見出し画像

読書録2019.12-2020.01(最近本を積むよりも読むペースが速くなってきたので)

最近本を読むペースが、自分でも少し驚くほど速くなってきました。いわゆる「速読」の能力は身につけてはいないので(特に身につけるつもりもない)、単純に読む機会が多くなって「本に慣れてきた」と言うのが正しいでしょうか。齢41にして人生で一番本を読む時期に突入しています。
ただ一冊一冊、自分で選んで買った本ばかりなので、読み散らかして終わりにはしたくありません。前からnoteでちょこちょこ本の感想などを書いていましたが、一冊の本について深掘りした感想をまとめる時間も能力もないので、割り切って読書録にしてみました。

本業の方で、小さなショップの書籍仕入れを担当しているので、参考にと読んでみました。ショップで使っている取次のシステムで「本屋」と検索してひっかかり、自分で仕入れて、装丁が気に入ったので自分で買いました(笑)。柔らかで穏やかな表紙とは裏腹に、まちの小さな本屋さんの苦悩と、著者個人の過酷な生き様が切々と綴られ、同じ経営者として胸が詰まる思いで読みました。しかも病気のため、原稿は途中で途切れてしまっており、筆者が亡くなったため続きが出ることもありません。けれども著者が「本」「書店」という形で蒔いたタネが、1万人以上の読者に届いている(5刷だそうです)事実が、大きな救いになっているでしょうか。生前の著者と交流があり、なんとしても世に出すんだという気迫を感じる編集者や、著者を支えてきた人たちの息づかいが伝わる良書です。

Amazonの古本で書影が気に入って買いました。まちの古本屋さんの基礎的な業務をつかむのにはピッタリな入門書です。あと古本ならではの、元の所有者の本に対する思いや、お店の常連さんとの顔の見える関係などが垣間見えて、とてもいい仕事だなあと思いました。子供の頃、毎日通った近所の小さく薄暗い古本屋さんを思い出しながら読みました。自分の住む街に、ブックオフ以外の古本屋さんがある人はうらやましいと思います。

木村元彦さんの旧ユーゴスラビア関連の本や、スポーツドキュメンタリーをよく読んでいたので、最近は書店関連の本も書かれているのかと驚きながら手にしました。いわゆるヘイト本の問題や、売ることを望んでいない本や不利な条件を小さな書店に押しつける商慣習との長い闘いが、大阪の小さな書店が歩んできた歴史とともに綴られます。相変わらずの木村さんの筆力で一気に読みました。前述の札幌の書店もそうですが、「本」はただの商材ではなく、それを届ける書店もあわせ、そのまちの文化や政治、民度を下支えする存在なのだとあらためて思います。

富山市出身のフリーライター、藤井聡子さんの自分史&エッセイ本です。「ピストン藤井」という筆名で地元新聞にも連載を持たれていたので、その濃い文章には以前から注目していました。版元(里山社)でWeb連載していたのをたまたま読む機会があり、妻と共に楽しく読んでいたので購入。私たちのような外から来た人間が富山になじむのも大変ですが、一度富山を出た人(女性+独身)の生きづらさ、それでも地元が好きな気持ち、北陸新幹線開業に前後してまちの「個性」が失われていく危機感がドロドロと入り交じった一冊です。

去年の朝ドラ「なつぞら」で主人公のモデルになった、女性アニメーターの草分け的存在・奥山玲子さんの旦那さん、小田部羊一さんや当時を知る関係者のインタビューなどをまとめた一冊です。ドラマの原点を知ることができる一冊でもあり、小田部さんの奥山さんへの変わらぬ恋心(愛情、というよりももっと激しいものを感じました)を読ませてもらいました。

何度か大きな書店で見かけ、インパクトのあるタイトルと表紙が気になったので、富山の紀伊国屋書店で購入。そのあと近所の小さな書店にも入荷していたので、ジワジワと人気が広がっているようです。山口県周南市の山あいの集落で起こった、連続殺人放火事件の犯人の人生と境遇をたどる筆者(フリールポライター)。集落に通い、そこに住む被害者遺族やその周辺の人たちへの取材を進める中で、狭いコミュニティの中で大きな役割を担う「噂」と、現代のネットリンチや炎上騒ぎ、社会の分断などの構造を重ねていきます。また凄惨な事件の表面だけをなぞるマスコミが、集落への偏見に拍車をかける様子は生々しい限りです。筆者自身の、子供さんを抱えて掲載する媒体も決まらないまま苦悩する生き様が並行し、ただの事件ルポにとどまらない一冊になっています。このnoteでの反響がきっかけで出版にいたったそうで、メディアの新しい形へのヒントだと思いました。

伊藤忠商事の元社長・会長をつとめ、中国大使も経験した筆者の、経営者の持つべき能力と覚悟をわかりやすくまとめた一冊です。バブルよりずっと前から日本有数の大企業でキャリアを積まれ、何千億ものお金と何万人もの社員を動かされていた方なので、「そんな恵まれた人の書いたことなんて」と思わずに読んでください。この本には書けないことがバックにものすごくある方だとは感じましたが、経営に迷った時にまた読み直したいと思う一冊でした。

沖縄の公設牧志市場のすぐ近くで、小さな古本屋を一人で営む女性の本で、本に囲まれて過ごす日々のことを、とても率直な気持ちで書き記されています。エッセイが書ける人をいつも尊敬しますが、人が不快に思わないレベルを(知らず知らずでも)気にしながら、どれだけ自分を正直にさらけ出せるか、という才能なのかな、と思います。古本屋ウララの日記はオススメです。

日本にプラスチックモデルが生まれるまで、どういう歴史をたどってホビーとして定着したのかがよくわかる一冊です。独特の流通システムや、模型店やデパート、駄菓子屋など多様な小売業態が混じり合う、模型業界のビジネスとしての側面も知ることができました。こういう本が出てくるほどプラモは歴史を重ねたと同時に、庶民、特に子供たちから縁遠くなってしまったんだなあと改めて思った次第です。

数えてみたらちょうど10冊でした。もっと読んでいる気がしていたので意外と少ないな(笑)。「今月の10冊」とかにしてしまうと、そのノルマに苦しみそうなのでただの読書録にします。
余談ですが、私は昔から新聞の書評欄が大好きで、毎週欠かさず読むようにしています。あれを紹介された本はついつい書店で手を伸ばしてしまいます。レビューブログとか口コミサイトとかができる、ずっと前から続いている存在ですね。新聞はもっとそういうところをアピールしてほしいと思います。来月もお楽しみに。

この記事が参加している募集

noteのつづけ方

2012年に、京都から富山県の南砺市城端(なんとしじょうはな)へ移住してきました。地域とコンテンツをつなげて膨らませる事に日々悩みながら取り組んでいます。 Twitter⇒https://twitter.com/PARUS0810