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能登から認知症の父がやってきた(16)

生まれつきではないが、母は耳が聞こえない。
長年補聴器をつけてきたが、80を過ぎた頃から、補聴器を変えても聞こえなくなり、ほぼ聴力がなくなってしまった。
認知症の父とのコミュニケーションは決してうまくいっているわけではないが、耳が聞こえなくてよかったと思うこともある。

メールやLINEができれば、離れていても様子を知ることができたのだが、母にスマホを与えて何度も教えたが、覚える気がないのか返信がなく、帰省するとスマホはホコリをかぶって電源が切れたままになっていた。
かと思うと、洗濯機は最新型でもちゃんと使える。洗濯好きな母にとってなくてはならない物なのだろう。歳を取ると、必要なものしか脳は反応しなくなるのだろうか?ある意味正しいのではあるが。

耳が聞こえない母とのやり取りはiPad miniでアプリを使っている。最初はポケトークをレンタルして半年ほど使ってみてもらったのだが、認識が悪いらしく不評だった。2年くらい前なので、最近の認識はどうかは分からないが。その後、地元の薬屋で聞いたという「Vosual」というアプリがよくできている。通信なしで認識するので、Apple社の音声認識を使っているのだと思うが、ものによっては方言もうまく訳してくれる。何度も同じ方言を使っていると学んでいるのか?でも通信してないし、アプリの中に学習機能があるのかなぁ。それとも錯覚?もちろん完璧ではないのだが、意味が分かる程度には認識してくれる。無料だし、画面も大きく何よりシンプル。デジタル音痴の母でもすぐに使えた。はじめはiPadのスワイプに苦労していたが、必要不可欠で自分で欲しい思った物には積極的だった。

よかれと思ってやってあげたことが、役に立たなかったり、こう思っているだろうと、先回りして気をきかせたつもりが、本人はそんなこと思ってなかった。などなど。最近になって分かったことが多い。当たり前だが、親だけど私の思い通りにはならないし、子供だけど親の思い通りにはならないのである。

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