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前の恋人と話がしたいのだけれど

イスラエルではドライフルーツが手軽に手に入ります。大きなスーパーに行くと、必ずと言っていいほど量り売りで販売しているので、好きな量だけ買うことができます。種類も豊富で、レーズン、パイナップル、あんず、キウィ、デーツなど、たくさんあります。私のお気に入りはいちじくで、濃厚な甘味と中のプチプチとした食感が大好きです。

美味しくて健康的なドライフルーツ、難点なのは、あまり安くないということ。クッキーやポテトチップスなど、他のお菓子に比べればという話ですが、それでもあまりバクバクと食べられるお値段ではありません。いちじくは特にドライフルーツの中でも高価な方です。なので私は一日に一つとマイルールを決め、ハムスターのごとく、ちまちまと一つのいちじくを大切に食べています。この食べ方に慣れると、普通に食べることができなくなり、甘味も強いので、むしろこのくらい少しずつ食べるのが丁度良くなりました。

先日、パートナーの両親が私たちの家に遊びにきました。少し寄って話していくということだったので、コーヒーと家にあったクッキー、胡桃とカシューナッツ、レーズンといちじくのドライフルーツを出しました。両親ははこの日、ハイキングの帰りでした。イスラエルを縦断するトレイルを少しずつ歩いて踏破を目指しているそうです。年齢を全く感じさせないパワフルな二人、その日のハイキングの話、一緒に歩いた人の話、近況など、話が止まりません。ハイキングの後でお腹も空いていたのでしょう、私たちが出したおやつへの手も止まりません。

楽しそうに話をしながら、彼のお父さんがいちじくに手を伸ばしました。するとガブっと半分ほど豪快にかじり、すぐにそのまま残りを口にし、一つのいちじくを5秒ほどでたいらげてしまいました。その後も2つ目3つ目と同様にパクパクっと食べ、合計で5つほどたいらげました。私がちまちまと食べるいちじくを、二口で一気に5つも食べている!私の食べ方との違いの大きさに、一人で笑ってしまいました。

そういえば、似たようなことが前の彼氏ともありました。

まずは明太子の話から。明太子って、普通どうやって食べるのでしょうか。私の家では、箸で少しだけ取り、それをご飯の上に薄く伸ばして食べます。親にこうやって食べなさいって言われた訳ではないのですが、家族全員そうやって食べていたし、塩辛いし、たまにしか食卓に出ないから大事に食べようと、何年もこの食べ方で明太子をちまちまと食べていました。

大学生の時、当時の彼氏と明太子食べ放題のお店へ行きました。各テーブルに明太子がたっぷり設けられていて、ご飯も食べ放題でした。ただ、私は食べ放題といえども、自然といつものように、ちまちまと一つの明太子をご飯に薄く伸ばして食べていました。一方彼は、箸で掴んだ明太子を、ご飯を経由することなくガブっとかじって食べるではありませんか。私はその食べ方に爆笑してしまいました。

「そんな一気に食べて塩辛くないん!?」
「それが美味しいんやん」
「いつもそうやって食べるん!?」
「分からんけど、食べ放題やねんからいっぱい食べな」

私も食べ放題だからと、贅沢にかじってみましたが、やっぱりご飯と少しずつ食べる方が好きで、ガブガブと食べることはできませんでした。同じ日本人で、同じ大阪で育ち、年齢も変わらないこの人と、こんなに家庭の食文化が違うのかと、本当に面白かったのです。

その彼とは4年ほど付き合っていました。服やモノの好みが似ていて、買い物を一緒にするのが楽しかったです。大学生だったので時間に余裕があり、たくさん旅行もしました。クリエイティブなセンスがいい人で、色々な話をしました。「もしペンネームで活動するとしたらどんな名前にするか?」みたいな話をしている時に、彼が「『谷村ららら』は?」と思いつきました。私はその言いにくさと、ひらがな3つ並びで可愛いのがすごく気に入り、このnoteを始めたときには、すでに彼と別れていましたが、名前は迷わず「谷村ららら」にしました。

時々、久しぶりに彼と話がしたいなと思います。話したいことはたくさんあります。でもどうやって連絡したらいいのでしょうか。何年も会っていない人に連絡するだけでもハードルが高いのに、元恋人となると更に難しいです。未練があると思われるかな、恋人がいたら元カノから連絡が来たらややこしいかな、まず彼は私と話したくないかもしれない。駅でばったり会ったりできればいいけど、私は外国にいるし、そもそも彼はまだ大阪にいるかどうかも分からない。

人との関係性に「家族」「友達」「同僚」と名前がありますが、「恋人」は別れると「元恋人」になるわけで、「友達」にはならないみたいです。少なくとも私はそう感じています。友達と思い出話をするように、彼とも当時の楽しかった話がしたい。彼との思い出話は、彼としかできません。あの楽しかった時間が、まるで存在しなかったようになるのは、すごく残念です。

今でなくても、いつか彼とは話がしたいし、そう思える人と出会えたのは、幸せだったなと思います。

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