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ボンボンショコラという厄介者

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いきなりタイトルから離れますが、チョコレート作りの【テンパリング】という工程をご存知でしょうか。
大理石などの台上にチョコレートを広げ、両手にパレットなどを持ってリズミカルにコネコネするあれの事です。

チョコレートの温度を均一に下げながらココアバターの結晶を整え、表面の光沢や口どけを滑らかにするための冷やし固める前に行う大切な工程のこと。
ココアバターには融点が異なる結晶形が複数あり、それぞれ溶ける温度が異なります。これを適切に行わないと粗大な結晶になり見た目だけでなく味わいも損なわれてしまいます。
我々ショコラティエにとって基本技術ですが、チョコレートをあまり扱ったことのないパティシエには苦手意識を持つ人も多いようです。

テンパリングは温度管理が要で、実務上では勘に頼る部分が結構多くあります。不慣れなうちは失敗することもあり、練習を重ねて勘所を養うことが必要です。失敗すると時間を無駄にするばかりか材料もゴミにしてしまう場合も。
その工程を自動で行ってくれるのが「テンパリングマシン」という写真の機械です。チョコレート工場では当然の機械ですが、テンパリングマシンを備えている街のショコラトリーは多くありません。大半のお店が手作業で行っています。

Concheではこのテンパリングマシンとエンローバーの機能を有する機械を2020年の店舗移転のタイミングで導入しました。
エンローバーとは中核をチョコレート包み込む機械のことです。

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コンベアで動しながら、テンパリングされたチョコレートの滝を潜り抜け、風で余分なチョコレートを落としていく一連の作業を連続的に行う機械です。
このようにチョコレートで覆われたものを「ボンボンショコラ」と呼びます。アルコール入のものに限定されず、生チョコのようなガナッシュやナッツをペーストにしたプラリネなど様々なものを総括して呼称しています。

このエンローバー、当然ながらテンパリングされたチョコレートを使うためテンパリングマシンと一対になっていることがほとんどです。
先にテンパリングマシンを所有するショップが多くないと触れましたが、加えてこのエンローバーも持っているところは更に少なくなります。
実はチョコレート菓子の中でもボンボンショコラが高額である理由はここにあります。

エンローバーがないショップが自前で製造する場合は手作業です。1粒1粒、テンパリングしたチョコレートに沈めては余分なチョコレートを落として飾り付けをしています。
この作業にかかる手間と時間が商品代となっているのです。他の商品よりも高級なチョコレートだから良い材料や原料を使っているとは限りません。
これが厄介者なのです。

実は原料原価ではタブレット(板チョコ)の方が高く同じ値段で比べた場合は量も多いのです。
値付けの背景を知らないお客様はタブレットよりもボンボンショコラの方が価値が高いと感じているように思います。
海外ブランドや国内の有名ブランドでは当たり前のようにボンボンショコラがメインを張っていて、タブレットはサブ扱いです。
なぜならばタブレットはクーベルチュール(=原料チョコレート)を製菓材料専門のチョコレートメーカーから購入したものを溶かして作るため、ブランドごとの特色や味の特徴を出すことが難しいからです。
だからボンボンショコラで差を表現しています。

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我々ビーントゥバーメーカーはそのチョコレートを原料《カカオ豆》から作っています。カカオ産地に焙煎やコンチング、配合比率から砂糖の種類まで独自のオリジナルチョコレートです。クーベルチュールを購入してチョコレートを作っているショップでは味わえない唯一無二のチョコレートを作っています。

高級ブランドを中心としたボンボンショコラ>タブレットのイメージを覆すことができない現実に悔しさを抱えつつ、ボンボンショコラの特別感は越えられない壁があると認めざるを得ません。

なのでテンパリングマシン+エンローバーを導入し、いまではカカオ豆から作るボンボンショコラを沢山作っています。
機械を活用することで無駄に人件費も発生していません。
カカオ豆から作っていると考えると、恐ろしく安価で高コスパなボンボンショコラを販売しています。
抹茶やほうじ茶など静岡の素材のものも、産地ごとのカカオの味わいも楽しめるアソートセットです。
ぜひ買ってください。これが伝えたかったことです。笑
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