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人の気持ちなんて、そう簡単にわかるもんじゃない。

僕には10年来の友達がいる。付き合いも長いし、お互いだいたいのことは理解しているつもりだった。けどここ数年になって、そう簡単に人の気持ちが理解できる訳ではないと、思い知った。

大学時代からの友達で、お互い社会人になっても定期的に飲みに行ったり、お互いの近況を話したりする関係。

付き合いも長くなって、だいたいのことは知っているつもりではあった。だけど、僕にはどうしても理解できていない部分があった。彼は花粉症で、それも結構重症なレベルだってこと。

花粉が舞い散る時期になると、普段アクティブな彼があまり家から出たがらなくなる。借りた本を返しに行く約束をして、彼の家を訪れたときには、本の厚み分しかドアを開けてくれなかった。少し花粉が収まっている日は家に入れてくれるけど、花粉落としスプレーを全身にまんべんなく噴射された。

家に入ったときのティッシュの散乱具合や、真っ赤な目を見て、辛さはわかっていたつもりだった。でも、本当の意味で彼の気持ちを理解できていたわけではなかったことに、あとから気が付いた。

元々僕は花粉症とは無縁の立場にいたんだけれども、数年前から花粉症になった。とんでもなく目がかゆい。悩んだ末に1,000円以上する高級な目薬を買った。鼻水が止まらない。鼻をかみすぎて鼻が痛い。高い保湿ティッシュを買った。甜茶がいいと聞けば買いに走った。乳酸菌がいいと聞けば、ヨーグルトやキムチなどをよく食べるようになった。

花粉が飛ぶ時期は、できるだけツルツルした素材の上着を選ぶようになった。肌寒くても、ゴワついたウール生地の服は着たくなかった。そもそも家から出たくなくなった。家にいたって花粉症は辛いと知った。

そうなって始めて、「ああ、あいつはこういう感じだったんだ」と理解できた気がした。

「相手の立場になって考えましょう」「相手の気持を考えましょう」なんてよく言われるけど、そう簡単にできるものじゃない。僕は10年来の友達のことですら理解できてなかった。それより付き合いの浅い人や、会ったばかりの人の気持ちなんて、当然わかるわけがない。

何より、自分がまったく同じ体験をしていても、感じ方は人によって違うかもしれない。そんな風に考えていくと、どうあっても人の気持ちは理解できない、という結論が見えてきてしまうが、それも少し寂しい。

「相手の気持ちを理解しようと、努力すること」はできる。想像力を働かせたり、本を読んで学んだりすることで、少しでも相手の気持ちに寄り添うことはできる。

当時の僕は、花粉症に苦しむ友達の姿を目の前にして、辛そうだなーとは思ったけれど、理解するための努力はしていなかった。

人の気持ちなんて、そう簡単にわかるもんじゃない。だからこそ、理解してあげたい相手には、できることからやってみよう。

鼻をかみながら、そんな風に思った。今年は一段と辛い。



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