見出し画像

台湾ひとり研究室:台所編「義母ごはんレシピ:炒米粉(焼きビーフン)

台湾には「小吃店」と呼ばれるたくさんの屋台料理の店があるけれど、そういえば焼きビーフンを専門に出すお店は見かけたことがない。ただ、たとえば“台湾グルメグランプリ”みたいなイベントがあって試みにでも人気投票をやったら、焼きビーフンは間違いなく上位に食い込んでくるひと品。

この存在感を、日本の家庭料理に置き換えると、焼きビーフンは焼きそばではなかろうかと考えている。日本の焼きそばは、庶民に広く愛され、居酒屋やお祭りの鉄板メニューで、さらに給食や家庭料理でも、確固たる地位を築いている。B-1 グランプリで富士やきそばが 2 年連続してグランプリを獲得したのだって、その底力を見せたに過ぎない。

台湾の料理というと、どうしても日本での知名度順として小籠包や牛肉麺、マンゴーアイスがトップを走っているように見えがちだ。ただ、現地で日常的に食べられているのかというと、そうではない。それらはどちらかというと「日本人観光客が好きなもの」という位置づけにある。

これを、反対に海外に知られる日本料理を考えてみるとよくわかる。外国人に「好きな日本料理は?」と聞いて「寿司」「ラーメン」「天ぷら」という答えが返ってくると、相手と自分の日常との距離が見えて、少しだけがっかりする、あの感じ。この感覚は、なぜか残念なことのように見えるのだけれど、実は観光と日常の違いはここにあるわけで。

焼きビーフン=焼きそば、という方程式は、この日本の外国人観光客向けのメニューと一般家庭料理メニューというののほかに、もう一つ懐の深さにもある。というのも、焼きそばの調味ベースは、ソースでも塩でもいけるし、メインの具は豚肉、ひき肉、ベーコン、ウインナーもOKだし、野菜だって冷蔵庫の残り物で十分。それが焼きビーフンもそうなのだとは、調理中に義母が教えてくれた。

義母 あのね、ビーフンに入れる基本の材料が入っていれば、あとはなんでもいいのよ。
私  え、じゃあ、冷蔵庫にあるものとかでいいってこと?
義母 そう。あるもので適当にね。

…そんなわけで、私の「焼きビーフン=焼きそば」方程式は完成した。

【材料】
基本の材料 今回の分量は約 6 人分。多めです。
 -ビーフン   ひと袋(230g)
 -ニンジン   1/2 本
 -干しシイタケ 5〜6 枚
 -タマネギ   中 1 個。今回はまるっと投入したので、野菜多め。
 -干しエビ   20g

バリエの材料 以下はなくてもよき。
 -豚肉     150g
 -緑の野菜   今回は葉ニンニクを使用。
 -香り野菜   ネギ、ニラ、香菜、フライドエシャロット

調味料
 -オイスターソース 大さじ2〜3
 -白コショウ    大さじ1〜2
 -塩        ひとつまみ
 -黒酢       鍋ひと回し
 -油        適宜

【作り方】
下準備
・麺を適当に割り、洗っておく。浸水不要。洗うだけでOK。
・干しエビと干しシイタケは水で戻す。干しシイタケの戻し水は入れすぎるとシイタケ臭が強くなるので、お好みで。
・材料を刻んでおく。野菜は好みの大きさ、肉は細切りに。ミンチも可。

1 フライパンに油をしき、全体に温まったら、肉→エビ→ニンジン→シイタケ→タマネギの順に入れて炒める。肉の臭みを取り、野菜それぞれの味を引き出すために、この順なのだそう。
2 ある程度火が通ったら水を加え、炒め煮のようにして全体に火を通す。

3 水分だけ残して、炒めた肉と野菜をフライパンから取り出す。

4 オイスターソース、塩を加え、さらに水を加えて伸ばす。ここで干しエビの戻し水を利用。
5 煮立ったところで、洗っておいた麺を投入。

6 麺に味が絡んだら、硬さを見つつ、いったん取り出した野菜を投入。
7 緑の葉物野菜を投入。今回は斜め切りにした葉ニンニクを使用。
8 フライドエシャロット、香りづけのラードを加える。

9 黒酢をひと回し。油っぽさを薄めたら、コショウを入れる。量はお好みで。義母は結構多めに入れるので、パンチのある味になります。

10 最後に、刻んだ香菜を加えて完成。

おまけ。
ここで入れたラードは、これでも少ないほう。一度、デパートで買った鍋に付いてた無料の料理教室に参加したことがある。メニューは焼きビーフン。そこで大きなボトルに入ったサラダ油が大量投下されるのを見て、血の気が引いた。後日、同じく台湾に嫁いだ友人も「お義母さんが焼きビーフン作るのを見て、二度と見るのやめようと思った」という話に、首がもげそうな頷いた。とはいえ、これがまた旨い。誰が言ったのか知らないけれど「旨いもんは糖と油でできている」って言葉に納得するしかないんである。

勝手口から見た台湾の姿を、さまざまにお届けすべく活動しています。2023〜24年にかけては日本で刊行予定の翻訳作業が中心ですが、24年には同書の関連イベントを開催したいと考えています。応援団、サポーターとしてご協力いただけたらうれしいです。2023.8.15