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人間関係で大切なことはみんなラウンドワンで教わった 板橋編 2章

※引き続き登場人物は仮名です。

見えないお客様

「先日、そちらでスポッチャを遊びに行ったのですが、不備が多すぎて全然遊べませんでした・・」
「従業員の対応が悪すぎる・・全く楽しめなかった・・・」

板橋に来て私が苦しんだのは、“お客様メール”でした。

おそらく、多くのサービス業が採用されている思いますが、ラウンドワンでも、お客様のご意見ご要望を、メールとして頂戴できるようになっておりました。

しかしながら、そのほとんどがご意見ご要望ではなく、“苦情”でした・・

「深夜、屋上で騒ぐ声がうるさすぎる・・近所迷惑だ!!!」
「屋上の照明がまぶしい・・寝れない・・」

住宅が密集しているところにお店があります。
特に屋外エリアの屋上には神経を使います・・
せっかく楽しみにご来店いただいてるお客様に対しては、非常に心苦しいのですが、深夜屋上を利用する場合は、“騒がないように”という注意喚起を徹底することになります。

みんなでワイワイ!
これがラウンドワン。にも関わらず“騒がないで”という矛盾を強要しないといけない・・心が痛みました・・

前橋にいたころも、この“お客様メール”はありましたが、来場者数・環境の違いもあり、いただく量が半端じゃありませんでした・・

お客様メールをいただく度に、私は事実確認を行い、謝罪の返答をしていきます。

もちろん、本社を含む上司たちも、このお客様メールは共有している為、「支配人は事実確認をして、お客様対応するように!」と指示が来たり・・

「ここ数日、同じような苦情が寄せられております。もう一度オペレーションを見直し、対策を報告ください」など・・

見えないお客様の対応を毎日繰り返すことになります・・

メールの内容について圧倒的に多いのが、“従業員の対応”に対する苦情でした・・

(そんなに悪いか・・・みんなしっかり接客していると思うけどな・・)

しかし、これだけ毎日のように苦情を受け続けると、徐々にアルバイトたちを疑うようになっていきます・・・

(いったい誰なんだ??)

そう思っているうちに、1人・・また1人と、アルバイトが退職していきます・・

各部門主力として貢献してくれていた、アルバイトたちも次から次へと退職・・

「支配人、お店が回らなくなります・・」
『しょうがないだろ!!辞めたいやつは辞めたらいいんだよ!!!』
「?!!」
『これからも新人アルバイトをガンガン投入するから!!』

今のメンバーがダメなら入れ替えれば良いのだ!!
代わりはいくらでもいる!!!

私は積極的にアルバイト採用を進めていく。

しかし、うまくいかない・・・

『ど、土日出れない・・』
「はい・・土日はイベントに参加してまして・・」
『週2希望??』
「そうですね・・かけもちでやろうと思ってまして・・」

そもそもシフトの条件が合わない・・・

それでも、新しい風を吹き込ませていけば環境は変わっていく!
そう信じて、新人アルバイトの採用を続けました。

しかし、この負のスパイラルから抜け出すことは出来ませんでした・・

そしてある日、

『支配人、おまえ、アルバイトがどう思ってるか知ってるか??』
「いや・・よくわからないです・・」
『まぁ、これは一部の声だけどな・・“支配人はずっと事務所にいて助けてくれない”とか、“人が少なくて大変だったのに事務所に行くと支配人が談笑しててすごく嫌だった”だとさ・・・』
「そ、そうですか・・・」

久保田次長がいったいどこから入手したかわかりませんでしたが、私はその声を疑うことなく、受け止めました・・

(おれが何でずっと事務所にいると思ってんだよ!!おまえらの尻ぬぐいをしてるんだぞ!!)

私とアルバイトたちにはさらに溝が出来ていきます・・

その年の支配人会議で、

『おまえ、だいぶ評判悪いみたいだな・・』
永井副部長が冗談じみた感じで私に声をかけてくれました・・
「そ・・そうみたいですね・・・」
私の唯一の強みである元気はもうそこにはありませんでした・・

『・・・・・前橋の頃と今とで、おまえにとって一番の違いってなんや??』
永井副部長は私の表情で何かを察したのか、突然まじめなトーンで聞いてきた。
「・・一番はアルバイトですね・・前橋と全然違います・・」
『どんなふうに??』
「表裏があるというか・・表向きはちゃんとやってるように見えるんですけど、実はそうではない・・」
『何でそれがわかるの??』
「私が見ると普通なんですよ!でもお客様からの苦情メールが毎日のように来ますし・・私のいないところで不満をもらしているようですし・・」

『まぁ、たしかにそういった違いはあるかもな・・でもな谷崎、板橋は板橋の良さってもんがある!おまえはそれを見つけて伸ばしていかんと!』
「わかりました・・・なので今新しいアルバイトをどんどん採用して、入れ替えていこうと思ってまして・・」
『だから、前橋と同じ考え方じゃあかんて!』
「だ、だめですか・・」
『板橋は都心に近いんやから、仕事先なんてうち以外にもたくさんある。時給もうちより高いところもあるしな、そんな簡単に入れ替えなんて出来んひん!』
「たしかに・・土日出れないとか、週2希望とかばっかりなんですよね・・」
『じゃあ別の方法にせな!!』
「別の方法ですか・・・」

結局私に、答えは見つかりませんでした・・
ただ1つわかったこと、入れ替え作戦はダメだということ。

やっぱり今いるアルバイトの意識を変えていかないとダメなのか・・

でも、直接言うと逆効果になるしな・・

『青田さ、フロントのあの子に、案内するときこのPOPを使うように!って伝えておいて!』
「わかりました!」
『上原、アミューズの高村さんの身だしなみ、あれは直さないいけないからね!』
「そうですね!了解です!!」

私は社員を通して、アルバイトの指導をするようになっていきます。

当時、全く余裕もなく、終始ピリついている私についてきてくれた社員たちには本当に感謝です・・

俺がやってきたんだからおまえらもやれ!!

着任して約1年、私の身の周りで変化が起こります。

上司が変わり、周りの社員も変わっていきます。

板橋店の売上は、全店舗の中でもトップクラス、ということもあり、各社員たちも、今後支配人になっていく有望な社員たちで揃えてくれておりました。

そして私は、支配人として初めて“新卒社員”を受け入れることになります。

初々しい4人、彼らにとって私が人生初の上司。

『よろしくお願いします!!!』
(みんな真面目そうでいいね!!!)
「よろしく!!」

しかし何度も記しますが、私には余裕がありませんでした・・・

『何で出来ないの??俺が新卒の時はもう出来るようになってたぞ!』
『メモとってる??もう学生じゃないんだぞ!!』

(早くお店の一員になってほしい!)
(早く学生気分をなくしてほしい!)

そう思い、彼らに対して、私は厳しく接していきました。

『俺が新卒の時は・・・』
毎回自分が新卒の時のことをネタにして、指導をする・・

(ベーシックをギリギリ終わらせた分際で何を言っているのか・・)

今思えば非常に恥ずかしく、情けない言動でした・・

『ぼく、学生時代からずーっとラウンドワンが大好きで!』
「そうなんだ~」
『だからラウンドワンに入社出来て本当にうれしいです!!』
「奥村くんは実家から通勤してるの??」
『いえ、一人暮らしです。実家は茨城なんですよ・・』
「じゃあ学生の時からこっちに来てるってこと??」
『ラウンドワンに入社したくて引っ越してきました!』
「どういうこと??」
『実家の近くだとお店が1つしかないですけど、板橋の近くに引っ越してくれば、通勤出来るお店がたくさんあるので、内定もらいやすいかな・・って』
「それだけで引っ越したの??!すごいな!!!!」

奥村くんのラウンドワン愛はすごいものでした・・
そして学生のりも一番すごかった・・

「もう君らは社会人なのだから!学生気分が出ていたら厳しく指導する!それは理解しておくように!」
『わかりました!』

事前に通告していたということもあり、誰よりも学生気分が抜けない奥村くんは誰よりもたくさん指導を受け、誰よりもたくさん涙を流します。

そして誰よりも早く成長していきました。

彼は半年足らずで、1人でもお店の運営を任せられるようになっていきます。

たまたま奥村くんのように成長したケースもありますが、自分自身と比べたり、厳しい指導というのは大きな間違いだった反省しております。

1人1人とじっくり話をして、“1年目は社会人としてお店に慣れていく期間”と考えて接してあげていく必要があるのだと思っております。

続く・・

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