"子供が空腹である"ことがその後の行動に影響を与えます。

これは先行事象(A)がもつ機能ではありますが、弁別機能とは異なり、これを動機付け操作あるいは確率操作などと言われています。

このようにオペラント条件付けでは、行動の結果が自分にとって結果的にどう働いたかによってその後の行動選択に影響を与えるといった関連性がお分かりいただけたと思います。

ここまでがABC分析の簡単な紹介になります。

次項では、具合的にオペラント条件付けと痛み行動に関する内容を書いていきたいと思います。

●オペラント条件付けと痛み行動

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オペラント条件付け(operant conditioning)はB.F.スキナーが1937年にReflex physiology(反射生理学?)の文脈の中で“controlled by its consequences(結果によってコントロールされる行動)"と定義したものです。[4]

起源が違っていたらすいません。

オペラント条件付けの起源はソーンダイクの試行錯誤説とも言われています。

痛み行動は、痛みや苦痛から生じる観察可能な行動の全てを表し、言語的・非言語的表現に加え、痛みの回避行動などが挙げられます。

言語的表現には

痛みを訴える、痛いと叫ぶ、うめき声を上げる など

非言語的表現には

苦痛の表情を浮かべる、痛い箇所を手で押さえる、仕事を休む、病院に行く、ドクターショッピングをする、体勢を変える など

痛みの回避行動には

家の中での活動をしなくなる、遠くへ外出しなくなる、運動をしなくなる

などが挙げられます。

これらの行動の背景には、"行動(B)をしたことによる結果(C)が自分にとって好都合に働いた"事による正の強化に加え、"行動(B)をしたことによる結果(C)が自分にとって不都合に働いた(疼痛の悪化など)"事による負の強化が関係していることが考えられます。

強化的(reinforcement)を簡単に表すと、

何かが"付加"されたことで行動の確立が高まる
→正の強化(positive reinforcement)
何かが"除去”されたことで行動の確立が高まる
→負の強化(negative reinforcement)

となります。弱化的(punishment)を簡単に表すと、

何かが"付加"されたことで行動の確立が低くなる
→正の弱化(positive punishment)
何かが"除去"されたことで行動の確立が低くなる
→負の弱化(negative punishment)

となります。

つまりは、“controlled by its consequences(結果によってコントロールされる行動)” であるわけです。

次項では、疼痛患者にとって"自分にとって好都合に働いたこと"による行動の強化、さらに"自分にとって不都合に働いた"ことによる行動の弱化についてどのように影響するのかを書いていこうと思います。

●行動に対する環境変化

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この項目では主に、自分の選択した行動(B)が"自分にとって好都合に働いた"際に強化されるものについてまとめていきたいと思います。

代表的な例は、"疼痛行動の強化"です。

すなわち、

自分が痛みを周囲へ訴えかけたことで(行動:B)、周囲からは自分に気遣いの言葉をかけてもらえたり、今行っている仕事を手伝ってもらえた(結果:C)。

これは自分にとって"好都合に働いた”ことになり、周囲へ訴えかけた行動はより強化されることになります。(communal coping model)[5][6][7]

これは、慢性疼痛患者が陥りやすい疼痛行動であり、外来場面でも遭遇することが多い現象ではないかと思います。

この疼痛行動は正の強化(positive reinforcement)に当たると考えられます。

さらには、

運動をする(行動:B)ことで痛みを生じた(結果:C)

この時の場合は、

運動方向を変える、運動速度を遅くする、などといった変化をつけることで(行動:B)、痛みを起こしづらくする(結果:C)

というような回避行動をとることがあります。代償運動がこれに当てはまり、このような行動を能動的回避(active avoidance)と呼びます。

一方で、

動かない(行動:B)ことで、痛みが生じることを回避(結果:C)する

ことも同様に起こり得ます。

これは不活動などが該当し、受動的回避(passive avoidance)と呼ばれます。

これは行動をしないことで疼痛回避を得ることから負の強化(negative reinforcement)に当たると考えられます。

不活動によって疼痛を回避できたことに対して報酬系が働くと、疼痛回避という短期的な利益を得る反面、長期的には廃用を来したり、社会参加の減少からうつ傾向が強くなったりとデメリットも多くなってしまいます。(Fear avoidance model)

他方で、代償運動がしばしば理学療法場面で問題点として挙げられることは多々あることですが、代償動作へのアプローチとして本来働くべき(と言われている)筋肉の出力を発揮できるように当該筋に対する強化アプローチを行うことが多いかと個人的には感じています。

しかし、いま目の前で生じている代償運動が"結果によってコントロールされた行動"であった場合、筋力強化アプローチを行うことのほかにも介入の選択肢は広がるかもしれません。

この疼痛行動の強化に関して、我々セラピストが臨床場面で陥りやすいなと個人的に感じていることを次項で書いてみようと思います。

●疼痛行動への対応

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患者が疼痛行動を起こす理由として最も大きいことの1つに"疼痛からの回避あるいは軽減を図る"ということがあると思います。

患者の疼痛が急性の痛みであった場合、あるいは持続的な侵害受容性疼痛であった場合などでは、それらの疼痛行動は痛みからの回避として適切な行動であり、特に問題となることは少ないのかもしれません。

しかし、慢性疼痛を患う方の疼痛回避行動は"周囲からの対応"などの環境要因が行動の強化に大きく関わることをこれまでにお話しました。

僕たち医療者も、患者にとっての環境要因に大きく関わるものであると僕は考えています。

1つの例としては、患者が足を引きずってリハ室に入ってくれば気を遣って手を差し伸べる、車椅子を用意する、リハビリメニューを大幅にレベルダウンする、などの対応を取ることがあるかと思います。

↑の状況に関してそのように対応することは決して間違いではないと思います。

しかしそのまま"疼痛行動が観察された"という事実だけでリハメニューを大幅にレベルダウンさせたり、本人を気遣って動きの手助けを過度に行なってしまうと、患者さんにとって"今日のリハビリが楽になってよかった"と思うきっかけになり、その後の疼痛行動の強化につながってしまうリスクもあると僕は思います。

その際に僕が大切にしていることは、疼痛部位に対してできる限り適切だと考えられる評価を行うこと、現在の状態に関して理学療法士として説明できる限りの内容を患者さんと共有すること、疼痛部位とは異なる部位に対して積極的に運動療法を実施することです。(医師による判断が必要だと考えられる急性疼痛が疑われればそれに適した対処をとります)

肩に痛みを訴えるなら肩甲帯、膝に訴えるなら股関節というようにエクササイズ内容はシンプルでも他部位からの運動療法を患者さんへの負荷量に配慮しながら積極的に実施します。

個人的な経験では、他部位から運動療法を実施していると段々と痛みを訴えていた部位も多少"動かせる"状態になってくることが多いように感じています。

このようにセラピスト側の対応が患者の疼痛行動の強化因子になることがないように適切に対応できるようになることもとても重要なことだと考えています。

最後に条件付け理論の中で慢性疼痛と関係の深い"恐怖条件付け"に関してまとめてこのnoteを終わろうと思います。

●恐怖条件付け理論

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恐怖条件付けは古典的条件付けの一種であり、古典的条件付けの紹介の際に多く取り上げられる実験に「パブロフの犬実験」が有名です。

パブロフの犬実験では、犬に餌を与える前にベルの音を聴かせ続けるとベルの音を聞いただけで唾液が分泌されるようになった。と報告されています。

この時、

与えられる餌:無条件刺激(US)
餌で誘発される唾液:無条件反応(UR)

であり、ベルの音は本来、上記とは関連しない刺激のため中性刺激です。

餌の見た目や匂いによって唾液が分泌されることは生物にとって自然な反応になりますが、継続的な経験により「ベルが鳴ると餌がもらえる」と学習すると本来、無条件反応に関連がなかったベルの音(中性刺激)が条件刺激(CS)となり、ベルの音で唾液が分泌される反応は条件反応(CR)となります。

↑の内容がパブロフのイヌ実験であり、古典的条件付け理論の代表として考えられています。古典的条件付けはこれになぞってパブロフ型条件付けと呼ばれたりもするようです。

恐怖条件付けはこの古典的条件付けの一種であり、すなわちレスポンデント条件付けと言われるものの一種になります。

恐怖条件付けに有名な実験にジョン・ワトソンの「アルバート実験」[8]があります。

アルバート実験では、"白い"ラットやうさぎ、サル、イヌなどのぬいぐるみ(中性刺激)に対して好奇心をもつ生後11ヶ月のアルバート少年に対して大きな音を出して聞かせるといった無条件刺激を与え、それに対してアルバートは恐怖反応を示しました。

そしてその後、アルバートは白いラットのぬいぐるみに対して泣き叫び逃げるという反応を起こしました。(無条件反応)

これが恐怖条件付けの概要になります。

これを痛みの臨床場面に置き換えてみると、

痛みという無条件刺激によって恐怖などの無条件反応が生じます。それが中性刺激である運動との間に学習された場合、

運動する(中性刺激)→痛みが生じる(無条件刺激)→恐怖を感じる(無条件反応)

といった流れが出来上がってしまい、運動すること自体が条件刺激となりそれに対して恐怖を感じる条件反応といった形となってしまいます。

そして、これに拍車をかけるものが「般化」と呼ばれる現象です。

●般化とは?

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般化(generalization)とは条件刺激に類似したものも一括りに恐怖を抱くようになってしまう現象を言います。

アルバート実験では白いラット以外にも白いうさぎや白いウサギに似ているものまでも恐怖を抱くようになったとされています。

運動に置き換えると、その運動に類似した別の運動であっても恐怖を抱くようになってしまうということになります。この類似した運動のことを般化刺激(generalization stimulus)と呼びます。

つまり慢性疼痛患者さんでは運動することによる痛みへの恐怖を"過剰に般化"させてしまっていることが考えられます。

そのため、ある特定の運動だけでなくそれに類似した、しかし本来は身体にとって痛みになり得ないような運動・姿勢であってもそれを「自分にとって大丈夫な運動だ」とは識別できない状態であることが考えられるのではないかと思います。

もしそうであれば、慢性疼痛患者さんにとってリハビリの場で指導される運動が自分にとって良いのか悪いのか、痛みにつながる運動なのか、どうなのか、自分では考えることが困難となるため、それは過剰な警戒心へと繋がってしまいます。

このようなことが「恐怖条件付け」と「般化」の簡単な内容になります。

このような状態の患者さんに対してのリハビリテーションは細心の注意を払う必要があると僕は考えています。

ここで運動を指導する側の僕たちが痛みへの適切な評価を行い、FITTの原理のもとで適切な負荷量に設定した運動処方を患者さんに指導できれば、それは、

運動する(中性刺激)→痛みを感じる(無条件刺激)→恐怖(無条件反応)

といった流れだったものに対して消去(extinction)学習に転じるきっかけを作れるかもしれません。さらには

○○の運動をする(行動:B)→痛くなかった(C:結果)→これは大丈夫(強化)

といったオペラント学習に転じるきっかけを作れるかもしれません。

しかし何事もそうですが評価が不十分だと患者さんに不適切な運動指導を行うリスクも高まり、これからの行動学習においてネガティブに作用"させてしまう"ことにつながることも十分に考えられます。

そのためにも痛みに関連する行動心理的な解釈への知識を深めることや、患者さんへの丁寧な問診、観察力などを養うことも僕たちセラピストにとってとても重要なことだと考え、このnoteを作成しました^^

●最後に

いかがでしたでしょうか?

今回は「行動心理と痛み」というテーマで疼痛患者さんに起こりうる心理状態や条件付け・行動科学的な考え方などを簡単にではありますが、紹介させていただきました。

改めて考えてみるとこの内容にあるような状態の方って臨床ではかなり多いのではないかと個人的には思っています。

自分の身体の損傷・痛みに対する恐怖、自分が痛みを訴えることで社会に与える影響に対しての恐怖など、その人にはその人特有の痛みとそれに関連する事象が複雑に絡み合っているのだと思います。(BPSモデル)

恐怖を感じる対象が違えば、セラピストとして対応できるリハビリメニューも変わってくるのではないかと僕は思います。

だからこそ、我々セラピストは生物学的・心理的・社会的それぞれに対して知識を蓄え患者さんに接する必要性があるのではないかと考えています。

どれかに固執するのではなく、広く捉えられる視野が重要だと思います。

今回のnoteはそれぞれの領域にとってはかなり浅い内容ではありましたが、もしこれを読んだことでそういうところもこれからは考えていかないとな!と少しでも感じていただけるきっかけになれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました!

@tanke_94pt

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●引用文献

[1]本谷亮 行動科学とは何か? ペインクリニックVol.41 No.9 2020.9 p,1125
[2]本谷亮 行動科学とは何か? ペインクリニックVol.41 No.9 2020.9 p,1127
[3]ニコラス・トールネケ 関係フレーム理論(RFT)をまなぶ 言語行動理論・ACT入門 星和書店 2020 p,24
[4]J. E. R. Staddon and D. T. Cerutti 「Operant Conditioning」Annu Rev Psychol. Author manuscript; available in PMC 2006 Jun 1.
[5]Luis F. Buenaver「Pain-related Catastrophizing and Perceived Social Responses: Inter-relationships in the Context of Chronic Pain」Pain. 2007 Feb; 127(3): 234–242.
[6]John W. Burns「The Communal Coping Model of Pain Catastrophizing in Daily Life: A Within-Couples Daily Diary Study」J Pain. 2015 Nov; 16(11): 1163–1175.
[7]Chloé Leprince「Coping in Teams: Exploring Athletes’ Communal Coping Strategies to Deal With Shared Stressors」Front Psychol. 2018; 9: 1908.
[8]J B Watson, R Rayner「Conditioned emotional reactions. 1920」2000 Mar;55(3):313-7. doi: 10.1037//0003-066x.55.3.313.

p.s.

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