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地方で文化イベントをやり続ける「意地」

金土と出張に行っていて、本日は代休です。片道5時間以上の鉄道の旅はさすがにこたえる歳になりました。JR全線完乗した頃は1日12時間くらい乗り続けてもまったく苦にならなかったんですが。
代休、と言っても、経営者には有給休暇も夏休みも休日出勤の概念もありませんので、自分でペース配分しながら休むようにしています。ここ5年くらい、本当にゆっくり休めるのは年末年始くらいになりました。富山はそろそろ雪が降りそうなので冬眠したいです(笑)

10月までにそれまでのインプット分を使い果たした感じがしていたので、11月は本を読んだり映画を観たりと休みのたびにいろいろと勤しんでおります。昨日は富山市内へ「音楽朗読劇」という、初めて観るタイプのイベントに参加してきました。

私の経営する会社でも、10月に声優・能登麻美子さんの朗読イベントを開催しました。こちらの会館の方が「お互い能登さんが出演されるイベントをやるので、いろいろ宣伝し合いましょう」とチラシの配架、SNSでの情報発信などにご協力いただいたので、そのお礼も兼ねてうかがった次第です。前日に「お席に余裕がございます」と告知されて少し心配していたので、後ろの方に少し空席があった以外は満員の場内をみてホッとしました。こちらのイベントでもたくさんの皆様が会場を埋めてくださって、富山の「意地」をファンのみなさんに見せられたかな?と思っています。

京都に住んでいる時は、電車ですぐのところに大阪があり、「京都でやってなくても大阪まで行けばいいや」くらいにしか思っていませんでした。でも日本海側に移り住んだ途端、イベントやライブは富山は基本スルー、運が良ければ金沢公演、最悪名古屋公演もなし、という現実に直面しました。最初は「イベンターは地方を軽視している、地方に住んでいる人間は生の文化に触れるなということか!」と内心憤っておりました。でも実際にイベントを主催する側になってみて、いろいろな困難に毎回直面してようやくその理由を理解することができました。


集客できない⇒地域をスルー⇒観客減少⇒集客できない・・・の悪循環
イベントはプロモーション目的の無料のものをのぞいて、お客様から入場料をいただき、記念グッズなどを買っていただき、ご満足いただいたうえでさらに利益を出さなくては、主催者としてスタッフを食わせることができず続けていけません。そして地方のイベントでたとえお客様の数が少なくても、どうしても必要な機材費や設営費、宣伝費などがありますので、皆様からいただくチケット代金はそれを下支えしてくれるとても貴重な収入です(それでも物販なしでチケット代だけでペイするイベントはほんの一握りだけではないでしょうか)。主催者としては「1円でも高くして回収を・・・」と言いたいところではあるのですが、チケットの値段が高くなりすぎると参加できる人がどうしても限られてしまいますし、そもそもの人口が少ない富山のようなところで高額チケットを売るリスクはとても高い。日本最大のマーケットである首都圏からも、新幹線だと往復3万円近くかかりますので、外から来てくださる皆様にも過度な負担は強いたくない。いろいろなことに思い悩み、やっと決まったチケット価格とイベント内容を告知し、チケット発売の日を迎えます。大都市部や有名タイトルのイベントとは違い、即日完売などは難しいので、限られた予算の中で毎日コツコツ宣伝をしていき、普段のつながりなども活かしながら、一枚ずつチケットを売っていく感覚です。そして毎回出るいろいろな課題を反省し、次の公演に活かしていこう、となるわけです。時々「同じ手間でもっと楽にたくさんのお客さんを集められないのかな」という悪魔のささやき(笑)にも襲われますが、そのたびに会社が南砺市でイベントをやる意味を思いだし、気を取り直しています。私の会社のような、年に1~2回ほどのイベントを主催するところでもそんな感じなので、年に何度も公演を開いて会社を維持していかないといけないところは「お客の入らないところは避けて、できるだけたくさんチケットが売れ、宣伝にも手間がかかりすぎないようにしよう」となる気持ちは、今では痛いほどよくわかります。でもそうやって心折れる主催者が増えてしまうと、スルーされた地域の人間は「イベントは都会で観るもんだ」という習慣が根付いてしまい、ますます地域のイベントから足が遠のいてしまう気がします。その悪循環をなんとか止めるには、地域のイベントを主催する他の人たちとももっと連携していかないといけないと思います。やらないといけないことがたくさんあるなあ・・・。

音楽朗読劇の方は、和洋取り混ぜた楽器の生演奏にのせて、平安時代~現代を描く、壮大なストーリーに引き込まれました。マイク1本と衣装だけで観客をその世界に連れて行ってしまう役者さんの生の演技を、同じ空間で観られるのは幸せなことでした。あと生の舞台というのは、観客がその空気を作っていくものなんだなとあらためて思いました。600人ほどのホール(地方だとこれくらいの会場が多い)で役者さんとの距離も近いのがとてもよかったです。最後にスタンディングオベーション、すればよかったなあ(ちょっと恥ずかしがり)。

2012年に、京都から富山県の南砺市城端(なんとしじょうはな)へ移住してきました。地域とコンテンツをつなげて膨らませる事に日々悩みながら取り組んでいます。 Twitter⇒https://twitter.com/PARUS0810