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アニメと地域のコラボ商品の橋渡し役として

二日続けての投稿です。今回は本業の方の宣伝というか、このnoteで当初書いていこうと思っていた、地域とコンテンツをつなぐお仕事のことです。
本日正午から、私の経営する『桜クリエショップ』の通販ページで、アニメ「true tears」と富山のコラボ商品(Tシャツ・手ぬぐい)の予約受付を開始しました。製造販売は富山県内のオリジナルTシャツや学生服を手がけられる会社さん、商品企画とプロデュースを私の会社で行いました。途中いろいろと苦労もあったので、やっとお披露目することができてホッとしています。

アニメ「true tears」は2008年に放送された、高校生の恋愛模様や将来に思い悩む姿を描いたテレビアニメ作品です。私の住む南砺市城端をメインに、富山県内各地が舞台モデルとなり、当時注目され始めていた「アニメ聖地巡礼」のその後のブームもあり、全国から多くのアニメファンが城端を訪れるようになりました。実は私もその中の一人でして、それが高じて城端に移住することになりました。この話はとても長くなるのでまたの機会に。また制作会社のピーエーワークスさんが城端に本社を置き、日本のアニメ業界では珍しい地方発の作品づくりをしていることでも注目を集めました。
※作品はBlu-rayや配信、レンタルDVDなどで観ることができますので、知らない方はこの機会にぜひご覧ください。

アニメ作品とのコラボ商品、俗に言うアニメグッズは、市場規模5,000億円を超える一大産業となっています(「アニメ産業サポート2018」より)。ガンダムのプラモデル(ガンプラ)や、プリキュアの変身おもちゃなどもこの枠に入る商品ですね。私と同世代の日本人で、アニメグッズに全く接したことのない人はかなり限られると思います。ただ最近は少子化の影響もや、アニメを観て育った世代が社会人になっていることから、子供だけでなく大人もターゲットにしたアニメグッズも多くなっています。あと最近ではアニメ作品とのコラボカフェなども注目されています(私の会社でも開催中です)。
私たちが手がけているのは、大人向けのアニメグッズの中でもさらにニッチな、「地域とアニメ作品とのコラボ商品」です。今回のような地域の事業者さんとのコラボもあれば、地域の名産品やおみやげ、伝統工芸品などとのコラボも、「アニメ聖地巡礼」の拡がりと共に徐々に増えてきました。ただ「産業」と呼べるほどには、アニメ作品の地域での商品活用は拡がっていない、というのが正直な感想です。なぜなのでしょうか?

商品開発の流れ(従来)

アニメ作品とのコラボ商品を作って販売するには、当たり前ですがアニメ作品からのライセンス許諾が必要です(その許諾を得ないまま販売される商品は「海賊版」と呼ばれます)。みなさんのお手元にあるアニメグッズを見ていただくと、包装などに小さなシールが貼り付けてあると思います。これこそが「版権元からの正式な許諾を受けたライセンス商品だよ」という証なのです(シール以外に印刷などの場合もあり)。そしてそのシールを版権元から発行してもらうためには、ざっくりと上記のような手順を踏む必要があります。ここには書きづらい契約やロイヤリティ(ライセンス料)関係の手続があったり、もっと多くの手順を踏む場合も多いですが・・・。アニメ作品の版権元が、自分たちの作品のイメージを壊されたり、作品素材(キャラクターの設定イラストなど)を粗末に扱われないよう、確実にチェック可能な仕組みになっているのです。

しかし、キャラクター商品を扱うビジネスではごく当たり前の手続が、地域の事業者にとってはかなりのハードルになっているのが現状です。まず企画書を作るところから悩みは始まります。一般的な商品開発でも、最近では企画書を作るケースが多いと思いますが、キャラクター商品では「なぜこの商材と作品がコラボするのか?」というところが必ず問われます。少なくとも私が扱った作品のコラボ商品はそうでした。いわば商品の「思想」を正面から問われる訳です。そしてそれはデザインチェックの段階でも如実に出ます。「思想」や「こだわり」のある事業者さんの思いを汲みながら、作品について一定の経験と知識を有する私たちが微妙なさじ加減をアドバイスするわけです。正直とても気を遣います(笑)
下の図の緑の部分が、私たちが主に担っている仕事です。

商品開発の流れ

また作品素材の扱いにも、一定のノウハウが必要です。例えばキャラの頭を変なところでカットしない、レイアウトを勝手に変更したり切り抜いたりしない、違う色に変更しないなど、デザイナーにもルール遵守の気持ち、作品やそのクリエイターへのリスペクトが必要です。その勘所をつかんだデザイナーとの人脈を構築し、案件を重ねる中でノウハウを共有し、良質なアウトプットにつなげてもらいます。これも地域の事業者さんにはかなり難しいことなので、東京の仲介業者などに依頼している事業者さんも多いと聞きました。その方が確実性は高いのでしょうが、中間マージンとしてかなりのお金が地域から流出してしまうことから、この部分をなんとか私たちで担えないか、と考えたわけです。

また商品開発まではなんとか自力でできても、実際にその作品のファンに手に取ってもらうところの商流構築までは手が回らない、という地域の事業者さんがほとんどです。そもそも地域の事業者さんは製造がメインで、販売は問屋さんや都市部のバイヤーさんに任せきり、というところが圧倒的に多いです。実際に私たちも、すでに完成した商品の委託販売を、運営するショップなどで依頼されるケースは多いです。ただ、私たちが自力で運営する売り場だけでは、多くの商品を短期間に売ることはなかなか難しいため、外部での販売も試みています。今はウイルスの影響もあり難しいのですが、集客力のある施設や店舗とコラボしてイベント的な物販を仕掛けたり、その作品の舞台モデルとなった地域にポップアップ的な売場を作ったりと、いろいろタイミングをはかりながら試行錯誤する日々です。前述のネット通販も、より多くのファンのみなさんへ届けるための重要な手段の一つです。

また何よりも、各作品の版権元さんとの信頼関係が重要です。よくネット記事などで「地域の事業者の商品はロット(製造数)が少なく、監修の手間がかかって版権元から敬遠される」などと書かれていますが、作品へのリスペクトと誠意を尽くして接すれば、私たちのような地域の小さな会社にもきちんと向き合っていただけます。ただ版権元さんも、自分たちが大切に育ててきたコンテンツを外部の事業者へ預けるのですから、なんだかよくわからないところや、管理が不十分なところへは許諾したくない、と思われるのは当たり前なのです。

私の会社では、今回商品化にこぎつけた「true tears」以外にも、上記のような作品を活用した商品化をお手伝いしています。いずれも、南砺市に本社を置くピーエーワークスさん(私の会社が管理する南砺市クリエイタープラザ「桜クリエ」の隣に本社を構えておられます)が制作されたアニメ作品です。今年から本格的に北陸の事業者さんとタッグを組み、旅行で訪れるファンの皆様へ販売していければと思っていましたが、今はなかなか「北陸に来て」とは言いづらい状況になってしまいました。幸いネット通販が利用できるようになりましたので、「いつか行く時のため」「行けない代わりに」選んでいただけるような商品を、これから送り出していければと思います。


2012年に、京都から富山県の南砺市城端(なんとしじょうはな)へ移住してきました。地域とコンテンツをつなげて膨らませる事に日々悩みながら取り組んでいます。 Twitter⇒https://twitter.com/PARUS0810