【FC町田ゼルビア】いわきFC戦 【2023 J2第6節】
いわき戦のスターティングメンバーにはオーストラリア代表に選出され不在のミッチェル デュークに代わりに藤尾翔太が起用された。他は前節と同じメンバーとなる。
天候はやや強めの雨。スリッピーなピッチコンディションで技術的なエラーやパスなどのプレースピードに影響が出る。チームの真価が問われる状況でキックオフを迎えた。
さっそく振り返る…が。
何だよこのいわきの七面倒臭い戦術はよ…
今シーズンいち苦戦したわ…
こんな戦術をJ2に持ち込んだクラブは謝罪すべきだ…
どうも大変申し訳ございませんでした。
対ラングニックスタイル+悪天候の状況下で町田がやれたこと
町田サポはこの戦術を遺伝子レベルで知っている。
また、現代ではラングニック派のスタイルとして整理されている。
いわきはボール保持でとにかく相手の背後を目指す縦志向のチームだ。縦という括りでは黒田ゼルビアと志向が似ているとされるが構造はかなり違うと言える。
ベースとなるシステムは4222。相手陣内ではセンターハーフとインサイドハーフがボックスの関係となる。チーム全体で2レーンほどの狭い幅を共有し、流動性を加えながらボールを前進させてくる。
その状況下においてボール保持・非保持の概念を区別する意味は無い。222の三層構造(+1)は保持ならばワンサイドあるいはセントラルなオーバーロードアタックを仕掛ける。非保持ならばゲーゲンプレス、セカンドボール回収、そしてスローイン守備でボールにアタックし即時奪回を図る。ボールを中心とした各選手の役割は整備されていた。
町田は自陣の低い位置に押し下げられる状況が続く。ビルドアップユニットから縦パスをエリキと藤尾に供給するも、いわきの最終ラインで跳ね返される。
町田のセカンドボール回収の機構はいわきの様な多層ではなく一層だ。サイドチェンジを狙うために逆サイド側のサイドハーフがカウンターポジションを位置取る駆け引きをしていた。そのため回収リソースが不足し困難な状況が続いた。
ラングニック戦術に対するメタ戦術のひとつが素早いサイドチェンジである。ただし下位のカテゴリでは不正確で届かないことも多い。それを見越しての圧縮戦術ではあるのだが、町田の選手たちの質ならばどうなるのか期待をしていた。
しかし天候が悪く、そのような展開は半ば諦めなければならなかった。サイドにボールが渡ってもプレースピードを上げられないため、大外からの展開は対面するサイドバックに前進を止められてしまう傾向にあった。
かくして町田は我慢の展開を強いられる。
町田はラインを下げていわきのオーバーロードを跳ね返す。守備陣のシュートを撃たせない、クロスに触らせない守り方が頼もしい。全員良かったと思うがカルロス グティエレスの冷静な守備対応はすごかった。
また、ポープ ウィリアムのスイーパー能力はJ2のレベルを超え始めた気がする。たまにインスタにアップされるパーソナルトレーニングの成果が出ているようで、浮き球の処理能力も上がってきた。特に後半のアディショナルタイムにクロスをキャッチして相手の攻撃を終わらせたプレーは素晴らしかった。
町田は低い位置からのボール保持で外循環と縦のボールを織り交ぜながらいわきの体力ゲージを削る作業を増やした。隙あらばクロスを入れるがゴール前の人数不足が目立った。なおいわきは撤退守備では442のブロックを敷く。
町田はハーフタイムに髙江麗央に代えて宇野禅斗、髙橋大悟に代えて沼田駿也を出場させ、平河悠を右サイドに配置し、ボールの回収とサイドからクロスを送り込む意志を強めた。撤退したいわきはサイドハーフに2人で対応し簡単にクロスを上げさせてはくれなかった。
雨天ゲームは続く。スコアを動かせないままパワーサッカーを続けてきたいわきは60分辺りから無理を通せなくなる。ようやく五分の展開まで持ち込んだ町田は71分に藤尾→荒木駿太、85分にエリキ→黒川淳史を投じ前線を活性化させる。
そして87分、自陣からのロングボールを発端としたクロスボールを黒川が押し込み試合を決着させた。
ロングフィードを放つ池田樹雷人の下に届いたボールは、相馬ゼルビアも苦手としたスローインからのU字展開で渡ってきたものだった。上下左右へと揺さぶられたいわきはゴールエリアで空間を守るエラーを起こし、黒川のマークを外してしまっていた。
雨天で行われた縦志向大会の勝負の行方は、持っている交代カードと体力のダメージレースで優位性を示した黒田剛監督に軍配が上がった。
なお、アディショナルタイムに深津康太を投入し5バックでクロージング作戦で試合を終わらせるが、その後に深津がミョンヒさんとポジションの議論をする姿が映し出されていた。
まとめ
スター選手を保有しないいわきが(手前味噌ではあるが)スター選手を多数抱える町田を最後の最後まで苦しめたことに敬意を表したい。
かつて相馬ゼルビアは内容が地味だと言われたことがある。しかし同じ系譜なはずの村主いわきは地味だっただろうか?
むしろ勝った我々の方が見ていて地味だった。では内容はつまらなかったか?そんな事もなかったはずだ。
我慢の末、終盤で形勢をひっくり返した采配での勝利。そしてチーム事情で出場機会を与えるのが困難な黒川がゴールを決めて一目散にベンチに喜び駆け寄る場面。心を打たれた人は多いだろう。
チームのこと、サッカーのこと。知れば知るほど、信じれば信じるほど面白い、または悔しい。そのような肉薄したゲームだったと思う。
ただこのスポーツ。
ハマればハマるほど分かんねえわ。
貴方の心の中にいる神に祈りましょう。
それでは🙏
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