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短歌のおもちゃ箱11

今から10年前の3月11日、東日本を大きな地震が襲いました。私は一人の歌詠みとして、「今」を詠み、記録しておくのが務めだと思い、歌を作りました。

・この島を襲える大きな地震など知らぬがごとく夕陽が赤い

・千年にたとえ一度の地震でも負けてたまるか豊秋津島

・名も知らぬヒーローヒロイン必ずや東日本の地に溢れいぬ

・友人と同じ名前の被災者の死私の知らない人生があった

・どんな言葉で作ってみても嘘ではないのか恐くて怖くて形にならない

・空はこんなに青いのに風はこんなに渡っているのになぜ船は動かない

震災直後はまだ冷静で前向きな歌を作っています。震災の状況が詳しくわかるにつれて、私は恐怖しました。所詮、短歌はそのような大きな悲しみを表現できないのではないか、と思いました。しかし、その大きすぎる悲しみを自分なりに受け止めて歌にするのが歌詠みではないのか、そのように考えました。6首の連作の中でも、そのような心の動きが見えます。

友人の名が犠牲者の中にあり、びっくりしました。友人は宮城県仙台市に住み、被災した方は福島の方だったので、別人とわかりました。それでも、仙台に電話して、無事を確認しました。

最後の歌の無力感が、やはりこの時の心情を一番表しているように思います。

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