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「ケイコ 目を澄ませて」(三宅唱)


noteに掲載してる映画レビューは、Instagram及びFacebookからの転載です。

かつて、ロベール・ブレッソンという映画監督がいました。寡作ながら伝説の名監督と言われる人。濱口竜介監督は「ドライブ・マイ・カー」を作る時、主演の西島秀俊にブレッソンの本を渡したらしいです。

私は昔観た映画をあまり細かく覚えてなかったりするのでブレッソンの映画について語れませんが、今年日本で未公開だったブレッソンの晩年の2作品が公開されました。「湖のランスロ」と「たぶん悪魔が」。

このうち、「湖のランスロ」を観ました。まさに活劇のお手本といった感じの映画でしたが、ある特徴がありました。騎士道の話なんですが、物凄い音がしてるのです。鎧とか弓矢とかが響く音が強烈なんです。映画は、怒涛のような演出の後、唖然とするほどアッサリ終わります。

「ケイコ 目を澄ませて」の主人公は、耳が聞こえません。しかし、この映画は驚くべきことをしてます。ケイコの周りは音だらけ。ジムの中、試合の中、踏切、電車の通過音、家の中でさえ。

観ていると、自分がケイコになった、ケイコの立場になってしまったかのような錯覚を感じました。もちろん、実際にはそんな経験は私はできないから、錯覚しただけ。

今年のアカデミー賞作品賞を受賞した「Coda コーダ あいのうた」は劇場公開時に観ました。評判は良いらしいし客入りは良いらしいし、私は悪くも無い映画にブーブーと文句を言うのが嫌いだから何も言わなかったんですが、ある疑問を感じました。終盤の無音になるシーンに、違和感を感じました。

「ケイコ 目を澄ませて」は、それと逆のことをしてると思いました。もちろん、やり方としては「Coda コーダ あいのうた」のほうがウケやすいし分かりやすいんでしょうけど。

主演の岸井ゆきのが素晴らしく良い。目が良い。こんな目つきの演技、珍しい。あと、三浦友和って不思議なくらい昔から出演作に恵まれてる気がします。

運動の映画でもあります。ショットが躍動し続けてます。踊るような、リズム。

公開前を考慮して、ストーリーに触れずに書きました。12月16日公開。


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