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後藤さんとラーメンのこと(20220409南九州新聞掲載)

NPO法人「ボラネット」の理事長であった後藤さんが、昨日亡くなったという連絡があった。私が前の団体にいた時からだから、もう7年くらいの付き合いだっただろうか。

彼は、若いころにバイクの事故に遭い、脊椎を損傷して下半身と上半身の多くにマヒが残り、それでも寝た状態の車椅子で移動をして精力的に動いておられた。ご自身も身体障がいがありながら、行き場のない、ゆえに引きこもりがちな身体障がい者のために、近年はコロナで開催できなかったものの、毎年花見を行い、毎月交流会を行い、映画に行ったりカラオケに行ったり水族館や動物園に行ったりという企画を立て運営していた。

また、「障がい者が外出をすると、人に迷惑をかけてしまうから」と言う障がい者の気持ちを汲み取って、福祉タクシー事業もおこなっていた。事務などは完全にボランティアで、福祉タクシーチケットでの収入をほとんど全部運転手さんにお渡ししていたので、毎年赤字だったけれど。

歌を歌うのも好きで、中央駅でおこなわれた「バリアフリー音楽祭」に、仲間と一緒に出演して、サザンの曲を歌っていた。私が見に行くと、恥ずかしそうにしていたけど。

ときおり、ひだまりカフェや伴走型支援者養成講座にも来てくださり、ご自身が介護を受ける身でありながら、利用者さんのため、障がいを持つ仲間のために、どんな代表でいることができるかを考えてこられた方でもあった。ひだまりカフェに来てくださったときに、隣の県民交流センター中庭でマルシェがやっていて、私が忙しくて動けなかったもんだから、「たこ焼き買ってきて」と頼んで買いに行かせたのも、今となっては思い出だ。「いくらでもパシリに使ってください」って笑ってた。

ラーメンが好きで、会うと一緒にラーメンの話ばっかりしてた。車椅子でも入ることができるラーメン屋さんの話。新しいお店の情報にも詳しく、「でも、車椅子だと入れないんですよ」と寂しそうに言っていた。

最後にお会いしたのは、今年の2月くらいだっただろうか。県民交流センターの入り口付近で、介助の方と一緒にいて、持病もあり去年くらいから、あまり体調が良くないと聞いていたから、お会いすることができて本当にうれしかった。やっぱり、ラーメンの話をして、またラーメン食べに行こうねって話した。

やっぱりあの時、「今からラーメン食べに行こう」って言えばよかったのではないかと思っている。取り返しがつくことでもないんだけど。

これから、私が彼にできることといえば、彼が支援した仲間を支援するために、彼が行ってきた事業を、いくらかでもうちで引き継いでおこなうことだろうか。もちろん、支援を受ける方々がそれを望めば、ではあるけれど。

後藤さん、私はあなたに会うことができて良かった。
私はこれからも、あなたの分もラーメンいっぱい食べるよ。

ありがとうございました。

毎年、福祉プラザでおこなっていたクリスマス会での後藤さん。

田中さん(ジョンさん)と一緒に歌う後藤さん。

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