昼のコラム「たばこにする」
書く場があって嬉しい昼時間
「おーい、こっちさ来てたばこにするべ」
ばあちゃんがたばこにするべ、と声をかけ、家族全員の手が止まり、皆で田んぼの淵にビニールシートを敷いて、おにぎりと、小さなカップラーメンを食べる。
たばこにする、は煙草を吸うという意味もあるのだけど(一服する意味)、東北の方言(岩手県や宮城県の一部)では、休憩する、休む、という意味です。
春の田植え、秋の稲刈り、小さい頃は家族総出でお弁当を持って出かけ夕方まで農作業でした。昼ごろ、祖母が「たばこにするどー」と声をかけるのでした。
ゴールデンウィークはほとんどなくて、私や妹たちは付いて行ってお手伝いしたり、畦道で遊んだりそんな思い出があります。長靴を履いて、上下ジャージで走り回ったりカエルを捕まえたりしていました。気が向けば、苗の箱を洗ったり、運んだりのお手伝いもした。
その代わり、今思えば、お米が育つ過程を側で見れたことはとても貴重です。お米は発芽させるまでとても大変で、田植えが終わるとホッとして、日照りの夏は水に苦労し、長雨になれば、お米の病気の話が並ぶ。そんな感じだった。農家の子供達(昔)はみんなそうなんじゃないかな。
どこかに行楽したり旅行もあまりなかったけど、なぜか、みんなでたばこ、は鮮明に残っている。みんなでたばこ、はすごくかけがえのない時間で楽しかったなあと思い出す。
思い出とは案外日常の他愛もない記憶の方が鮮明に残ったりする。そして、残る記憶はぽわんとあったかくなる、そんなものが多い。ひいおじいちゃんにお遣いを頼まれ、お駄賃をもらったり、妹たちとケーキを分けて喧嘩したりなどの些細な思い出だ。ジブリの「おもいでぽろぽろ」もそんな理由で結構好き。
たばこにする、と言われたら私は小さいカップラーメンとおにぎりを思い出す。娘にいまそう話しかけたら「は?」って言った。
たばこにする、の方言は、なぜか岩手県と出雲で使うらしい。とても不思議。
そろそろ、たばこにして、一息入れたら
午後も良い午後にしてくださいね!
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