谷山走太

小説家/ 『終末世界のプレアデス』(電撃文庫)/ 『負けるための甲子園』(実業之日本社…

谷山走太

小説家/ 『終末世界のプレアデス』(電撃文庫)/ 『負けるための甲子園』(実業之日本社文庫)/ 『ピンポンラバー』(小学館ガガガ文庫)など

最近の記事

「才能と夢のありか」第3話

 宗介が美大の受験に落ちた。  美大や芸大は一浪二浪が当たり前の世界。この数ヶ月で宗介の絵は見違えるほどよくなったが、受験者はみんな何年も絵のことだけを考えて生きてきた人間だ。  不合格の連絡を美里が受けたときは、もっと他に教えることはなかったかと自分を責めたが、一方でこうなることも覚悟はしていた。  心配なのは宗介の方だった。  常に前向きな彼でも流石に受験に落ちたことはショックだろう。しかもライバル視しているアイナは東京にある国立の芸大に一発合格していた。職員室では教

    • 「才能と夢のありか」第2話

       夏のうだるような暑さが残る二学期。  夏休みが終わると高校三年生は一気に受験モードに突入する。三年生の教室ではピリピリとした空気が流れはじめ、それは受け持つ教員たちも同様であった。  他の生徒の勉強とは少し違うが、橘も美大受験に向けてモチベーションを高めていた。  一学期は保健室で橘の絵を見ていたものの、夏休みに毎日保健室登校をさせるわけにもいかず、課題として毎日一枚デッサンを描いたものをメールで送ってもらいアドバイスしていたのだが、橘には物足りなかったようで課題以外にも

      • 「才能と夢のありか」第1話

        【あらすじ】  主人公の水瀬美里はかつて漫画家を夢見ていたが自分には才能がないと諦めて、現在は高校の養護教諭をやっていた。  生徒にSNSの危険を周知させるための漫画を描いて配ったところ、三年生の男子、橘宗介から「俺に絵を教えてほしい」と頼まれてしまう。宗介は将来漫画家になることを夢見て、進路は美大を目指していた。彼の熱意にあてられて美里は協力することに。二人の美大合格のための特訓が始まる。  そんな二人の前に転校生で絵の天才、凜堂アイナが現れて圧倒的な才能を見せつけていく。

      「才能と夢のありか」第3話