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第8回 短歌読書会――穂村弘『短歌という爆弾』小学館文庫.


第7回の続き

今回で「3 構造図」を終えます!!!!!!!!!!!!!

どんな雪でもあなたはこわい p.245

出奔せし夫が住みゐるてふ四国目戸連れば不思議に美しき島よ

中城ふみ子 p.246

・「愛の希求の絶対性が、現実の愛の成就のビジョンを超越してしまう結果」 p.246
・キーワード:
宙の知恵の輪(「宙に浮かんだまま永遠に解けない知恵の輪」p.245)
=愛の希求の絶対性
・知恵の輪の強度がはっきりと示されない限り、その歌人が何を重視しているのかが分からない(ので、どの歌でも強度を明示すべきである)。

さんた、ま、りぁ、りぁ、りぁ p.256

人の生命(いのち)救ふにかかはる器具なり冬なりき冬にきらめくは武器に似たらむ

葛原妙子 p.258

・「対象物」と「比喩・見立て」がある。
→対象物と比喩の共通点:
「この世で最も美しいもの、重要なもの、可能性にみちたものが(中略)ネガティブな存在と結びつけられている」(p.257)という点。
・上の歌は存在の反転の典型例
→絶対的な愛の希求を反転すること(幻視的な表現)により、存在の裏側から輝きを与えることができる。
cf 幻視=「存在そのものを反転させる力」 (p.261)

ミイラ製造職人のよう p.264

珈琲を立ち飲みしつつ今こころミイラ製造職人のよう

大滝和子 p.264

・「理想と現実との間の永遠に埋まらない落差、愛の希求にともなって繰り返される絶望の衝撃」=「違和の感受」(p.264)が葛原妙子や塚本邦雄の作品を支えている。
・大滝作品について:
大滝にとっては「世界は未知性にみちた場所」、「<私>自身が大いなる謎」、「日常生活が違和の感受の連続」(p.265)。
↕︎
・寺山作品について:
 「独特の違和感は、多くの読み手に共通する印象である」(p.272)。
 「<私>への強い不信」(p.274)があるため、独立した<私>だけでは描き得ない第三者の目から見た幻の<私>を創り出す。その結果として、作品が疑似っぽく/嘘っぽく感じられる。

しんしんとひとりひとりで歩く p.275

海賊とその肩にゐるオウム欲し 冬夜を航る硝子窓にて 

井辻朱美 p.276

・「次の一首を生み出すものは経験でも言語感覚でもなく、無色透明のひとりの信仰であり、極彩色の夢への憧れ」(p.281)
・井辻朱美以降の短歌について:
 坂井修一は「広義のニューウェーブ」
cf 広義のニューウェーブ:「表現する人間の側の質の変化とそれに直結した表現の多様化、極端化」(p.275)
↕︎
cf 狭義のニューウェーブ:「口語や記号使用などを中心とする表現手法の面から捉えられる」(p.275)
 穂村弘は「わがまま」
cf わがまま=個人的な「信仰心の強さ」(p.276)

次回

終章は後書きも交えつつ、さらっとまとめる予定です。

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