見出し画像

//

何かを失くした。おそらく、作品が入ったスーツケース。どこで手放したかすら記憶になく、いちばん最後に訪れた図書館に行き彷徨う。平台には学生や若い作家の平面作品が積まれている。凧、カイトのようなものが描かれた絵画に惹かれる。エリーという作家。

まもなく閉館である旨のアナウンスが流れる。急がなければならないが、探しものそっちのけで目に入る本が気になってしまう。

そのうちに、スーツケースは電車の網棚の上に乗せたまま忘れてきた気がしてきた。はじめからそうとわかっていたようにも思う。あの電車の終着駅はどこか考えているうちに目が覚めた。


黄色い手袋と黄色いマフラー。揃いで買ったものなのか、全く同じ色味、素材だった。洒落ているとは思えないが、おまじないのように奇妙で、魅力的だった。


進行方向が垂直に交わり、ぶつかりそうになって、目を合わせて互いに軽く会釈し、歩き去った。


右肩に帯が走るように、つるつるとした面ができている。いつもそこに重い鞄をかけているためだろう。皮膚にはどんな痕があるだろうか。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?