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さよなら、男社会 著:尹雄大 読んでからの雑感

さよなら、男社会 著:尹雄大 読んでからの雑感
橙書店の久子さんから紹介された本。

ある日、俺はカウンターで
「中学の頃から黒人音楽が好きで差別のことも調べたし、金城一紀のGO(コリアンジャパニーズの話)もよく読んだ。そのころちゅらさんもあっていて興味をもったので日本が沖縄にした仕打ちもわかっている。マイノリティのことわかってるほうだとおもいます」というようなことを話した。
久子さんに「よく考えてるのね」とか言ってほしかったんだとおもう。
久子さんは諭すようにこんな質問をした。

「人が生まれてから1番最初にする差別って何か知ってる?」
「ん〜・・・部落差別っすか?」

「男女差別よ」

この後俺は必死に日本は経済的にすすんだ国の割にはフェミニズムが遅れてることだとか、地図が読めない女性の割合が多い国は男尊女卑の傾向が強いだとかしのごの慌てて話した気がする。こういうのを恥の上塗りというのだと後で思い出して気づいた。恥ずかしい。
わかっていると言いながら差別を遠くの出来事としてとらえていた。

1番身近な、被差別者を認知せず過ごしていた、なぜ気づけなかったのか。
差別を自分も犯していたのだろうか。

その疑問に答えをくれたのがこの本だった。

俺たちが何も疑わず’社会‘と読んでいるものは、18歳から65歳の異性愛者かつ健常者の男性が作った’(男)社会‘だ。
感情を正当化するための主観的な区別を差別という。
著者が示す差別の定義はわかりやすい。
著者は男性の立場だからこそできる‘参与観察’を通して男性性の成り立ちを示してくれる。
俺が意識せずに行ってきた振る舞いも知らずのうちに培われてきた男性性のあらわれだった。無知さに気付けた。

著者が主宰する読書会での男性の発言がとりあげられていた。
『82年生まれ、キムジヨン』という女性の生きづらさを描き出した小説を題材とした回のこと。
「自分がこれまで自然と身につけてきた考えが女性に対して抑圧的ではないかと思うと怖い。何が問題かその都度教えて欲しい。」
そう発言した男性は、女性から「どうしていつまでも教えられる立場にいると思えるのですか」といらだたれる。予想と違う反応に驚き顔をひきつらせた男性を主宰者である著者は居心地の悪さを感じるべきだろうとそのままにする。身につまされるおもいだった。

公の場で発言しようものなら「何もしらないから教えてやろう」と侮った態度をとられる女性からすれば、
「こちらは知らないのだから教えられて当然」という緩んだ態度をとる男性に対して、
「馬鹿にするのもいい加減にしろ」以外には行きつかないだろうと著者はしるす。

行儀の良い発言者なら思いつくこの言葉は、知らずのうちに培った男社会の処世術を素に自動生成されるのだろう。男社会は垂直関係が強い傾向があり‘教えてください’という態度は、へりくだり相手を喜ばせるときにつかわれることが多いと経験している。自分がその場にいたなら同じような発言をしたかもしれない。
この本には男社会での評価のされかたやコミュニケーションのとりかたもつぶさに観察され具体的に書かれている。著者がしっかり観察し文章化してくれたおかげで浮き彫りにされるが、鈍感な俺には気づけなかったことばかりだった。
現在の社会、ジャッジするのは男であり何につけても男性的な価値観が介入してくる。その社会に属している俺たちもその物差しを知らずに使っているということに気づいた。

ただ、自分がこの’男社会’に対して反骨していたのだということもわかった。
普段からもやもやしていた部分にも今の段階での答えのようなものを得ることができた。

例えば男性に対しては、丁寧に接していると舐められぞんざいに扱われる。少し荒いくらいのほうが尊敬される。この理由もこの本を読めばわかる。
また、女性にたいしても女性的な部分を誇張して評価を得ようとすることにモヤモヤしていたのだけれど、18歳から65歳の異性愛者の男へと媚びる態度にムカついていたんだとおもう。
この本の終わりのほうにこう書いてある。

あなたが男性であることで生きづらいとすれば、それはあなたの中の男性性が生きづらい生き方を体現し、抑圧されるべき女性性を日々育て、そうではない現実の女性を見て嫌悪しているからかもしれない。

この一文に救われた。
この本は社会の解説をするための本ではなく、著者が幼い頃から考え分析したことをまとめてある本ではないかとおもう。男性側からの男性性の考察になっている。この立場で書いてある本って新鮮なのではないか。
フェミニズムの本の一冊目が、この本でよかった。
居住まいを正してからこの問題に取り組んでいける。男性としてこの問題を考える態度がどういうものかは、まず、わかったはずだと感じている。
社会のことを俯瞰して把握できる、新しい視点を授けてくれる本です。
すごかった!!

※繊細な問題を浅学なくせに図々しく書くのでイラっとするところもあるかとおもいます。これから学び考えていこうと、最初のステップを残しておきたかったので書いています。これからの成長を前提として、ご勘弁いただけるよう、よろしくお願いします。

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